「風と雲と雨」でチョン・グァンリョルが演じた興宣君は史実でも豹変したのか?【韓ドラコラム】

2022年05月30日09時00分ドラマ
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テレビ東京の韓流プレミアで放送されている「風と雲と雨」第20話(全28話版)でチョン・グァンリョルが演じた興宣君が豹変した!底辺から王の父として朝鮮最高の権力者となった興宣君は史実でも豹変したのか?今回はドラマで描かれた興宣君と史実を比べてみたい。ドラマの予告動画はYoutubeにて視聴できる。

「風と雲と雨」は四柱推命とサイコメトリーをテーマに、朝鮮最高の観相師と霊能力を持つ王女、権力者たちの王位争奪戦を圧倒的な映像美で描く本格時代劇。【「風と雲と雨」を2倍楽しむ】では時代背景や、実在人物の紹介、各話のネタバレあらすじと見どころなどまとめて紹介している。



第19話(全28話版)で朝鮮王朝26代王の高宗(コジョン)朝鮮王朝第26代・高宗の父。では、さっそく史実に基づいた興宣君がどんな人物で、大院君としてどんな政治を行ったのかを見てみよう。

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■興宣大院君(1820年12月21日生~1898年2月22日没)
本名は李昰応(イ・ハウン)。南延君の四男で母は郡夫人驪興閔氏。南延君が思悼世子(サドセジャ、第22代王・正祖の父)の息子の恩信君の養子として入籍したので、族譜上では興宣君は第21代王・英祖の玄孫(やしゃご)に当たる。

11歳で母を、16歳で父を亡くしたため不遇な青年期を過ごした。当時は、安東(アンドン)金(キム)氏一族が政権を独占(勢道政治)し、自分たちの権利を守るために厳しく王族を監視していた。興宣(フンソン)君は生き残るために、ごろつき同然の生活を送り、物乞いのような真似までして後ろ指をさされる生き方をした。そのおかげで庶民の生活を体験し、民が何を望んでいるのかを知ることができた。

興宣君(C) 2019-20 TV Chosunその裏では病弱な第25代王・哲宗が急死した時、誰が継ぐのか密かに計算もしていた。そして目をつけたのが、安東金氏の勢道に不満を持っていた趙(チョ)大妃。趙大妃と興宣君は1863年12月興宣君の次男・命福(ミョンボク)を王位(第26代・高宗)に就け、自らも国王の実父の称号“大院君”を得て興宣大院君となった。ところが大院君となると興宣君は豹変し、幼い王に代わって政権を握り、王が成人するまで政務を執る垂簾聴政ができると考えた趙大妃の目論見は外れた。

こうして約60年続いた安東金氏の勢道政治は幕を下ろし、興宣大院君が最高権力者にのし上がった。その後、党派を超えた人材登用や法律制度の確立などで腐敗した政治を強力に改革していく。だが、各種免税などで国庫に負担をかけていた書院をの撤廃や両班にも税を課す税制などで両班からの反発を招いた。また、李王家の威厳を誇示するために、炎上したままになっていた景福宮再建の着手や財源の調達などで民衆の生活苦を加重させ、民からの不満も高まった。さらに鎖国政策に固執し、キリスト教徒には大弾圧を加えたことで国際関係を悪化させた。

高宗の妻で、嫁に当たる明成王后閔氏は、大院君の鎖国政策は時代遅れと見た。さらに、それまで政治に関心のなかった高宗も20歳を超えて親政を執ろうとしたこともあって、大院君は権力の座から追い出される。だが1882年、大院君勢力による「壬午軍乱(イミグンラン)」が勃発し、対外的な進出に意欲的な日本の対朝鮮戦略に便乗して1895年、大院君は政権に返り咲くが長くは続かず、1898年に亡くなる。

■「風と雲と雨」の興宣君は?
作中の興宣君(チョン・グァンリョル)は遊び人を装いながら権力への強い野望を抱く王族として登場する。息子のジェファンにはことあるごとに「忠より孝」をたたき込み、ジェファンを君主に擁立し、王の父として朝鮮の最高権力者になるために長年にわたって計画する。ところがところが朝鮮一の易者であるチェ・チョンジュン(パク・シフ)が権勢一門の壮洞キム氏や王族が居並ぶ中、少年ジェファンに「王の気を感じた」と公言したことで長年の計画が水の泡となり、チョンジュン殺害を企むも、結局チョンジュンの力を借りてジェファンが第26代王・高宗に、自身は王の父として大院君の称号を得る。大院君となってからは王の上に立って朝鮮王朝を動かす。
前半で遊び人を装って長年にわたって息子を王につけようと計画したことや、書院の撤廃や景福宮の再建などで両班や民から反発されるのは史実通り。だが、チョ大妃がなかなかジェファンを次期国王と認めなかったのは史実とは異なる。また、大院君は1度ならず2度3度とチョンジュン殺害を目論むが、パク・シフが演じたチェ・風と雲と雨(C) 2019-20 TV Chosunチョンジュンが架空の人物のため、これはフィクション。
終盤に入ってからは、愚かで控えめな娘ミン・ジェヨン(パク・ジョンヨン)が本性を出していく。史実に残る熾烈な舅VS嫁バトルは、終盤どう描かれるのか?また、命の恩人でもあるチョンジュンとの関係は?そして朝鮮の開国は描かれるのか?

★チョン・グァンリョル (1960年2月11日生、173㎝、A型)
最高視聴率63.70%をたたき出した「ホ・ジュン~宮廷医官への道~」(99年)の熱血漢の医師役で韓国を代表する国民的俳優とよばれ、その後も「張禧嬪-チャン・ヒビン」(02年)や「朱蒙」(05年)、「王と私」、2011年には「ペク・ドンス」「火の女神ジョンイ」「テバク ~運命の瞬間(とき)~」(16年)などでカリスマ演技でドラマをリードしてくれる。

ソフトな印象のルックスと爽やかな笑顔と激高した時の鋭い目の演技が魅力で、知的な役柄を演じることが多く、現代ドラマでも貫禄の演技で魅せてくれるが、特に重厚感のあるカリスマ性と演技力は歴史ドラマには欠かせない存在。本作では、「賭博や酒場などを転々として“喪家の犬(野良犬)”というあだ名まで付いた」実在した超個性的な人物を、時にキュートに時に憎らしく、ドラマチックに演じている。またフィクションであるパク・シフとの対立や、「朱蒙」で親子を演じたキム・スンウ(キム・ビョンウン役)から前半に受けた屈辱を大院君になってからジワジワとやり返すいやらしい演技はさすがと言うほかない。多くの俳優が演じた興宣君を演じるにあたって、チョン・グァンリョルがどう工夫したかは制作記者会見で詳しく語っているので参考にされたい。

■興宣君が登場するその他のドラマは?
興宣君が登場する作品は実に多い。ドラマでは1982年にイ・スンジェが演じた「風雲」をはじめ、ユ・ドングンの「明成皇后」(2001年)、イ・ボムスの「Dr. JIN」(2012年)、チョン・グックァン「緑豆の花」(2019年)など名優がずらりと顔を並べる。
映画でも『炎のように蝶のように』(2009年)でチョン・ホジン、『花、香る歌』(2015年)でキム・ナムギル、『古山子(コサンジャ) 王朝に背いた男』(2016年)でユ・ジュンサン、『風水師 王の運命を決めた男』(2018年)でチソンと演技派揃いだ。
どの作品でも興宣君をクセツヨのキャラクターとして描いている。

※同じ時代を描いた作品は【ドラマの年表:朝鮮王朝】で確認できる。

さあ、最終回に向けて興宣大院君は何度も裏切ったチョンジュンとどう向き合うのか?そして壮洞キム氏が利用したボンリョン(コ・ソンヒ)をどうするのか?気になる嫁・明成皇后VS舅・興宣大院君のバトルの決着は?

「風と雲と雨」はDVDも好評発売中で、テレビ東京にて放送中だ。

テレビ東京「替えと雲と雨」番組公式サイト
 2022年5月3日スタート 月~金8:15-9:11
「風と雲と雨」公式サイト
Youtube「風と雲と雨」予告動画

kandoratop【作品詳細】【「風と雲と雨」を2倍楽しむ】