「パッチギ」映画音楽で加藤和彦さんを偲ぶ。あの素晴らしい歌をもう一度・・・

2009年10月20日10時13分芸能
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19日午後1時、東京・目黒の碑文谷会館で加藤和彦さん(享年62歳)の密葬が営まれた。棺の側には加藤さんが残した遺書が置かれた。遺書には「世の中が音楽を必要としなくなり、もう創作の意欲もなくなった。死にたいというより、消えてしまいたい」などと綴られ、故人の遺志から、加藤さんの楽曲も流すこともなく、会場には棺と献花台のみが設置された。

今も歌い継がれる名曲、「あの素晴しい愛をもう一度」を作曲した加藤和彦さんは、1960年代後半にフォークグループ、ザ・フォーク・クルセダーズ、1970年代初頭から中盤にかけてはロックバンド、サディスティック・ミカ・バンドを率いたミュージシャンだ。作曲家、ギタリストとしても幅広く活躍していた加藤さんのプロデビューのきっかけは、「帰って来たヨッパライ」。飲酒運転で事故死した「オラ(自分)」が天国でも酒と女にさんざん浮かれ、「こわい神様」から「お仕置き」を受けるというストーリーを、テープの高速回転で甲高い声と伴奏で素っ頓狂に歌う楽曲だ。2曲目は「イムジン河」という北朝鮮の曲にフォークルが作詞した楽曲となるはずだったが、当時の政治的な配慮から発売自粛となった。その後リリースした「悲しくてやりきれない」は、「イムジン河」を逆回転で聴いて発想した曲とも言われている。

ところが、加藤さんが愛した「イムジン河」が、映画音楽としてよみがえった。井筒和幸監督の2005年「パッチギ」、2007年「パッチギ!LOVE&PEACE」だ。彼は両映画の音楽担当として参加した。加藤さんは、映画の中では全編に「イムジン河」を流し、「あの素晴しい愛をもう一度」をオリジナル形で映画主題歌に提供した。2004年彼は、第60回の毎日映画コンクールの音楽賞を受賞している。「パッチギ」と「パッチギ!LOVE&PEACE」の両映画公式サイトでは、今も予告動画が公開されており加藤さんの音楽が聴くことができる。もちろん、スタッフとして“音楽:加藤和彦”と刻まれている。

加藤さんの訃報を聞いた井筒監督は、「2人で鍵盤の前に座って…。目の前で『イムジン河』を弾いてくれるんだよ。楽しかった…映画は彼に負うところが大きかった。それ以来、生涯のパートナーができたのに」と悔しさをにじませたコメントを残している。

19日の密葬には、加藤さんと「ザ・フォーク・クルセダーズ」を結成した現精神科医の北山修氏をはじめ、ミュージシャンのかまやつひろし、つのだ☆ひろ、高橋幸宏、「THE ALFEE」の坂崎幸之助ら音楽仲間や、歌舞伎俳優の市川猿之助、市川右近らも姿をみせた。
最後のあいさつに立った北山氏は、「加藤さんは周囲の人に優しく、自分に厳しいという二面性を持っていた。その厳しさで自分を責めていたのでは。今後は彼の歌を忘れず、彼の分まで生きよう」と参列者に訴えていた。


16日、自ら命を絶った加藤さんが、最後に参加した映画「パッチギ!LOVE&PEACE」は、“命をつなぐ感動のドラマ”だったはず…。あの素晴らしい歌をもう一度聴きたかった。加藤和彦さんのご冥福を心から祈りたい。

「パッチギ」公式サイト
「パッチギ!LOVE&PEACE」公式サイト