公開直後から1位!Netflix「未成年裁判」は大人こそ観るべき作品:最終回考察と評判

少年犯罪をテーマにしたキム・ヘス主演のNetflixオリジナルドラマ第2弾「未成年裁判」が2月25日より独占配信を開始し、直後から視聴ランキング1位を連日独占し反響を呼んでいる。気になるドラマ全10話の最終考察と評判を紹介しよう。
●Netflixオリジナル韓国ドラマ一覧/2022年韓流作品一覧
「未成年裁判」(全10話)は少年犯罪を嫌悪する判事が地方裁判所の少年部に赴任し法廷を舞台に繰り広げるヒューマンドラマで急増する少年犯罪とこれを放任してきた社会にメッセージを投げかける作品だ。
●【各話のあらすじ・関連記事】
より深く作品の方向性とクオリティの高さを実感して頂くために、是非Netflix Japanが公開している予告編も合わせて観てもらいたい。
ここからは全10話を視聴した上で感じたドラマのメッセージ性や魅力を紹介する(一部にネタバレも含むのでご注意頂きたい)。
■ドラマの構成
このドラマでは主に6つの少年事件が扱われ、それぞれ現実に起こった事件をモチーフに事件の真相や審理の過程、加害者や被害者が置かれている社会的または家庭的背景が描かれ、子供が犯した罪だけではなく、周りの大人達の責任についても深く考えさせられる内容となっている。
主人公ウンソク(キム・ヘス)がヨンファ地方裁判所に赴任して最初に担当した小学生殺害事件では満13歳の少年ソンウ(イ・ヨン)が同じ団地に住む小学生を絞殺し、遺体をバラバラにして遺棄したと自首した事から始まり、事件の背景には共犯者がいる事が発覚。満14歳未満は罪を問われないという現行の少年法制度を少年達が利用し、世論が少年法廃止に向かって過熱していく様子が描かれた。ここで登場する加害者の親は、女手一つで生計を立てる為に息子と向き合う時間を持てなかった母親と、娘が殺人という重罪を犯してもアメリカから帰国する事なく弁護士に任せっきりの教育に対する責任感の薄い両親が登場する。
第2の事件では過去に問題を起こし、現在は更生して美容室で働いている少女ユリ(シム・ダルギ)が全身傷だらけの状態で助けを求めに来た事から始まる。調査を進める中、父からの家庭内暴力を受けている事を知ったウンソクだが、ユリは通報を拒み続けていた。このエピソードでは家庭内暴力の被害者が訴えたところで安全が保証される訳でもなく、家から出ていかなければならないのは自分自身だという家庭内暴力被害の現状や立場の弱い若者が家から逃げ出した結果、生活に困って犯罪行為に染められてしまうという負の連鎖が描かれた。家庭内暴力を振るう父親ももちろんだが、事実を知りながらも息子に強く言えず暴力を黙認する祖母の振る舞いにも問題を投げかけた事件だ。
第3の事件は地方裁判所と提携して少女達の更生を助けているプルム回復センターを舞台に発生する。年に一回の立ち入り調査に訪れたウンソク達に水面下で行われている暴力や重労働を訴える少女達。しかし、センター長のソンジャ(特別出演 / ヨム・ヘラン)の言い分とは真っ向から食い違っていた。このエピソードの序盤ではどちらの言い分が本当なのか視聴者に委ねる演出となっており、センター長ソンジャ役に悪役も心温かい母性的な役も演じられるヨム・ヘランのキャスティングは頷ける。この事件では更生中の少女達が置かれている様々な家庭環境や、ソンジャの娘アルムの行動を通して子供達が感じる孤独感や孤立感が描かれた。
これまで親の無関心が背景に描かれてきた事件が続いたが、続く文光高校試験問題漏洩事件では、進学率を上げる為に教務主任が権力者の優秀な子息だけを集めて作った「デカルト」という集団に試験の答案をあらかじめリークしていた事が問題視された事件で、お金や名誉の為に不正を進める教職員といい大学に通わせたい親のエゴに巻き込まれる学生達が描かれ、過酷な韓国の受験事情や学歴社会への風刺が描かれている。この事件には部長判事カン・ウォンジュン(イ・ソンミン)の息子も関わっていて、政界進出が報道された直後で後にも引けず息子の関与を隠蔽しようとしてウンソク達と対立するのだが、同じ状況に置かれたら自分だったら正直に自白するだろうかと視聴者に問いかけているようにも感じる。
続く未成年無免許運転事故事件では運転していた少年が植物人間状態になってしまい、被害者は死亡。調査を進める中で、少年は同乗していた同級生に脅されて無免許運転をするに至った事が明らかになるが、ウォンジュンに代わって新たに赴任したスピード重視の部長判事グニ(イ・ジョンウン)は証拠不十分として同乗者達を軽罰で済ませてしまう。息子の無念を晴らせなかった母、夫を失ったのに責任が追及できない妻、軽罰で済んで法廷で大喜びする少年達など非常に後味の悪い余韻を残し、法はあくまでも証拠だけを見る、裁判は判事の裁量によっても左右されるという現状が風刺された。
最後の事件となる集団性的暴行事件では被害者でありながらも学校から退学を要求されたり、周りから疎まれてしまう理不尽さが描かれたほか、ウンソクと過去に因縁のある少年犯インジュン(チョン・セヒョン)が再犯で法廷に立った。このエピソードでは加害者の家族は登場しない代わりに、裁判所が非行少年に対して負うべき責任についてフォーカスされた。
■ウンソクに秘められた過去(ネタバレ注意)
主人公ウンソクは予告編のキーワードである「私は非行少年を憎んでいます」という通り、作中では加害者・被害者、同僚達に対しても決して心を開かず弱みを見せない厳格な人物として描かれ、作中では笑顔を浮かべるシーンは登場しないが、何故ここまで心を閉ざすのかという理由は9話で明かされた。かつては妻であり母であったウンソクは性的暴行事件の加害少年インジュンとドヒョン(キム・ギュナ)が5年前、小学生の時にマンションの屋上からレンガを落とした事件で幼き我が子を失い、当時裁判を担当したグニによってたったの3分で審理が終了して加害少年達が反省の色もないまま帰っていくのを目の当たりにしていたのだ。10話終盤で登場する亡き息子と写る写真では、作中で唯一笑顔で登場しこれまで一度も笑顔が登場しなかったのはこの写真が持つ意味合いを引き立たせる為だった事が窺える。同じシーンで思い出の品々を大事そうに抱きかかえて涙し、息子が眠る納骨堂で写真を燃やし、懲戒委員会で今後の抱負を語ったウンソク。エンディングではこれまでに登場した非行少年達と面会するシーンが登場するが表情がだいぶ柔らかくなっている事から、本作が彼女にとって過去と向き合い乗り越えていく過程を描いた作品と見る事も出来る。
■判事それぞれの正義
本作で裁判を担当する判事は4人登場する。まずは主人公ウンソク。上記でも述べた通り、過去の事件から非行少年を憎み、加害者に対しては真っ向から疑ってかかり、厳しく接しているが、「少年達は自分たちが犯した罪の重さを実感するべきだ」という彼女なりの正義からくる態度だった。
同僚判事のテジュ(キム・ムヨル)はウンソクとは真逆でたとえ嘘を吐かれていたとしても加害少年達に極力寄り添おうと努め、更生後も彼らを気遣う献身的な人物だ。自らも少年時代に父親からの家庭内暴力に苦しみ、尊属殺人未遂で少年院に入った経験があり、自分と同じ思いをして欲しくないというのが彼の原動力だった。
部長判事のウォンジュンは政界進出を持ちかけられ、穏便に物事を進めようとする姿勢や作中で息子が高校での不正事件に関与している事が明らかになり、それを隠蔽しようとする姿から世間体や社会的地位重視の悪い大人の一面も見せつつ、当初から不正組織への関与を反対していたり、担当した少年犯に的確な処分を与えたり政界進出もこれまで思い描いてきた少年法のあるべき姿を実現する為の方法であり、自身の出世が目的ではなかった事が明かされるなど正義感が強く不器用ながら思いやりの強い人物として描かれた。
高校での事件が原因でウォンジュンの後任としてやってきたグニは少年事件はスピード勝負だと言って、まだ真相に辿り着いていない事件も早々に結審してしまうなどウンソクらと対立するが彼女にも法廷には感情を持ち込まずに冷静に処分を下すという信条があり、10話ではそれが誤りだったと認めた上で彼女なりの正義を見せた。
それぞれ異なる信条や正義を持っている4人には「人間を裁くのも人間である」というメッセージ性が込められているのではないだろうか。
■作品に込められた風刺
登場する加害少年達の置かれる環境には貧困、親の無関心、親の過保護、家庭内暴力、学歴社会、受験戦争などが登場し、現実でも子供達が不法行為に染まってしまう要因について触れられた。作中では他にも「少年犯罪のうち本当に凶悪なものは1%、校内暴力が15%、その他は家庭環境が原因の非行」「保護観察官は一人に付き100人を担当している」「OECD加盟国で韓国は子供の自殺率が1位でそのうちの70%は塾に通っている」「社会は少年犯罪の残酷性ばかりを取り上げて法の廃止を訴えるが問題は法律ではなくシステムだ」「韓国では家庭の53.8%に暴力問題があるがそれも氷山の一角で終わりが見えない」というセリフや、幹部級のベテランが大学生でも書けるような既存の情報の寄せ集めレポートを発表し、これに意見したウンソクが「上司にケチを付けた」と後ろ指をさされてしまうという理不尽な状況には社会の現状に対する風刺が散りばめられている。
■視聴者からの評判
作品を観終えた視聴者からは以下のようなコメントが上がっている。
「キム・ヘスの表情を大きく変えずに憤りや悲しみ、憎しみを表現する演技力に脱帽」
「27歳の女優さん(イ・ヨン)が満13歳の少年犯ソンウの役を演じて違和感のない演技力に驚き!」
「視点の鋭さと深さが感じられる完成度の高い作品。これぞ韓国ドラマ」
「国によって少年法は違ってもお手本になる大人がしっかりしないとと考えさせられた」
「事件が解決する度に映画1本観終えたぐらい疲れる、セリフひとつひとつに重みがある」
「ロマンス要素もコメディ要素もなくひたすら重いのに脚本と演技力だけで面白い」
「非行少年を型にはめず、登場人物全員を人間として描いているので説得力がある」
■大人になってからこそ観るべき作品
作中では「触法少年」「保護事件と刑事事件」「裁判官の忌避自由」「検察への逆送」など一般的には馴染みの薄い、法律に関する専門用語が多数登場する(勿論知らぬまま平和に暮らせるに越した事はないのだが)。
作中では凄惨な犯罪を起こした少年少女、大人に反抗する少年少女が主要人物として登場するが、メインは事件に至る契機となった社会や大人達の責任について描かれており、万人共通の正解が無い中で子供が過ちを犯さない為には大人はどうやって接すればいいのか、また、子供が過ちを起こしてしまった際にどのように向き合っていかなければならないのかを視聴者に投げかけている。子供を持つ親だけではなく、子供達の手本とならなければならない全ての大人に一度は観てもらいたい作品だ。
「未成年裁判は」は2月25日からNetflixで全10話の独占配信を開始し連日視聴1位を記録している。
■スタッフ
演出:ホン・ジョンチャン
脚本:キム・ミンソク
原題:소년심판
■キャスト
シム・ウンソク役:キム・ヘス
チャ・テジュ役:キム・ムヨル
カン・ウォンジュン役:イ・ソンミン
ナ・グニ役:イ・ジョンウン
チュ・ヨンシル役:イ・サンヒ
ソ・ボム役:シン・ジェフィ
ほか
■放送予定
放送開始:2022年2月25日〜
エピソード数:全10話
◇予告動画(Youtube)
◇Netflix公式ページ
【作品詳細】【関連・各話のあらすじ】