井上ひさし氏、「ひょうたん島」から天国の島へ-NHKオンデマンド
サンデー先生、ドン・ガバチョ、トラヒゲ、博士、ライオン…みんな、ひょっこりひょうたん島の住人だ。「ひょっこりひょうたん島」とは、個性豊かなキャラクターたちがミュージカル仕立てで、笑いと風刺、冒険の物語を繰り広げる人形劇。初回放送は1960年代で、1990年代にもリメイクされたNHK人形劇の代表的な作品として広く愛されている人形劇。この生みの親である井上ひさしさんが、9日(金)午後10時22分、肺がんのため神奈川県鎌倉市の自宅で亡くなった。75歳だった。NHKオンデマンドでは、特選ライブラリーで「連続人形劇 ひょっこりひょうたん島」のシリーズの配信をしている。(パック価格 1,365円)
♪波を チャプ チャプ チャプ チャプ かきわけて♪と聞くと、50歳代以上の方なら自然と「チャープ チャープ」と合いの手を入れてしまうほど耳になじんだこの歌は、「ひょっこりひょうたん島」の主題歌。月曜から金曜の夕方5時45分からは、当時の子供たちにとっては15分限りの冒険の旅の時間だった。
ひょうたん島は初めら動き回る島ではなかった。ある日、子供たちとサンデー先生が遠足に出かけたところ、ひょうたん火山が噴火し島が流れ出してしまった。仕方なく、子供たちとサンデー先生はこの島で暮らし始めるが島には次々とへんてこな人が訪れ、奇妙な事件が次々と起きるのだ。
テレビ放送の翌日には子供たちがそれぞれのお気に入りのキャラクターになりきって、学校はにわかにひょうたん島と化したりしたものだ。
ことあるごとに「みなさ~ん」と大声を張り上げて演説を行い、周りから煙たがられるが、責任感の強いドン・ガバチョ。
教育熱心すぎるのが玉にきずだが、情にもろいサンデー先生。
最高評価5段階の通知表でなぜかオール6をもらうが、その知識をひけらかし顰蹙を買うこともある天才少年の博士。
島にイカダで流れ着いた片目の海賊で、がめつい性格だが、肝心なところで情のもろさで儲けにならないトラヒゲ。
ライオン王国の王様だったが、退屈しのぎに島の住人になったサーカース入団希望のライオンなど、誰もが、長所と短所を併せ持つ個性豊かなキャラクターたち。
子供たちが、自分に似た住人を探すのに苦労の要らないくらい、さまざまなキャラクターが勢ぞろいしていた。
こんな、楽しいキャラクターを生み出したのが、井上ひさしさんだ。井上さんは、大作家と聞いて想像する外見とは大きくかけ離れて、丸くて分厚い眼鏡と出っ歯がトレードマークの朴訥とした親しみやすい風貌。
井上さんは、山元譲久氏との共著の「ひょっこりひょうたん島」で注目を集め、72年に戯曲「道元の冒険」で岸田国士戯曲賞、小説「手鎖心中」で直木賞を受賞した。84年には、自身の戯曲を上演する「こまつ座」を旗揚げし、代表作に戯曲「父と暮せば」「人間合格」、小説「吉里吉里人」「四千万歩の男」など多くの作品を残した。護憲を訴える「九条の会」呼びかけ人の一人でもあり、戦争責任や平和、農業など多岐にわたる発言で知られた。
2004年には文化功労者、09年には日本芸術院会員となり、読売文学賞、吉川英治文学賞、菊池寛賞など多くの賞を受賞している。日本ペンクラブ会長も務めた。
そんな井上さんが肺がんの告知を受けたのは、昨年10月。11月からは抗がん剤治療を受けたが、体力の回復がかなわず、9日の夜、享年77歳(満75歳)で息を引き取った。
井上さんの代表作「ひょっこりひょうたん島」は、終了したが、その後も同じNHKの人形劇やアニメ「おもひでぽろぽろ」の作品などで登場している。また、NHK開局50周年のマスコットでもガバチョは活躍している。そういえば、ガバチョは、「ひょうたん島」の最終回で「またお会いしましょう」の言葉を残していた。きっと井上さんも同じ言葉を残して、いまごろ大空の波にチャプチャプ揺られて、天国の島で次の作品を執筆しているのかもしれない。
NHKオンデマンドでは、「ひょっこりひょうたん島」のほかにも、「100年インタビュー」で2007年に放送した井上ひさしさんの回を315円で有料配信している。
井上ひさしさんのご冥福を心よりお祈りいたします。
NHKオンでマンド「連続人形劇 ひょっこりひょうたん島」
NHKオンデマンド「100年インタビュー 井上ひさし」