【第4章】「冬のソナタ」の魅力|NHKと冬のソナタ
2002年韓国KBSで放送され、日本でも韓流ブームのきっかけとなった説明不要の伝説的ドラマ「冬のソナタ」と主演のペ・ヨンジュンの魅力を探る。
インタビューの中で解けた謎
小川さんが繰り返し話していた“冬ソナの魅力=丁寧さ”。これには、礼儀正しさ、謙虚さ、思いやり、誠実さ…といったイメージがつく。では、視聴者はそれをどこに感じたのだろう?
記者の韓国語力は、辛うじてチュンサンの台詞と、ペ・ヨンジュンのインタビューが聞き取れるので、本当のチュンサンの丁寧さがわかる。しかし、韓国語を全く知らない女性たちはどこに丁寧さを感じたのだろう。微妙なニュアンスを“字幕”で表現するのは難しい。登場人物の動きに合わせた“吹替え”でしか表現できない部分がある。(もちろん吹替えで台無しになる場合もある) NHKは、萩原チュンサンに一段高い敬語を使わせることで、視聴者に“ぺ・ヨンジュン=丁寧”のイメージを刷り込むことに成功した。
それでは、実際のペ・ヨンジュンは丁寧でないのか? というとそんなことはない。記者は数年前ペ・ヨンジュン本人にインタビューしたことがある。通訳はいたがほとんど通訳を通さなかった。彼は、片言の韓国語で話す記者にいやな顔ひとつせず、丁寧に対応してくれたのだ。すっかり彼の魅力にハマった記者は、「初恋」「ホテリアー」「愛の群像」「太王四神記」と手当たり次第に彼の作品を観た。やっぱり彼の台詞だけが完璧に聞き取れるのだ。(不思議だ!)韓国から来た友人に聞いてみた。すると彼女は「ヨン様の話す言葉はとても丁寧で、発音や滑舌も完璧。お手本にできる韓国語」と説明してくれた。(だから、DS専用学習ソフト「ペ・ヨンジュンと学ぶ韓国語DS」なのか! 因みに彼女はヨン様ファンではない)話す言葉である程度人柄がわかる。図らずもNHKはペ・ヨンジュン本人の魅力を、日本の俳優の吹替えで紹介した訳だ。
キャストの魅力
だが、もちろん「冬のソナタ」の人気はペ・ヨンジュンだけが作ったのではない。他にも素敵なキャストが大勢登場する。ヒロインを演じたチェ・ジウも、恋のライバルのパク・ヨンハとパク・ソルミも、友人のイ・へウンとリュ・スンスも個性豊かで実にいい味を出している。中でも、透き通った美しさのチェ・ジウが演じたけなげで純粋なユジンの魅力は、男性だけでなく多くの女性をも虜にしたはず。ところが、日本では“けなげ”と映った彼女の言動が、韓国では“優柔不断”だと一部の若年層からは不評だったと聞いて驚いた。(お国が変われば受け取るイメージも違うもんだ)
ユン監督のこだわり-色
キャストもすばらしいが、韓ドラ黄金則てんこ盛りの「冬ソナ」を、洗練した都会のドラマにしたのはユン・ソクホ監督の力だろう。“映像の魔術師”と呼ばれた彼の作品はどれもまるで絵のように美しい。「冬ソナ」は監督が四季を描いた4作の中の第2弾。彼はキレイな絵を撮るため徹底的に“色”にこだわった。4作品それぞれに季節に似合うテーマカラーを決め、ロケ地もそれに合わせて選んだ。
「冬ソナ」はもちろん“白”! 監督は、過去に「カラー」という短編作を撮っており、その中の「ホワイト」の主人公二人が雪の中で戯れるシーンをことのほか気にいっていて、これが「冬のソナタ」の原点となったと言われている。ロケ地を美しい南怡島や春川、竜坪リゾートにし、主役二人には、白の中でもっとも映えるキレイなパステルカラーの衣装を多く着せた。(当初の予定は北海道だったけど…)
ユン監督のこだわり-音楽
監督のこだわりは“色”だけではなかった。ドラマの“音楽”にもこだわった。主題曲、エンディング曲、劇中タイミングよく流れる挿入曲。(日本のある曲に激似だなどという話しもあるが…) どれもすばらしいが、監督は四季シリーズ全てに、もうひとつ、ドラマをイメージ付ける曲(仮に“イメージ曲”と呼ぼう)を決めている。全て世界中で有名な洋楽を選んだ。「冬ソナ」のイメージ曲は「白い恋人たち」。(「白い恋人達」は桑田佳祐) 「冬ソナ」には、「最初から今まで」「My Memory」など名曲があるのに、敢えて洋楽にこだわったのは何故だろう?ドラマで、♪チャラ、チャララララ~とフランシス・レイの「白い恋人たち」が流れると、ドロドロの愛憎劇がなぜかサラサラの純愛になる。
初めて聞く音楽は個々人受け取る印象が違う。しかし、この曲は1968年フランスの冬季オリンピックの記録映画のタイトル曲として、世界中の多くの人が“清らか”なイメージを持っている。彼は、この曲を選ぶことで、視聴者に「勝手な想像をしないでよ~」ってな具合に、作り手のもとめるイメージを刷り込みたかったのかもしれない。(確かに雪はサラサラだ) 実際に監督がこれを狙ったかどうかは別にして、この曲が50代以上の人に“冬ソナ=清らか”を強烈に印象付けた可能性は高いはずだ。
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