Netflix『スマホを落としただけなのに』は現実感も倍増した完全韓国オリジナル版!ネタバレなし感想と日本版との比較

2023年02月18日00時26分映画
Netflix 映画『スマホを落としただけなのに』独占配信中

イム・シワン×チョン・ウヒ共演の韓国版映画『スマホを落としただけなのに』が2月17日にNetflixにて独占配信開始したので、さっそく視聴した。

本作は、平凡な会社員が、自分のあらゆる個人情報が含まれたスマートフォンを紛失し、日常が脅かされるようになるストーリーを描くサスペンス・スリラーだ。2018年に公開され4週連続邦画興行収入1位、7週連続トップ10入りの大ヒットを記録した同名日本映画の韓国リメイク版である。⇒作品詳細



あらすじは…
ナミ(チョン・ウヒ)はスタートアップ企業でマーケターとして働く傍ら、過干渉な父を少々疎ましく思いながらも父が経営するカフェも手伝っている。そんなナミが友人たちと深酒した後に乗ったバスでスマホを落としてしまう。そのスマホをジュニョン(イム・シワン)が偶然拾った後、ハッキングしてナミのアイデンティティを奪っていく。

日韓で手口は同じ
日本版第1作目『スマホを落としただけなのに』は彼氏が落としたスマホから始まり、第2作目『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』は、無料Wi-Fiからハッキングされる。対する韓国版はタイトル通りヒロインがスマホを落としたことから恐怖が始まる。きっかけは異なるものの、スマホのカメラと内臓マイクを使ってのぞき見されるという展開は同じだ。

スマホスマホの一人称視点
しかしその印象はオープニングから日本版とは全く違ったものだった。モーニングコール音のポップなオープニングで始まる韓国版は、人々のスマホまみれの日常を写した後、スマホが一人称のような映像で、スマホで何ができるのか、人々がどれほどスマホに依存しているのかを見せてくれる。演出の面白さに加えて、犯人がどんな手口で犯行を重ねていくのかと視聴者の想像を掻き立てる。

スマホイム・シワンは“澄んだ目の狂人”
また、韓国版は犯人がイム・シワンとわかっているだけに、彼の登場シーンは彼の不気味な表情を読み取ろうと目を皿のようにした。だがそこには映画『非常宣言』のような不気味な表情は一切ない。15日に行われた制作報告会でイム・シワン自身は「単なる金銭的な目的ではなく、趣味だと思っている。…悪そうな眼差しをするよりは、面白いことをしていると思って接近した」と伝えた。確かにどう見てもナミが評した通り“爽やかな青年”にしか見えない。

スマホむしろ、連続殺人事件の犯人が息子かもしれないと、独自捜査をする刑事ウ・ジマン(キム・ヒウォン)の顔の方がよっぽど怖い(笑)。とはいえ、犯人を知っている側としてはその爽やかさがむしろリアルで怖く、まさに“澄んだ目の狂人”だ。

スマホ女の友情とタフなヒロイン
また、日本版は2作とも被害者の恋人が犯人逮捕に大活躍するが、ナミに彼氏はいない。一昔前までは韓国作品と言えば「会社でも仕事をしないで恋愛ばかりしていた」が、近頃は恋愛を排除し女の友情にフォーカスを当てた作品が多い。本作でもそんな女の友情に泣かされる一幕がある。ネタバレはしないので詳しくは書けないが、ナミと親友ウンジュがケンカするシーンでは、2人の泣きの演技に思わずもらい泣きしてしまった。親友役を演じたのはキム・イェウォンだ。Netflixシリーズ「君は私の春」でもヒロインの親友役を演じている。

ここ数年韓国作品はヒロインがやたら強い。ナミにアクションはないが、精神的にものすごくタフなヒロインだ。日本版2作目でヒロインが警察に協力し、ナミも警察に協力する。だがナミの方は捜査をリードするたくましさがある。

制作報告会でチョン・ウヒは、「ナミのことを自分のことのように感じて、視聴者の方々が彼女の立場でちゃんとついて来られるように案内するのが私の役割だと思った」と演じる上での工夫を語ったが、その言葉通りに常に冷静な一面を持ってストーリーテラーに徹しているのが印象的だった。だがそんな彼女がラストでどんな決断を下すのか…。

スマホ家族愛
日本版では2作とも母親がキーマンとなるが、韓国版では父親。ナミの父イ・スンホは素敵なカフェを経営している。妻を亡くし一人娘のナミが心配でならない。過干渉とナミに言われるが、さすがの父性愛でナミに危険が近づくのを一番に嗅ぎ取る。ここが刑事ウ・ジマンと違うところだ。改めて家族の関わりの大切さを気付かされた。スンホを演じているのはパク・ホサンだ。彼は「コーヒーを飲みましょうか?」で喫茶店のマスター役を演じた名優だ。作中のナミは父の手作りプラムジュースが好物だが、ぜひとも挽きたてのコーヒーも飲んでほしい。

現実感も倍増したオリジナル版
韓国映画と言えば見るに堪えない残酷な場面やグロい映像が多いが、本作に限ってはむしろ日本版の方が残酷な場面が多かった。ホラーが苦手な方にもお勧めできる作品だ。

イム・シワンはもちろんだが、まるで当て書のような見事なキャスティングで魅せる韓国版は、韓国らしく説得力ある設定が加わり現実感も倍増している。スマホの使い方や家族との関わり方も考えさせられ、多くの方に観てほしい。

韓国映画『スマホを落としただけなのに』は2月17日よりNetflixにて独占配信開始。日本版の2作もNetflixで配信しているのでぜひ、併せて視聴されたい。

◾️作品紹介
制作国:韓国 制作年:2021年
原題:스마트폰을 떨어뜨렸을 뿐인데
スタッフ:演出・脚本:キム・テジュン
制作:ミジフィルム、STUDIO n
配信開始:2023年2月17日(金)Netflix
原作:志駕晃『スマホを落としただけなのに』
キャスト:ナミ役:チョン・ウヒ
ジュニョン役:イム・シワン
ジマン役:キム・ヒウォン
ウンジュ役:キム・イェウォン
 他

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