泣けて笑える話題作「良くも、悪くも、だって母親」最終回で視聴率が3倍に伸びた理由を考察してみた
ラ・ミランとイ・ドヒョンW主演の新韓国ドラマ「良くも、悪くも、だって母親」が、5月から6月にかけてJTBCにて水木ドラマとして放送され、Netflixでも全話独占配信中だ。初回放送では全国視聴率3.6%とそこそこの視聴率でスタートした本作は最終話となる第14話で歴代JTBC水木ドラマ最高視聴率となる12.0%を記録した。ヒットの要因は何なのか、詳しく考察してみよう。
●【Netflixシリーズ韓国ドラマ】【2023年配信ドラマ/映画、他】
「良くも、悪くも、だって母親」は、子供のために悪い母になるしかなかった母親のヨンスンと、予期せぬ事故で子供になってしまった息子のガンホが、失った幸せを追い求めていく感動的なヒーリングコメディだ。【「良くも、悪くも、だって母親」を2倍楽しむ】では、各話のネタバレあらすじや見どころなどドラマを深掘り紹介している。
画像出典:番組公式サイト■ヒット要因その1:おもちゃ箱のように詰め込まれた多彩な要素
上述の通り、「母子が失った幸せを追い求める感動的なヒーリングコメディ」と聞くと、村でのほのぼのとした日常の中で誰しもが経験しうる展開を繰り広げるヒューマンドラマを想像した視聴者は多いことだろう。しかし、本作第1-2話ではいきなり悪や公権力の汚職で人が殺され、残された妻ヨンスン(ラ・ミラン)が心機一転女手一つで息子を厳しく育て上げる様子が描かれる。更に大人に成長した息子ガンホ(イ・ドヒョン)が母の願いとは裏腹に、父を殺した悪と結託してある女性を殺してしまったかのようなミステリアスな展開と、ガンホが衝撃的な事故に巻き込まれる場面で終わり、ヒーリングコメディというよりはサスペンスやミステリー色が強いスタートを切り、視聴者の想像を大きく裏切った。
以降は記憶を失って子供の精神年齢に戻ってしまったガンホと献身的に世話をするヨンスンの親子の関係が重点的に描かれながらも、事故前のガンホの行動や、ミジュとの関係が断片的に語られ視聴者の好奇心を誘った。
回が進むごとに過去のガンホの行動やミジュとの関係が明らかになる一方で、ヨンスンが末期がんで余命宣告を受け、第9話では事故前のガンホの行動の真相が明らかになり、ガンホが記憶を取り戻し、元通り動けるようになってからは幼馴染を巻き込んで悪に復讐するサスペンス要素も再び活発化。笑いあり、涙あり、スリルありの多彩な要素を一見ばらばらに広げているように見せてうまく回収していく脚本が視聴者の人気を掴んだ要因のひとつだろう。
画像出典:番組公式サイト■ヒット要因その2:豪華すぎるキャストの個性が炸裂しまくり
頑固親父から堅物の刑事まで様々な表情を見せてきたキム・ウォネは本作では顔芸炸裂の里長。パク・ボギョン演じる里長夫人も終始キャラクターがプリントされた美容パック着用もしくは顔を隠して登場するという型破りな人物だ。カン・マルグム演じるミジュ母とソ・イスク演じるサムシク母はとにかく喧嘩っ早く勢いの強い村のおばちゃんを見事に演じているが、後半ではヨンスンに対する友情がいくつもの泣ける名場面を生み出した。彼ら大ベテラン俳優が勢ぞろいしているだけでなく、これまでにない爆発力で笑いを仕掛けてくるのだから、評判に火がつくのも当然の事だろう。
画像出典:番組公式サイト■ヒット要因その3:誰もが納得のいくストーリー進行
上述の通り、様々な要素が断片的に入り混じり、最初は難解そうに思えるあらすじだが、回を重ねるごとに話が繋がっていくと、ガンホの過去の事件についてはピンチに陥る事もなく痛快な勧善懲悪となり、ミジュとの関係も、ヨンスンと村人たちの関係も回りくどいすれ違いはあまり起こらず、最終回は視聴者の予想外のラブラインも登場するなど視聴者を幸せにしてくれる展開が繰り広げられた。
画像出典:番組公式サイト■ヒット要因その4:それぞれの母親が抱く思いへの共感
笑いやスリルが散りばめられた作品の中で時折ちりばめられ印象の残るのが、ラ・ミラン、カン・マルグム、ソ・イスクが演じる3人の母親の気持ちだ。性格は違えど、それぞれ子供を厳しく育ててきた3人。夫に浮気された挙げ句に先立たれ、ミジュを育ててきたカン・マルグムは双子を置いて帰ってこない娘に毒を吐くものの、つらい時の表情を一発で見抜く母親の不思議な才能を見せた。問題児サムシクにいつもブチギレていたソ・イスクも息子が火事の現場から生還した時は厳しく育ててきた本心を吐露した。最終回でラ・ミランが書いた手紙には「もっと上手に育ててあげたかった」という申し訳なさや後悔が詰め込まれていて、子を持つ親であれば共感が出来るポイントだろう。
親だって誰しもが初めから完璧に子供を育てられるわけではない。時には判断を誤る事もあれば、心を鬼にして厳しくしなければならない事も多々あるが、その裏には常に子供への愛情があるもの。残念ながら子供にはなかなか理解してもらえず、反発を受ける事も多いそんな親の葛藤や本音がところどころに散りばめられた本作は、ぜひ若い世代におすすめしたい作品だ。この作品を観たらきっと、親も完璧な人間ではない事を受け入れ、気持ちに少し近づけるのではないだろうか。
笑いやスリル、泣ける要素が巧妙にミックスされながらも最後は温かい気持ちにしてくれた本作は放送開始時の全国視聴率3.6%に対して最終回でJTBC水木ドラマ歴代記録1位の12.0%と約3倍に跳ね上がり好評のうちに幕を閉じた。
要所要所で人生の道標になるような名言も教えてくれた名作「よくも、悪くも、だって母親」は韓国JTBCにて2023年4月26日~6月8日まで全14話で放送。Netflxiでも全話独占配信中だ。
■スタッフ
監督:シム・ナヨン
脚本:ペ・セヨン
原題:나쁜엄마(ナップンオンマ=悪い母親)
■キャスト
チン・ヨンスン役:ラ・ミラン
チェ・ガンホ役:イ・ドヒョン
イ・ミジュ役:アン・ウンジン
パン・サムシク役:ユ・インス
※チョウ里の人々
イ・ジャン役:キム・ウォネ
チョンさん役:カン・マルグム
パクさん役:ソ・イスク
青年会長役:チャン・ウォニョン
トロット・ペク役:ペク・ヒョンジン
ヤンさん役:イ・サンフン
パク・ボギョン、キム・ジウン
ミジュの双子の弟妹(子役):キ・ソユ、パク・ダオン
ウビョクG会長ソン・ウビョク役:チェ・ムソン
国会議員オ・テス役:チョン・ウンイン
オ・テスの娘オ・ハヨン役:ホン・ビラ
ほか
◇YouTube日本版予告動画
◇Netflix
【作品詳細】【「良くも、悪くも、だって母親」を2倍楽しむ】