『ペルリンプスと秘密の森』アブレウ監督、憧れの細田守監督との対談実現、互いのクリエイションの秘密を明かす
アレ・アブレウ監督の最新作『ペルリンプスと秘密の森』が12月1日に公開されるのを記念してアブレウ監督がファンを公⾔する、アニメーション映画監督の細⽥守(『⻯とそばかすの姫』)との対談が実現した対談インタビューを解禁された。予告動画が映画公式サイトで公開中だ。
アレ・アブレウは、前作『父を探して』(2016)が、アカデミー賞⻑編アニメーション賞に、南⽶の⻑編アニメ作品として初ノミネートされ、彗星のごとく現れ、新たな才能に世界が驚いた気鋭のブラジル人監督。『オオカミの家』の大ヒットも記憶に新しい、アニメーションの新潮流として注⽬される“イベロアメリカ”の最も重要な作家のひとりとされている。
アブレウ監督の前作『父をさがして』と新作『ペルリンプスと秘密の森』は、主人公が⼩さな子供、という共通点がある。これについて細田監督は<視点の違い>を感じたと⾔う。「『⽗を探して』は、多分監督の自分の話なんだな、という気がして。それに対して『ペルリンプスと秘密の森』は、多分、お子さんの話なんだろうなって」と述べ、アブレウ監督自身も「『ペルリンプスと秘密の森』は子ども時代に潜りこんでいくという感覚で作っています」と答える。
細⽥監督についてファンであると同時に、⾃⾝にとって<アニメーションの師匠>の⼀⼈だと公⾔するアブレウ監督。その理由の⼀つについて、いつも“次元の違う場所”が出てくることを例に挙げ「⾃分達の世界を違う⽬で、⾒つめることができます」とその魅⼒に⾔及、細⽥監督も「もっと新鮮に、世界を⾒れたらいいなと思って<映画を観たい>と思うので」「そういうことを、⾒る⼈にも感じてほしいなあと思います」と同意、⼦どもを主⼈公に映画を作っていくことの魅⼒と、届けたい想いについても答えた。
「こんなストーリーの作品、今まであったかな︖って。多分無いと思うんですよね」―アブレウ監督は⼀体どうやって、この予想もつかない展開のストーリーを思いついたのか︖『ペルリンプスと秘密の森』を観た時に感じた印象を、率直に伝えた細⽥監督。その問いについてアブレウ監督は「僕の映画はすべて、僕が⾒つけた⼩さな断⽚から⽣まれます」「今回は⼀⼈の⼦どもが、森のある場所から出ていこうとするイメージです。オオカミの格好をした⼦どもで顔の化粧が落ちかけており̶⽔に覆われた森から出ていこうとしていました」と物語のスタートとなったクリエイションの⽔源はあくまでもイメージであることを明かすと、細⽥監督は「まず最初は、絵からなんですね︕」「ひっくり返すようなストーリーも、⼀種のオチから⼊ったんじゃないかと思ったんだけど」と驚きを⾒せた。
『ペルリンプスと秘密の森』は、オオカミのような姿をした⼦供達が主⼈公だということをきっかけに、細⽥監督が⼿がけたオオカミを主⼈公にした『おおかみ⼦供の⾬と雪』(2012)やトム・ムーア監督による『ウルフウォーカー』(2020)にも話題が及んだ⼆⼈。
細⽥監督がトム・ムーア監督と対談した際「彼もちょうどオオカミの⼦どもの話を作っていたから、僕ら似ているね」、と⾔っていたらまた似ている⼈が現れた︕」とアブレウ監督に笑顔を⾒せ、世界の全く違う場所で、クリエイターたちが同じテーマを表現するために、オオカミという同じモチーフを使⽤するという不思議な出来事について「<オオカミと⼦ども>じゃなきゃ⾒えない何かを、きっと描こうと思ってオオカミにしているんでしょうね。きっと」と思いを馳せながら、⾃⾝の『おおかみ⼦供の⾬と雪』に込めたメッセージについても明かすなど、お互いのクリエイションに対して尽きない興味を語り合った。
陽気で軽やかな⾳楽を担当したのはアンドレ・ホソイ。彼が率いるパーカッショングループ Barbatuques(バルバトゥッキス)は監督と書き下ろした主題歌「Daqui prá lá, de lá prá cá (pra Naná) 」(From here to there, from there to here(for Naná))を担当。中国、ベネズエラ、コロンビアの楽器を使い、多様な⾳⾊で⾳でもカラフルで異なる要素が融合した強さを表現。カエターノ・ヴェローゾやジルベルト・ジルと並ぶムジカ・ポプラール・ブラジレイラの代表的ソングライター、ミルトン・ナシメントの「Bola de Meia, Bola de Gude」のインストルメント曲も映画の中核をなし⼼地よい没⼊感へと観客を誘う。
⼀⼈の少年の⽬を通して描く南⽶⼤陸の歴史と冒険の物語である映画『⽗を探して』で、2014 年アヌシー国際アニメーション映画祭クリスタルアワード(最⾼賞)&観客賞を W 受賞、2016 に新設されたアニー賞⻑編インディペンデント作品賞(のちに『ウルフウォーカー』や『未来のミライ』が受賞)を受賞したほか、2016 年アカデミー賞⻑編アニメーション賞に南⽶の⻑編アニメ作品として初ノミネート︕彗星のごとく現れた新たな才能に世界が驚いた気鋭のブラジル⼈監督のアレ・アブレウ。
前作はダイアローグのない作品だったが本作では主⼈公が 2 ⼈になったことで対話が⽣まれ、セリフが⽣まれた。異なる者同⼠が同じ⽬的のために違いを超えて⼿を組むとき、個⼈の才能を超えた⼤きな⼒が⽣まれ、仲間がいることへの安⼼感や幸せは、より良い未来のための⼀歩を踏み出すエネルギーとなっていく。そしてアマゾンの保全が⼤きな課題であり責任でもあると感じているブラジル⼈監督の⽬には、やりきれない現実が映っているが、同時に「⼦どもの澄んだ⽬で⾒つめると光のような希望が⾒えてくる」と、本作について語っている。
■イベロアメリカとは?
欧州及び中南⽶のスペイン語・ポルトガル語圏諸国から構成される地域のこと。この地域では、2000 年代末から共同製作などアニメーション業界の関係強化に向けた取り組みが進んでいる。2018 年にはアルゼンチンのアニメーション作家キリノ・クリスチャーニにちなんだキリノ・アワードが誕⽣し、受賞作がアカデミー賞やアヌシー国際映画祭などでノミネートや受賞をし始めている。世界から注⽬される作家も輩出するようになる中、その牽引役を担っているのがアレ・アブレウである。
12/1(金) YEBISU GARDEN CINEMA ほかロードショー
■作品概要
脚本・編集・監督:アレ・アブレウ(『⽗を探して』)
⾳楽:アンドレ・ホソイ/オ・グリーヴォ
2022年 ブラジル /原題:Perlimps/スコープサイズ/80分/⽇本語字幕 星加久実
後援:駐⽇ブラジル⼤使館 配給:チャイルド・フィルム/ニューディア― (c) Buriti Filmes, 2022
◇公式HP