新垣結衣・夏帆・瀬田なつき監督登壇『違国日記』公開直前イベントレポート
「心が救われる」「人生の本棚に入った」など多くの共感を得たヤマシタトモコの同名コミックを映画化した『違国日記』の公開直前イベントが5月29日(金)に開催され、新垣結衣、夏帆、瀬田なつき監督が登壇し、映画の魅力を存分に語った。予告動画は映画公式サイトで公開中だ。
『違国日記』は、人見知りな小説家の高代槙生(35)と、その姪・田汲朝(15)の対照的なふたりの同居譚。なかなか理解し合えない寂しさを抱えながらも、丁寧に日々を重ね生活を育むうちに家族とも異なった、かけがえのない関係になっていく。今、世界が必要としている、優しさの形を提示するヒューマンドラマ。
原作は、「さんかく窓の外側は夜」など多くの人気作を生み出したヤマシタトモコの同名漫画。人見知りな30代女性と人懐っこい素直な15歳の少女。まったく性格も異なるふたりの交流を軸に、他人との関わり合いや大人が抱える正直な悩みを鋭くも優しい視点で炙り出し、惜しまれながら 6 年という連載期間を経て23 年 6 月に最終回を迎えたが、連載終了後も人気の高さが話題となっている。
【日程】5月29日(水) 【場所】神楽座
【登壇者】新垣結衣、夏帆、瀬田なつき監督
MC:青木裕子 ※敬称略
不慮の事故がキッカケで大嫌いだった自分の姉の子供である朝(早瀬)を迎え入れることになる、人見知りの小説家・高代槙生を演じた新垣。原作ファンゆえに劇場公開間近を迎えた本作について「出演作を初めて見る時は自分の反省点ばかりを見てしまうけれど、今回の作品は初見から心が洗われた様な気持ちになりました。夏の湿気の混じった緑の匂いや土の匂い、体育館の冷える感じなどシーンごとに空気感が伝わってくる作品だと思いました。それによって物語に引き込まれるような気持ちになれて凄くいいなと思いました」と朗らかな表情。「試写室を出て瀬田監督と笑顔を交わした記憶があります」と手応えを得ていた。
槙生の良き理解者で、二人の暮らしを見守る友人・醍醐奈々を演じた夏帆。「胸がギュッとなるシーンが沢山あって、原作と映画それぞれに流れている空気感に共通するものを感じて、原作ファンとして嬉しかった」と瑞々しい魅力に感激していた。
意外なことに新垣と夏帆は10年ぶりの顔合わせで本格的初共演。新垣は夏帆について「お芝居ではご一緒したことがないもの、ずっと前から知っている人みたいな意識があって、本読みの時に『わー!久しぶり~!』みたいな感じになって距離を感じなかった。夏帆ちゃんが醍醐を演じると聞いてピッタリだと思ったし、醍醐と槙生の過ごしてきたこれまでの歴史を表現する時に安心感があると思った。不思議な感覚です」と信頼しきり。すると夏帆も「まさに私も同じことを思っていて、同じことを言ってしまいそうだった」と照れて、新垣は「ゴメン!」と笑う相思相愛ぶりを見せていた。
改めて夏帆は新垣について「根拠はないけれど、主演が新垣結衣さんだと聞いたときに『大丈夫だ!』と思えた。不思議です」と言うと、新垣も「本当にずっと昔から知っている人という感じがしました」と懐かし気。夏帆は「10代で一度一緒に仕事をして、それ以降は挨拶する程度でお会いすることはあったけれど、特別何かを話したりとかはなかった。それなのになぜだろう?(映画やテレビなどで)ずっと見てきているからかな?」と首をかしげると、新垣も「その感覚って自分だけかもと思っていたけれど、本読みで顔を合わせた時にお互いに『わー!』となれたので『あ、やっぱり!』と思った」と見えざる縁を感じていた。
また槙生の性格について新垣は「人に対しても自分に対しても正直な人。伝える言葉も嘘がないからこそ、初めて槙生のような大人に会った朝は寂しい思いをするけれど、実は槙生なりの相手を尊重するやり方や距離感がそれであって、自分にも人にも正直。誰といる時も表情が豊かで、自然に笑うしふざけるし戸惑うし無理に愛想笑いをすることがない」と分析し「槙生のそんなところを大事にしつつ、色々な顔を見せられればいいと思った」と演技プランを振り返った。
一方、夏帆は槙生と醍醐の関係性について「二人の関係はそれこそウソがない関係で素敵。べったりしているわけではないけれど、お互いを必要として理解している。でも会うと10代のノリになる」として「撮影が楽しくて、結衣ちゃんに会うのを楽しみに現場に行っていました。私にとっても大切にしたいと思えるような思い出のある現場でした」とニッコリだった。
瀬田監督は新垣との初コラボの感想を聞かれると「新垣さんは槙生そのままで、正直で誠実でウソがない。台本に対しても疑問点があると相談してくれてディスカッションしました。私の相談にも乗ってくれるので安心感があった。撮影も後半になると『新垣さんがそう言うならば任せて安心』という感じさえあった」と絶大の信頼を寄せた。
これに新垣も「瀬田監督は相談した時にレスポンスが早くて、そこを頼りにしていました。私の不安や疑問点を聞いてくれて心強かった。しかも疑問点やブラッシュアップしたい箇所がお互いに一致していたらしく、そこを分かち合えた気がしました。ここまで話を聞いてもらっていいのかな?と思いながらも、瀬田監督のお陰で真正面から作品に向き合うことが出来ました」と感謝していた。
また新垣は、劇中で槙生が朝に放ったセリフ『私の姉への怒りや息苦しさを、あなたは決して理解できない。私が、あなたの焦りや寂しさを理解できないのと同じように。あなたと私は、別の人間だから』をピックアップして「原作には『だから歩み寄ろう』という続きがある。その気持ちを私自身も大事にしたいと思いました」と噛みしめていた。
最後に主演の新垣は「物語の中で皆それぞれがそれぞれの境遇で抱えているものがあって、みんな違う人間で違う人間だけれども一緒にいることで優しい時間を過ごすことができるというテーマはとても良いもの。『違国日記』は優しい映画だと思います。それは原作にも言えることですが、原作に流れる空気が映画の中にも表現できたと思うので、今とても嬉しいです。公開はもう少し先ですが、誰かを誘っていただいて劇場に足を運んでいただきたいです」と観客に呼び掛けていた。
性別や年代を超えた多くの人が共感し、心を癒される『違国日記』。ぜひ劇場でお気に入りのキャラクターと出会ってほしい。
◇公式サイト