「文武」1年前の制作発表会を振り返る…監督は制作に反対していた!KBS財政危機の中、異例の開催
11月14日(土)21時20分、韓国KBS2でいよいよ初回放送を迎える新大河ドラマ「文武」(原題:문무)。実は本作の制作発表会は、放送開始の約1年前となる2025年11月18日、まだ撮影さえ始まっていない異例のタイミングで開催された。
「文武」は、弱小国だった新羅が、強大な百済・高句麗、そして大陸の唐をも退け、三韓(三国)統一を成し遂げていく激動の歴史と、その中心にいた4人の指導者たちの凄絶な生き様を描いた総製作費300億ウォンの大河ドラマ。➡navicon特集【「文武」を2倍楽しむ】
異例の1年前の制作発表会の背景には、韓国の公共放送KBSが直面した深刻な財政危機と、受信料徴収制度の転換があった。現在もYouTubeにも当時の会見映像が数多く公開されていることから、改めて制作発表会を振り返る。キム・ヨンジョ監督の「最初は私も編成に強く反対していた」という意外な告白から、イ・ヒョヌク、チャン・ヒョク、キム・ガンウら豪華俳優陣の役作り、そしてKBSが本作に懸ける覚悟まで、興味深い発言が相次いだ。
■なぜ撮影前に制作発表会?背景にKBSの深刻な財政危機
2025年11月18日、ソウル市九老区新道林のザ・セイントで開かれた「文武」の制作発表会には、キム・ヨンジョ監督をはじめ、主演のイ・ヒョヌク、チャン・ヒョク、キム・ガンウ、チョン・ウンイン、チョ・ソンハらが出席した。
通常、韓国ドラマの制作発表会は放送開始直前に開催される。しかし、このとき「文武」はまだ本格的な撮影に入っておらず、公開された映像もAIやCG技術を紹介するものや、出演者の短いインタビューが中心だった。
それでもKBSが異例の早さで発表会を開いた理由は、同局を取り巻く厳しい経営環境にあった。
KBSは2023年7月、テレビ受信料を電気料金と切り離して徴収する制度への変更によって、財政面で大きな打撃を受けた。しかし、2025年4月に受信料の再統合徴収を認める改正法が成立し、同年10月23日から再び電気料金との一括徴収が可能となった。
制作発表会に出席したパク・ジャンボムKBS社長は、受信料の分離徴収によって約1000億ウォン規模の赤字に苦しんだことを明かしたうえで、徴収制度の再変更によって財政再建への道筋が見えてきたと説明。その成果を視聴者に還元するための代表的な作品が「文武」だと強調した。
さらに、現代社会における地域間、政治的立場、世代や経済格差など、さまざまな分断にも言及し、今こそ公共放送が伝えるべき価値は「統合」だと語った。
つまり、新羅による三国統一を描く「文武」は、単なる歴史大作ではなく、財政危機を乗り越えようとするKBSが、公共放送としての存在意義を示すための象徴的な作品でもあったのだ。
■「最初は私も反対していた」監督を変えた文武王の奇想天外な戦略
そんな「文武」の制作発表会で、最も意外な発言をしたのが演出を担当するキム・ヨンジョ監督だった。「この作品が編成会議に上がってきたとき、私はCP(チーフプロデューサー)だったが、実は強く反対していた」。しかし、脚本家と話し合ううちに、物語の面白さに引き込まれていったという。
監督が興味を持ったのは、新羅による三国統一が、決して最初から計画された必然的な出来事ではなかったという点だ。「新羅が統一を成し遂げたのは、非常に偶然性の高い出来事だった。淵蓋蘇文が打ち上げた花火が連鎖反応を起こし、誰も想像しなかった展開につながっていった」
もちろん、これは実際に淵蓋蘇文が花火を打ち上げたという意味ではなく、彼の行動が思いがけない歴史の連鎖を生んだことを表現した比喩だ。
当時は新羅、百済、高句麗、唐、さらに日本も加わり、各国が生き残りを懸けて駆け引きを繰り広げていた。指導者が一度判断を誤れば、国そのものが滅亡しかねない時代だった。監督は「どのようなリーダーがいれば国は滅びずに済むのか」という問いが、現代社会にも通じると感じたという。
なかでも心を奪われたのが、文武王となる金法敏(キム・ボプミン)の戦略だった。「金法敏が唐の城を奪う場面があるのだが、誰に奪われたのかさえ分からないほど奇想天外な戦略だった。わが国にこんな王がいたのかと思った。ぜひ多くの人に知ってもらいたかった」
金庾信、金春秋、金法敏という新羅の英雄たちを、単なる武勇の持ち主ではなく、卓越した戦略家として描くこと。それこそが監督が本作に魅了された大きな理由だった。
■イ・ヒョヌクが演じる文武王は、屈辱にも耐える冷徹な勝負師
主人公の文武王・金法敏を演じるのは、2025年初の時代劇「元敬(ウォンギョン)」の主役で高い評価を受けたイ・ヒョヌクだ。金法敏は、後に武烈王となる金春秋の長男であり、名将・金庾信の甥にあたる。激しい自尊心と不屈の精神を持ちながら、国と民を守るためなら屈辱さえ受け入れる冷静な戦略家として描かれる。
イ・ヒョヌクは今回が初めての大河ドラマ出演となる。「冷静で理性的、それでいて現実的な人物。さまざまな面で魅力にあふれたキャラクターだ」
また、時代の変化によって可能になった新しい表現方法も取り入れながら、多くの視聴者に愛される作品にしたいと抱負を語った。武力だけでなく、外交や知略を駆使して国を守ろうとした文武王。その複雑な内面をイ・ヒョヌクがどのように表現するのか、注目したい。
■チャン・ヒョクが語った淵蓋蘇文の意外な素顔「実は隠れた美男子だった」
高句麗の実力者・淵蓋蘇文(ヨンゲソムン)役を演じるのは、「チュノ~推奴~」「私の国」など、数々の時代劇で強烈な存在感を見せてきたチャン・ヒョクだ。
淵蓋蘇文は、政変によって絶対的な権力を握り、強力な軍事力で高句麗を支えた一方、独裁的な統治によって国の未来に暗い影を落とした人物として描かれる。
チャン・ヒョクは、これまでの作品で描かれてきた淵蓋蘇文とは異なる、新しい人物像を作りたいと説明した。「淵蓋蘇文は、さまざまな解釈ができる人物。歴史を勉強しながら、より立体的で、これまでとは違う姿を見せたいと思った」。さらに、会場を笑わせたのが容姿に関する発言だった。「淵蓋蘇文も実は美男子だった。ただ、あまり表に出なかったので知られていなかった」
金春秋は各国を行き来していたため美貌が広く知られていたが、淵蓋蘇文は知られざる美男子だったというのがチャン・ヒョクの説明だ。「だから私がキャスティングされたのだと思う。笑わせようとしているわけではなく、本当だ」。真剣な表情で繰り返すチャン・ヒョクの言葉に、会場は笑いに包まれた。
■キム・ガンウ「まるで武侠小説!」7歳年下の息子役イ・ヒョヌクにも大満足
金春秋、すなわち新羅第29代王・武烈王を演じるのはキム・ガンウだ。金春秋は、新羅で初めて真骨出身として王位に就いた人物。華麗な話術と魅力的な笑顔の裏に、強い野心と深い苦悩を隠し持つ。
キム・ガンウは「文武」の脚本を初めて読んだときの感想を、次のように語った。「本当に面白かった。まるで武侠小説を読んでいるようだった」。大河ドラマというと、重厚で難しい作品を想像しがちだが、本作は登場人物一人ひとりが生き生きと描かれているという。
そして、金春秋という人物についても「単なる優秀な戦略家ではなく、多くの痛みを抱えている人物だと感じた」と説明。「大義のために生きる姿は、今の時代に必要なリーダー像ではないか」と語った。
一方、息子の金法敏を演じるイ・ヒョヌクは、実年齢ではキム・ガンウより7歳年下だ。この配役について聞かれると、キム・ガンウは「非常に満足している」と笑顔を見せた。「歴史書には金春秋が非常に美男子だったと書かれている。その遺伝子が、どうやら息子に受け継がれたようだ」
親子役を演じる2人の息の合った演技も期待される。
■チョン・ウンインは生き残りを図る現実主義者、チョ・ソンハは悲劇の王に
チョン・ウンインが演じるのは、新羅朝廷の隠れた実力者・金珍珠(キム・ジンジュ)。情勢を冷静に見極め、常に勝者の側に立つことで一族を守ってきた徹底した現実主義者だ。
一方、チョ・ソンハは高句麗第27代王・栄留王(ヨンニュワン)こと高建武(コ・ゴンム)を演じる。高建武は、数々の戦いで功績を挙げた戦争の英雄だったが、王位に就いてからは民の苦しみを減らすため、唐との戦争を避けて平和を追求した。しかし、淵蓋蘇文との対立が深まり、暗殺を企てるものの、逆に政変の犠牲となって悲劇的な最期を迎える。
軍事力によって国を守ろうとする淵蓋蘇文と、戦争を回避して民を守ろうとする栄留王。高句麗内部の権力闘争も、物語序盤の重要な見どころとなりそうだ。
■モンゴルで大規模戦闘を撮影!AIとCGで壮大な三国統一戦争を再現
「文武」は、壮大な戦闘シーンの撮影のため、モンゴルでの大規模ロケーションを計画していた。
キム・ヨンジョ監督は、買肖城(メソソン)の戦いや伎伐浦(キボルポ)の戦いなど、大軍が激突する場面を韓国国内だけで再現することは難しいと説明した。モンゴルでは約300頭の馬を借りることが可能で、広大な地形も当時の戦場を再現するのに適しているという。現地視察の際には、モンゴル文化相から支援の約束も受けたことを明かした。
また、CGやAIを活用した新しい映像表現にも挑戦する。ただし、AIに全面的に依存するわけではない。実写映像を基本とし、制作スタッフによる厳しい検証を経て、作品の完成度を高められる場合に活用する方針だ。これは、限られた制作費を有効に使いながら、壮大な戦闘シーンを実現するための工夫でもある。
■「歴史の試験を受けられるほど正確に」監督が誓った徹底した時代考証
キム・ヨンジョ監督がもう一つ強調したのが、歴史考証へのこだわりだった。監督自身が国会図書館に通って史料を調べているほか、脚本家も膨大な資料を研究し、専門家による諮問体制も整えているという。「韓国側の勝利を痛快に見せるために、中国を弱く描いたりすることはしない」
そして、歴史を一方的に美化するのではなく、可能な限り客観的に描きたいと説明した。「このドラマを見て歴史の試験を受けても大丈夫なほど、徹底的に検証したい」
もちろん歴史ドラマである以上、人物の心理や会話には創作も含まれるだろう。それでも、歴史の流れや戦争の背景を正確に伝えようとする監督の姿勢は、歴史ファンにとって心強い。
■「大王の夢」と同じ時代を描く「文武」――KBS大河ドラマの新たな挑戦
「文武」が描く時代は、2012年にKBS1で放送された大河ドラマ「大王の夢」と重なる。
「大王の夢」は、チェ・スジョンが金春秋を演じ、三国統一に至る歴史を描いた作品だった。しかし、放送期間中にチェ・スジョンの落馬事故やパク・ジュミの交通事故など、主要キャストの事故が相次ぎ、制作上の苦難に見舞われた。
一方、今回の「文武」は、金春秋の息子・金法敏を主人公に据えることで、同じ歴史を異なる視点から描こうとしている。
また、新羅の勝利だけでなく、高句麗や百済、唐、さらには日本を含む複雑な国際情勢の中で、各国の指導者たちがどのような選択を迫られたのかにも焦点を当てる。新羅の三国統一は、果たして必然だったのか。それとも、幾重もの偶然と指導者たちの決断によって実現したのか。
キム・ヨンジョ監督が強く引かれたという、この歴史の意外性こそが「文武」の大きな魅力になりそうだ。
■11月14日、いよいよ初回放送!制作発表会の動画もYouTubeで公開
2025年11月、まだ撮影も始まっていない段階で開催された異例の制作発表会。それから約1年を経て、「文武」はいよいよ視聴者の前に姿を現す。初回放送に先立ち、11月7日(土)と8日(日)には、KBS大河ドラマ45年の歴史や制作の舞台裏、三国統一の歴史的背景などを紹介する2夜連続の特別番組「文武スペシャル」も編成された。
●7・8日に特番放送、三国統一の壮大な物語を先取り
また、YouTubeには2025年11月18日の制作発表会の映像が多数公開されており、出演者たちの表情や会場の雰囲気を映像で確認できる。
◇YouTube|KBS[文武」制作発表会動画一覧
監督自身が当初は制作に反対していたという意外な事実。財政危機からの再起を懸けるKBSの決意。そして、歴史の荒波を生き抜いた英雄たちを描こうとする俳優陣の熱意。
こうした背景を知ってから視聴すれば、「文武」は単なる壮大な歴史ドラマとは違った面白さを感じられるはずだ。
KBS2新大河ドラマ「文武」は、2026年11月14日(土)21時20分より韓国で放送開始。 演出はキム・ヨンジョ、ク・ソンジュン、脚本はキム・リホン、ホン・ジニが担当。イ・ヒョヌク、チャン・ヒョク、キム・ガンウ、パク・ソンウン、チョン・ウンイン、チョ・ソンハらが出演する。
◇종합 예고(総合予告)
◇KBS2「문무」HP