②視聴率10%から25%超に化けた「太陽の女」の見どころ

特集 韓ドラここが知りたい 愛憎劇・ヒューマンドラマ
正統派韓ドラここにあり!と、久しぶりに韓ドラらしいドラマ「太陽の女」にどっぷり漬かったおすすめ隊。いったいこのドラマのどこにこんなにハマってしまったのかツラツラ考えてみた。

某TV局の「太陽の女」番組サイトでこんなキャッチフレーズを見つけた。“・・・2人の男性を通じ、最終的に人間愛を描く作品”。確かにこのドラマは、単なる血のつながらない姉妹の愛憎劇&復讐劇では済ませられない深いテーマが見え隠れする。話が進むにつれてもっと深い人間愛というころまで考えさせられてしまうドラマだ。

養母は実の娘が生まれたことでジスが邪魔になった。まるでも空に太陽は二つは要らないとばかりに。ジスもまた太陽になりたかった。だから、妹を捨ててしまった。ちろん、どんな事情があるにせよ、わずか5歳の妹を置き去りにするジスは許されない。が、しかし、養母がもう少しジスに優しくしてあげれば、養父が口だけでなく、妻のジスに対する冷たい仕打ちをやめさせていれば…、いっそジスを施設に戻していればこんな不幸はおきなかっただろう。いや、あの悪夢の日、サウォル(ジヨン)が遊んでくれない姉のジスに発した一言「お母さんに言いつけてやる」がなければ、ジスの悪魔の行動はなかったかもしれない。もっともそれではドラマにならないが、ジスの犯した罪を考えるとき、養母の身勝手さ、養父のどこか逃げ腰の態度、そして5歳の妹の、決して天使でない子ども特有の残酷さが見えて、ジスだけを悪とは決めつけられなくなった。

ひょっとして、ジスの罪は誰の心にもある影の部分かもしれない。そんなことを考えて繰り返しドラマを観ていると、ふと、名作「罪と罰」(ドストエフスキー著)の「ひとつの繊細な罪悪は百の善行に償われる」という言葉を思い出した。超美形の貧乏大学生ラスコーリニコフがこの理念の下、強欲非道な高利貸の老婆の殺害で始まる小説。高利貸しを殺害してその財産を有効に転用しようと計画するが、偶然居合わせたその妹まで殺してしまうことで、心に不安と恐怖が膨れ、良心の呵責に耐えられぬ主人公が、偶然知り合った娼婦ソーニャの自己犠牲に徹した生き方に心打たれて、最終的に法の手に身を委ねるという物語だ。

もちろん、ジスはラスコーリニコフではない。自分の成功を“百の善行”になぞらえ、妹を高利貸しになぞらえて事件を起こしたのではないだろう。しかし、ジスはラスコーリニコフと同じく、妹を捨てた罪悪感に苛まれ、養母の厳しい追求の目からも逃れることもできないでいた。自ら招いた結果とはいえ、ジスの人生は、ひょっとするとサウォルの歩いてきた人生より過酷だったかもしれない。どんな苦労もあのチェ教授よりはマシ!と思わせるほどジスの生活は辛かっただろう。人の心を一瞬で凍りつかせる、あの養母の冷たい目を演じられる女優はそうはいないだろう。かの野際陽子、イヤイヤかつて大映で数々の強い女を演じた江波杏子だって負けている。観ていてそれほど怖かった。

前出の某番組サイトには、またこんなキャッチフレーズもあった。“砂漠の太陽と春の日ざしに似た2人の女性を通じ欲望と和解について描かれていく”。これがどうにも納得できない。いったい誰が砂漠の太陽で、誰が春の日差しなのだろう?役柄からしてきっと、姉のジス=砂漠の太陽、妹のサウォル=春の日ざしといいたいのだろうが、これがどうもしっくりこない。“大輪のカトレア と まっすぐに伸びるひまわり”なら分かるが、ジスを 砂漠の太陽 と見るにはギラギラ感が足りないし、サウォルを 春の日ざし と呼ぶには少々たくましすぎる。そもそも、韓国ドラマに描かれる女性はとてもたくましい!やられっぱなしのヒロインにはめったにお目にかかれない。ざっと思い出しても「冬のソナタ」のユジン(チェ・ジウ)くらいだ。もっとも、このユジンは韓国の若者にはあまり評判よくなかったというから、きっと韓国の春の日差しは、日本のそれより相当激しいのかもしれない。(詳しくは[NHKと冬のソナタ]第4章のキャストで確認)

ジスの婚約者ジュンセについては“ジェントルマンでマナーがよく、女性が望むものを知っている”と紹介してある。しかし、果たしてジュンセの優しさはジスの求めていたものだったろうか。多くの女性は愛する人に、社会的に正しいとされるアドバイスなんて求めていない。欲しいのは、「君の気持ちは良く分かる。君が正しい」の一言なのだ。もしくは、黙ってただ抱きしめてくれるだけでいい。これが、ジュンセにはできなかったのだ。おまけに、彼の心にはサウォルがいたから、どちらの味方もできないジュンセは、社会的な善でしかアドバイスができなかったのだ。これが女性を一番イラっとさせることを彼は知らなかった。

一方、サウォルの幼馴染のドンウのことは、“愛のために自分を犠牲にできる男”とあった。彼は何も見返りを求めないで、ただただジスへの献身愛に徹した。心が弱っている女性にとって、ドンウの無償の愛は何よりの癒し。ドラマの中で、ドンウはジスのために何度も薬を届けるシーンがあるが、ジスにとっては、ドンウそのものが“心の傷を癒す特効薬”だったのかもしれない。

「太陽の女」の結末は、予想していたエンディングとまったく違っていた。ネタばれになるので、詳しくは書けないが、最後の言葉にこのドラマが本当に言いたかったことが込められていたのかもしれない。「なぜ、未来のわからぬまま命を下さるのだろう」

ドロドロの愛憎と復讐劇を期待して観始めたドラマで、思わず哲学させられた「太陽の女」。10%から25%の高視聴率に化けた理由がわかったような気がする。これは絶対ハマる一作だ!!

kandoratop[愛憎劇&ヒューマンドラマ]に戻る

★本サイトで掲載されている記事、写真については無断使用・無断複製を禁止いたします。

※3月1日まで、フジテレビ韓流αで昼2時7分から放送されたドラマ
 フジテレビ「太陽の女」番組サイト
「太陽の女」を配信しているサイトをナビコンで検索


【PR】韓流ドラマ、音楽、グッズなどはこちらから
日本最大、「韓流ショップ楽天店」!CD/DVD/雑誌/本/スターグッズ/イニシャルアクセサリ/コスメ/食品など


  • 紹介したページには上の※印から移動できます

(C)Licensed by KBS JAPAN.(C)KBS All rights reserved.
・韓国初放送:2008年
・放送局:KBS
・放送回数:全20話
・プロデューサー:ペ・ギョンス
・脚本:キム・インヨン・出演者:キム・ジス、チョン・ギョウン、イ・ハナ、ハン・ジェソク、カン・ジソプ、アン・ジョンフン、チョン・エリ