忠臣蔵外伝 四谷怪談
数百年に渡って日本人の心を引きつけて来た『忠臣蔵』、やはり数百年に渡って人々を震え上がらせ続けている『四谷怪談』。一方が「義」と「組織」の論理で突き進む悲劇であるならば、一方は「悪」の論理と「個」の激情が突き動かすドラマである。実に正反対に見える二つの物語であるが、そもそも江戸時代後期の狂言作家・鶴屋南北が書いた『東海道四谷怪談』では主人公・民谷伊右衛門は赤穂浪士という設定。江戸時代の芝居小屋では『忠臣蔵』と『四谷怪談』が二日間に渡って一幕ずつ交互に上演され、庶民に熱狂をもって迎えられていた。現代では切り離されて上演されている「表」と「裏」の物語が同じ舞台の上に現れたとき――そこには「忠義の美談」「お岩怪談」以上のカタルシスを与える何かが存在したのだ。その二つの物語が、深作欣二監督の熱気溢れる演出によって『忠臣蔵外伝 四谷怪談』として舞台をスクリーンに変えて甦った!
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