【蒼穹の昴】ドラマはいよいよ動乱の時代へ…清朝の歴史をもっと知りたい![コラム]

2010年12月04日23時05分ドラマ
視聴サイトへ

NHKドラマ「蒼穹の昴」ですが、梁文秀や春児といった登場人物を巡る人間関係のドラマが進む一方でどんどん政治的な動きも進んできています。歴史を題材に扱ったドラマの特徴として、既に起こった事実を元に話が進んでいるわけなので歴史書を紐解けば筋書きがわかるという点があります。最近あるドラマ掲示板を覗いたところ、先日最終回を迎えた大河ドラマ「龍馬伝」についての話で、龍馬が暗殺される時のキャスト云々という書き込みに対して「ネタバレだ!」と怒った人がいたという内容が笑い話として書かれていました。読んだ時は私も思わず吹き出してしまったのですが、ふと思い立って、ではどこまで歴史の話を知っていて当然となるかの線引きがよくわからないなと考え込んでしまいました。
私はたまたま中国の歴史を好んで関連書物をよく読んでいたので自分にとってはよく知っている事ですが、考えればそんな私は少数派で、マイナーである事も自覚しています。ですからコラムを書くに当たって歴史の事をどこまで書いていいものかと思い悩んだのですが、そんな私の悩みをよそに本家NHKのドラマ公式サイトには立派な年表や歴史解説についてのコンテンツが揃っておりました。この公式サイトの「歴史背景」ですが、とても簡潔によくまとまっていると思います。私が高校時代に歴史のテストの前にこのサイトを読んでおけばもっと点が取れたかもと思った程です。このコンテンツには光緒帝の親政より後の事は述べられていませんが、いわゆる「重大なネタバレ」に当たりそうな事実が「年表・マップ」の方にはサラリと書いてあります。ですから、中国史は興味無かったけどたまたまこのドラマを見始めてしまった、西太后と光緒帝はどうなっちゃうの?!…って方がいらしたら、公式サイトの年表は見ない方が良いかと思います。

[それでも清朝の歴史を知りたくなった時に読んでみる本]
そんな訳でこのドラマを見て清朝の歴史に興味を持ったとき、どんな本に当たればよいかを考えて今回お勧めするのが陳舜臣「中国の歴史 七」(講談社文庫)です。作者は神戸出身の華僑の血筋で、当時の大阪外国語学校ではかの司馬遼太郎の一学年上、以前のコラムでご紹介した宮崎市定の孫弟子でもあります。中国歴史小説の先駆けのような方で、「阿片戦争」といった歴史を題材にした小説を古くから発表されています。琉球史にも造詣が深く、そこから書かれた「琉球の風」は東山紀之さん主演で大河ドラマにもなりました。中国史小説がお好きな方には定番の作家と言えるでしょう。
さて、困ったことに歴史というものは面々と続いているので、清朝だけ知りたいといってもそこだけすぽっと抜粋するとなると色々難しいものがあります。そんな中でも陳舜臣の「中国の歴史」は丁度歴史の節目のところで上手く巻が変わっているので、中国史の一部分だけ興味がある時に取り出すのに便利かと思われます。ちなみに私は6巻と7巻のみ所有しています。更に余談ですが、三国志好きの友人は3巻のみを所有しているそうです。7巻はアヘン戦争から後の中国についてです。ドラマと関連させると、7巻にある「北洋、敗れたり」の章が西太后が還暦を迎える年の話で始まっています。ページで言うと丁度中ごろあたりです。清朝が当時国際的にどのような立場にあったのか、その後どういった国際勢力図に巻き込まれていくのかが国内の動向と関連付けて記されています。北洋軍閥ってどんなもの?改革派って結局何がしたいの?といった疑問を持つ人には丁度ツボかと思われます。歴史の教科書に比べると圧倒的に情報量が多いので複雑に感じるかもしれませんが、ですます体の語り口で綴られており柔らかい文体なので、あまり堅苦しさはありません。
このシリーズは以前は平凡社から全十五巻のハードカバーで出版され、その後講談社文庫から全七巻で出されています。文庫版のあとがきにはちょっとした著者の裏話なども語られています。このドラマをきっかけに清朝の歴史に興味を持つ人が多くいらっしゃれば、個人的にはかなり嬉しく思います。

ドラマ「蒼穹の昴」は毎週日曜日よる11時から放送です。予告および関連動画は、ドラマ公式サイトにて視聴出来ます。

NHKドラマ「蒼穹の昴」

ドラマをもっと楽しむためのコーナー [「蒼穹の昴」を2倍楽しむ]メニューへ