【韓ドラコラム】「イ・サン」に登場する実在の洪国栄(ホン・グギョン)って?

2018年10月27日21時45分ドラマ
(c) 2007-8 MBC

ドラマ「イ・サン」後半では、サンの右腕であるホン・グギョンのエピソードが続いているが、実在した洪国栄(ホン・グギョン)はどんな人物だったのか?また、演じたハン・サンジンとはどんな俳優で、どんな思いでこの歴史上の人物を演じたのかを紹介しよう!日本語字幕はないが、MBCClassicチャンネルでドラマ全話の動画配信をしている。
※2025年2月20日リライトしました。



史実に残る洪国栄(ホン・グギョン)を予備知識なしでドラマを楽しみたい方は、以下の文は「イ・サン」第67話まで視聴された後にお読みください。
実際にはどんな人物だったかを知った上で、ドラマではどのように脚色されるのかを楽しみたい方はいつでもどうぞ!


■ドラマ「イ・サン」の中のホン・グギョン
ホン・グギョンという人物は、ドラマでサンの即位に大いに貢献し、その後も参謀として権力の中心にいて、サンから強い信頼を置かれていた。ドラマでは、サンとグギョンの間は単に王と臣下という主従関係だけでなく、堅い絆で結ばれていたと紹介し、サンのセリフの中でも何度かそうした言葉を言わせている。
しかし、52話で妹をサンに嫁がせて外戚になってからのホン・グギョンは、恐ろしいほどの権力を手に入れ、そのために今後とんでもないことをしでかしてしまう。では、実際の洪国栄はどうだったのか?

■実際の洪国栄(1748年 - 1781年)
正祖は即位した年に、ドラマでも登場する奎章閣(キュジャンガグ)を宮殿内に設置し、国づくりに必要な人材を集めて革新的な政治をするための準備を始めた。世孫時代から自分を支えてくれた洪国栄を、政治と全役人を統括する最高官庁である承政院の副承旨に電撃起用し、その後承旨に昇格させた。(官職についてはコチラで紹介)さらに、精鋭を引き抜いて宿衛所(スグィソ)を創設し、王宮の護衛を担当させ、その隊長にも洪国栄を兼務させた。つまり、政事から人事、兵権までのすべてが洪国栄の手を介さなければ何も決まらなかったのだ。

彼は正祖の即位を妨害したチョン・フギョムたちを失脚させ、政権を独占する“勢道政治”を始めた。ところが、洪国栄という人物は、儒教で一番大切とされている年長者を敬う心(長幼の序)が乏しく、正祖以外にはすべて対等に話し、態度も尊大。行動も粗野で多くの醜聞がささやかれた。さらに、王妃から子供が生まれないのを口実に、自分の妹を嫁がせて、外戚としての力も持った。

ドラマでは、この妹役を女優チ・ソンウォンに演じさせているが、実際の元嬪(ウォンビン)が、側室となったのは12歳頃のとき。すぐにでもお世継ぎが欲しいときにこの縁組では、“外戚としての力目当て”と言われても仕方がないだろう。これについてはコチラで詳しく紹介。

イサンところで、洪国栄が勢道政治をひた走る時、肝心の正祖は何をしていたのか?正祖は、今後の国づくりに必要な人材を集め、外戚や宦官などの謀反や横暴をなくす革新的な政治をするための準備をしていたのだ。こうした正祖の政治哲学が、後世の人に「正祖が後10年長生きしていれば朝鮮時代は変わった」と言わせているのだろう。正祖の偉業についてはコチラで詳しく紹介している。

ともあれ、正祖は、洪国栄のある程度の横暴は知りながらも彼に国事を任せていた。しかし、元嬪が亡くなり、洪国栄にあまりにも権力が集中したため、ついに彼に政治からの引退を勧めた。しかし、一度握った権力はなかなか手放せないもの。洪国栄は保身のために、王妃暗殺まで計画してしまう。結局はこれが発覚してお家取り潰しの上、故郷へ追放された。このとき、1780年、洪国栄の勢道政治は4年間と短いものだった。

「洪國榮」というドラマがあるが、これは正祖の時代に、ホン・グギョンに焦点を当てた作品。機会があればこちらも視聴されてはいかがだろう。

ちなみに洪国栄と正祖の生母・恵慶宮洪氏とは、14代王宣祖とその継室仁穆王后の王女である貞明公主(朝鮮語版)を祖とする遠縁にあたる。

★ハン・サンジン(1977年12月9日生、182㎝、75㎏、O型)
ソウル芸術大学放送園芸科卒業。芸能界には、SBS公募タレント9期生としてデビュー。代表作として挙げられるのは2007年「イ・サン」「白い巨塔」、2009年「ソル薬局の息子たち」。他にも、日本でも人気のあった2009年「天使の誘惑」、2011年「根の深い木 -世宗大王の誓い- 」、2012年「馬医」など、いずれも大ヒットした作品でメインキャストあるいは重要な役どころで出演している。他にも無名時代には1999年「あなたはどなた」に始まり、2000年「カイスト」、2004年「バリでの出来事」、2005年「百万長者との結婚(ミリオネアと結婚すること)」などといった話題作にも出演している。そのため、韓国では「隠された視聴率製造機」とも呼ばれた。他にも、2015年「六龍が飛ぶ」、2019年「ヘチ 王座への道」、2024年「ホン・チョンギ」、2022年「禁婚令、朝鮮婚姻禁止令」など多くの時代劇に出演している。

プライベートでは、父はミネラルウォーター協会会長という裕福な環境で育ち、2004年5月に元国家代表バスケット選手のパク・ジョンウンと結婚している。

イサンそんなハン・サンジンは演じたホン・グギョンという役をどうみているのだろう。
インタビューなどで、「ホン・グギョンはいろんな面を持った複雑な人物です。主君であるイ・サンに対してすべてを捧げるという純粋な忠誠心もあれば、自分の野心のために冷酷にもなる。その両面を持ち合わせていたからこそ、サンはホン・グギョンを参謀として重用したのだと思います。2人は固い絆で結ばれていましたが、サンは自分に忠誠を尽くすホン・グギョンが野心を持って権力の座を上り詰めていく姿をうれしく思う一方、警戒心を抱いたと思います」と語っている。

さあ、ドラマも終盤!イ・ビョンフン監督は、実在の洪国栄をどう描くのか?

【「イ・サン」を2倍楽しむ】では、ドラマの全話のあらすじと見どころ、時代背景や登場人物の紹介や豆知識などを紹介しているので視聴にあわせて参考にどうぞ。

※参考:『朝鮮王朝実録』【改訂版】(キネマ旬報社)、『チャングム、イ・サンの監督が語る 韓流時代劇の魅力』(集英社新書)、『イ・サン 第1巻~第3巻―韓国ドラマ・ガイド』(NHK出版)

YouTube「MBCClassicチャンネル」イ・サン 第1話

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