【大河コラム】「西郷どん」薩摩藩第11代藩主・島津斉彬の一大プロジェクト集成館事業って?

2018年02月11日21時30分ドラマ
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NHK大河「西郷どん」第4話で描かれた、異母弟の久光を擁立する一派との抗争「お由羅の騒動」で、藩主の座から遠のいた斉彬だったが、老中・阿部正弘の尽力もあってついに藩主となった!今回は、後に幕末屈指の開明君主と謳われる斉彬が藩主となって早々に始めた一大プロジェクトについて紹介しよう。

※「お由羅騒動」についてはコチラで紹介。また各話の予告とネタバレあらすじは【「西郷どん」を2倍楽しむ】でまとめて紹介している。

尚古集成館内(反射炉模型)尚古集成館内(反射炉模型) 出典:尚古集成館HPより■集成館事業
1851(嘉永4)年、43歳にしてついに薩摩藩第11代藩主となった斉彬は、富国強兵・殖産興業が必要と考え、鉄製の大砲製造を鋳造するための反射炉をはじめ、溶鉱炉、造船工場など日本最初の洋式産業工場を次々と建設した。
当時、幕府・諸藩は軍備増強ばかりに目を向けていたが、斉彬は西欧諸国と対等な関係を築くため産業の育成・社会基盤の整備にも重点を置き、ガラス製造、紡績、農機具製造、薬品、写真、電信など多岐にわたる事業も展開した。こうした一連の工場群を「集成館事業」と名付けた。(現在この集成館は、島津家の別邸・仙巌園にある)

造船工場では、洋式帆船「伊呂波丸(いろはまる)」や日本で2番目の大型洋式軍艦「昌平丸」も建造した。当時幕府は諸大名の水軍力を抑止するために、大型船の製造を「大船建造禁止令」で禁止していたが、斉彬は、当時薩摩の庇護下にあった琉球王国の防衛を名目に、この禁を解くことに成功した。
ちなみに、薩摩藩が軍艦の建造を開始したのはペリー来航の1ヶ月前のこと。後に薩摩が幕末の動乱で絶大な軍事力を発揮することができたのは、斉彬のこうした先見の明のお陰といえるだろう。

■ジョン万次郎との出会い
斉彬に実際の西洋事情や進んだ技術などをレクチャーしたのが、ドラマ第6話では、吉之助(鈴木亮平)が助けた謎の男(劇団ひとり)として描かれた。

この謎の男こそが土佐藩の漂流民でアメリカから帰国した中浜万次郎、日本人が世界に目を向けるきっかけを作ったジョン万次郎だ。実在した斉彬も彼を保護し、藩士に造船法などを学ばせ、「伊呂波丸」を完成させた。

紅色切子三段重 出典:尚古集成館HPより紅色切子三段重 出典:尚古集成館HPより■薩摩切子
斉彬が新たに起こした産業に薩摩の伝統工芸「薩摩切子」がある。薩摩のガラス製造は、先代・斉興が江戸ガラス職人を招くなどして行われていたが、斉彬はガラスに様々な色をつける技術に成功し、美しいガラス細工で薩摩ガラス、薩摩ビードロとも呼ばれる「薩摩切子」を誕生させた。

江戸切子 出典:wikipediaちなみに、江戸切子は透明・無色もしくは色のついた薄い被せガラスに細工を施したもの。
薩摩切子は厚い被せガラスに繊細な模様を彫ったり、被せガラスの厚みを活かして切子の面にグラデーションを作って「ぼかし」という技法で用いたりしている。
江戸切子が庶民が古くから作って、日用品として使われていたのに対して、薩摩切子は藩が製造した高価な美術品として、大名への贈り物や斉彬の養女・篤姫の嫁入りの品にもなった。

さあ、第7話以降、農民たちの暮らしにも希望が見えてくるようだ。第6話で吉之介が斉彬に正助(瑛太)父子の謹慎と赦免を願い出たが、果たしてどうなるのか?

見逃した回のある方は、【「西郷どん」を2倍楽しむ】の前回ネタバレで復習しよう!

「西郷どん」(せごどん)は、NHK(日)【総合】よる8時より、【BSプレミアム】よる6時より放送。再放送は毎週土曜日午後1時05分よりNHK総合にて。

原作:林真理子。出演:鈴木亮平/黒木華/瑛太/北川景子/桜庭ななみ/渡部豪太/塚地武雅/大村崑/水野久美/錦戸亮/松坂慶子/風間杜夫/渡辺謙ほか。

番組公式Twitterアカウントは「@nhk_segodon」。番組公式Instagramアカウントは「nhk_segodon」。予告動画は番組公式サイトで視聴できる。

NHK 大河ドラマ「西郷どん」番組公式サイト
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