「100日の郎君様」でも貼り紙は漢文!ハングルがあっても韓国時代劇で漢字が幅を利かせているのは?
EXOのD.O.(ディーオー)ことド・ギョンスとナム・ジヒョン主演の韓国時代劇「100日の郎君様」第5話では、D.O.扮するウォンドクがスラスラとハングルで書かれた本を書き写していたが、お上のお触れ書き(公示文)などは漢文!今回は、朝鮮時代のハングルと漢文について考えてみた。ドラマの予告動画は番組公式サイトで公開中だ。
(※この記事は【「王女の男」を2倍楽しむ】で紹介した「「王女の男」でスンユが認めた恋文の文字は?韓国史劇でハングルがあまり出てこない理由。」をリライトしたものです)
韓国語を書き記すハングルが創られたのは朝鮮王朝4代の世宗大王の時代(参照:朝鮮王朝系図)。「根の深い木」は、世宗が反対勢力の妨害を受けながらもハングル創成するまでを描いている。
筆者は「100日の郎君様」が11代王・中宗と16代王・仁祖の時代をミックスした朝鮮王朝中期辺りが舞台背景と推察している(参照:やっぱり気になる!「100日の郎君様」時代背景とD.O.(ディオ/EXO)世子のモデルは?)。とすると、すでにハングルは完成しているが、朝鮮初期を舞台にした「王女の男」や中期の「宮廷女官チャングムの誓い」、後期の「イ・サン」でも当時の手紙はほとんどが漢文。両班の恋文も漢字の羅列…漢文だ。では、なぜ、韓国時代劇では漢字ばかりがクローズアップされるのか?
1443年に第4代王・世宗によってハングルが創成されるまで、朝鮮では文字を書き記すのは漢字しかなかった。当時漢字の読み書きができたのは、一部の知識人や特権階級の両班たちだけ。「100日の郎君様」でも第6話では“お触書(公示文)”の前に集まる民が、「オイ、これなんて書いているんだ!」と騒ぐ。名君の世宗は、お上からの通達文が民に正しく伝わらないことを憂いて「誰にでも読める文字を創ろう!」と呼びかけ、集賢殿という研究機関を設け、そこに優秀な人材を集めた。そして世宗と彼らが知恵を出し合い、1446年ついにハングルを完成させる。“ハングル”というのは“偉大な文字”という意味。当時は民を教え諭すという意味から“訓民正音(フンミンジョンウム)”と呼ばれた。
しかし、1504年、第10代王・燕山君の暴政を誹謗するハングルの貼り紙が各地で発見されたため、燕山君はハングルの教育や学習を禁止し、ハングルの書籍を焼却、ハングルを使用する者を弾圧した。このエピソードは「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」でも描かれている。
第11代王・中宗の治世では、ハングルの使用は禁止されることはなかったものの、ハングルが“訓民正音”つまり、民のための文字という認識があり、知識人や両班たちの特権意識がハングルを卑しい文字“諺文(オンモン)”と呼んで冷遇したのは変わらず。そうしてハングルは女性や僧、庶民が使う文字となった。実際に、ハングルが公示文や公文書に使われることになったのは、1894年の朝鮮王朝最後の国王26代・高宗の時代。なんとハングル創製から450年も後になってからだった。
ちなみに16世紀にはホ・ギュンによってハングルで始めて小説『洪吉童(ホンギルドン)』が書かれ、18世紀には『春香伝』といった作品が世に出た。『洪吉童』を大胆に新解釈で描いた作品に「逆賊-民の英雄ホン・ギルドン-」や「快刀ホン・ギルドン」などがある。
さあ、「100日の郎君様」では今後も公示文や書物、手紙などがまだまだ登場する。さあ、そこに書かれているのはハングルか、漢文か?目を凝らしてチェックしよう。
【「100日の郎君様」を2倍楽しむ】では、各話のあらすじと見どころと共に、時代背景やキャストの魅力、豆知識などを紹介している。
◇NHK「100日の郎君様」番組サイト
2019.07.21スタート 毎・日21:00~22:00
◇Youtube「100日郎君様」予告動画
【作品詳細】【「100日の郎君様」を2倍楽しむ】