ムニョンの童話で読み解く！「サイコだけど大丈夫」は過激だけど心の治癒ドラマ

俳優キム・スヒョンの兵役終了後の復帰作としても注目を集めた「サイコだけど大丈夫」が日本でも多くの視聴者を虜にしている！過激な演出やセリフも多くあり、本国では一部問題視もされているが、本作は親のエゴのために傷ついた子供たちの心を癒すヒーリングドラマ･･･今回はドラマの中に登場する5冊の童話から読み解いていこう！Youtubeにて予告動画が視聴できる。



「サイコだけど大丈夫」は、自閉症スペクトラム障害（ASD）の兄ムン・サンテ（オ・ジョンセ）を献身的に支えながら、精神病棟で勤務するムン・ガンテ（キム・スヒョン）と、感情を持たない人気童話作家のコ・ムニョン（ソ・イェジ）が出会い、3人それぞれが抱える心の傷を互いに癒していくハートフルなロマンチックコメディ。
※各話の詳しいあらすじや見どころ、豆知識は【「サイコダだけど大丈夫」を2倍楽しむ】でまとめて紹介している。

ドラマの中で、3人の過去や抱える心の痛みなどをわかりやすくアシストをしてくれるのがムニョンの作品として紹介される5冊の絵本。オリジナル作品で全てが寓話。どれも深いメッセージが込められており、絵のタッチも独特。これらの本は実際に出版されており日本でも購入できる。（Amazonでチェック）

最初に登場する絵本は「悪夢を食べて育った少年」。小児科の子供たちのための朗読会で作家ムニョンが絵本を読む。（この本が登場するのは⇒第1話）

‘サイコだけど大丈夫’特別童話シリーズ1
「悪夢を食べて育った少年」書影（Amazon でチェック）悪夢に苦しむ少年が魔女に「悪い記憶を消してください。そうすれば何でも差し上げます」と頼みました。少年は大人になり悪夢は見なくなりましたが、なぜか少しも幸せになれませんでした。赤い満月の夜、魔女が報酬を受け取るために少年の前に現れた時、少年は恨みながら叫びました。「悪い記憶は消えたのに、なぜ、僕は幸せになれないの？」すると魔女は･･･

残念ながら病院で事件が起きたために朗読会は中断。この本では、どんなに辛い記憶だとしても今の自分をつくりあげた一要素で、自分自身で乗り越えなければならない、そんな教訓を描いている。ドラマの中で悪夢にうなされるのは、ガンテ、ムニョン、そしてサンテ。3人はいったいどんな悪夢にうなされるのか？

次は「ゾンビの子」。これは5冊の中でも特に絵もストーリーも強烈で、ドラマ内でも会議中にグロテスクだと指摘されてしまうほどの内容。この絵本の読み手はガンテ。（この本が登場するのは⇒第4話）

‘サイコだけど大丈夫’特別童話シリーズ 2 「ゾンビの子」書影
（Amazon でチェック）ある小さな村に男の子が生まれました。肌は青白く目はとても大きい。男の子が成長するにつれ母親は気づきました。男の子は感情がなく食欲だけがあるゾンビだと。母親は人目を避けるため男の子を地下に閉じ込め、よその家から家畜を盗んでは男の子に食べさせました。ある時は鶏を、ある時は豚を。数年たったある日、疫病がはやり家畜は全滅しました。大勢の人が死に生き残った人々は皆村を後にしました。子供のために残った母親は空腹で泣く子供に、自らの脚を切って与えたり、腕を切って与えました。そうして胴体だけが残った時、母親は子供の元へ向かい、残った体を子供に委ねました。胴体だけになった母親を子供が両手で抱きしめ初めて言葉を発しました。「お母さんて、すごく温かいね」。

ガンテが泣きながら絵本を読むシーンは、涙なしでは見られない。母親の無償の愛とも読める本だが、「子供が望んだのは食べ物だったのか、母親のぬくもりだったのか…」間違った母の偏愛の犠牲になった子供たちの悲痛な叫びが聞こえてきそうだ。

続いて登場するのは「春の日の犬」。サンテがバスの中でガンテに読み聞かせる。（この本が登場するのは⇒第7話）

‘サイコだけど大丈夫’特別童話シリーズ 3 「春の日の犬」書影
（Amazon でチェック）気持ちを隠してばかりの子犬がいました。木の下につながれていて性格はとても明るく、春の日の犬と呼ばれていました。ところが昼間は楽しそうに遊んでいても、夜になるとクーンクーンと人知れず泣きます。本当は春の日の犬はヒモを切って野原を走り回りたいと思っていたのでした。でもそれができないので悲しそうに泣いていたのです。ある日、心が春の日の犬にささやくように尋ねました。「どうして君はヒモを切って逃げないの？」と、すると犬は「あまりにも長くつながれてたから、切り方を忘れちゃった…」。

いつも自分の心の内を隠して必死に取り繕っているガンテを、サンテが春の犬に例えている。これまでガンテばかりがサンテの面倒を見ていると思っていたが、サンテも彼なりに弟を心配していたことがわかり、兄弟愛を感じる温かいシーンだ。

そして「手とアンコウ」。ムニョンの唯一の失敗作と言われている絵本で、ある女性が読む。（この本が登場するのは⇒第14話）

‘サイコだけど大丈夫’特別童話シリーズ ４
「手、アンコウ」書影
（Amazon でチェック）むかしむかしある裕福な家にかわいい子が生まれました。モクレンのように色白のかわいい子を母親は愛し、この子のためなら太陽や星も手に入れると誓いました。子供が初めてご飯を食べた時、母親はとても喜び「母さんがずっと食べさせてあげる。口を大きくして“あーーん”して」、初めて歩いたときには母親は走り寄って「母さんが負ぶってあげるわね。早く背中に乗って」。何もかも世話をやき、大事に子供を育てた母親は言いました。「愛する我が子よ。母さんは少し休みたい。これからはあなたが私に食べさせて」。すると子供が「おかあさん、私は手がないの。一度も使わなかったから消えてしまったの」と。「それなら我が子よ。母さんを負んぶして。足が痛いのよ」。すると子供が「おかあさん、脚もないの。ずっと負ぶわれてから地面を踏んだことがないの。その代わり、大きな口を持ってる」。そう言って大きな口を開きました。怒った母親は「あなたは完璧な子じゃなく、役に立たないアンコウだったのね。食べること以外は何もできない失敗作よ」。母親は遠くの海へアンコウを投げました。それから荒々しい海風が吹きつける日には、船乗りたちの耳に子供の泣き声が聞こえたとか。「お母さん、お母さん、私が悪いことした？私を迎えに来て。お願い･･･」

親のエゴで育て上げた子供を失敗作と言い捨ててしまい、自分の何がダメだったのか、深く傷つく子供。子供に罪はないはずなのに…今のムニョンの心境を考えながら読むと心が張り裂けそうになるほど苦しく辛い内容だ。

最後に登場する絵本は「本当の顔を探して」。この絵本はムニョン、ガンテ、サンテの3人が読んだ。（この本が登場するのは⇒第16話）

‘サイコだけど大丈夫’特別童話シリーズ ５
「本当の顔を探して」書影（Amazon でチェック）むかしむかし深い森の奥の城で、影の魔女に本当の顔を奪われた3人が一緒に過ごしていました。箱おじさんが言いました。「3人仲よくくらすために奪われた顔を取り戻そう」。キャンピングカーに乗って旅に出た3人は雪原に座り込んで泣き続ける母狐に出会いました。仮面少年が母ギツネに尋ねました。「なぜ泣いてるんですか？」、「雪原で餌を探していたときに、負ぶっていた子供がいなくなってしまったの」。涙が枯れてしまうほど泣いた母ギツネを見て仮面少年の目からアツい涙があふれました。すると雪がとけ始め、中からカチカチに凍った子ギツネが現れました。再び旅に出た3人は、いばらの園で裸で踊るピエロに出会いました。空き缶姫が尋ねました。トゲが刺さているのになぜ踊り続けるの？」、「みんなに見てもらいたかったんだ。だけど痛いだけで誰も見てくれない」。すると空き缶姫はいばらの園に入りピエロと一緒に踊り始めました。「私は空き缶だからとげが刺さらないの空き缶姫が飛び跳ねならが踊ると、空っぽの体からカラカラカラカラと音が鳴ったのでした。その音を聞いた人々が集まり、2人のダンスを見て拍手を送りました。

ムニョンとサンテの喧嘩で中断となる前半は、OK精神病院の患者たちの心に寄り添った内容。続いて後半･･･。

「サイコだけど大丈夫」 シナリオ集（全2巻セット）書影
Amazonでチェック奪われた顔を取り戻そうと、再び旅に出た3人の前に邪悪な影の魔女が現れました。母ギツネの代わりに泣いた仮面少年と、ピエロと踊った空き缶姫をさらっていきました。「これでお前たちは幸せな顔を見つけられない」魔女は呪いをかけモグラの穴に閉じ込めました。数日後、箱おじさんが穴を見つけましたが、入り口が小さく中へ入れませんでした。「どうしよう。モグラの穴に入るには箱を取らなきゃいけない」。その時、穴の中から仮面少年の声が聞こえました。「おじさん、気にせず遠くへ逃げて。魔女が戻って来る」。箱おじさんは勇気を振り絞り、被っていた箱を投げ捨てて穴へ入り、仮面少年と空き缶姫を助けました。明るい場所に出た2人は箱を取ったおじさんの汚れた顔を見て、声を出して笑いました。「ケラケラ、ケラケラ」笑っていた仮面少年の仮面がポトッと落ちました。空き缶姫の空き缶もカンっと鳴って落ちました。本当の顔が現れた2人を見ておじさんが言いました。「ああ、幸せだ」。結局、影の魔女が奪ったものは、3人の本当の顔ではなく、幸せを探そうとする勇気だったのです。

後半はガンテ、ムニョン、サンテの成長記録ともいえる内容。3人がそれぞれ抱える心の傷をどのように乗り越えていくのか、感動の物語「サイコだけど大丈夫」はNetflixで独占配信中だ。

◇Youtube予告動画
◇Netflix

【作品詳細】【「サイコだけど大丈夫」を2倍楽しむ】