忘れていた童心を思い出させてくれる「アンナラスマナラ-魔法の旋律-」最終考察と全話ネタバレあらすじ

2022年05月14日20時00分ドラマ
Netflixシリーズ『アンナラスマナラ-魔法の旋律-』
独占配信中

チ・チャンウク主演のミュージカル・ファンタジー「アンナラスマナラ-魔法の旋律-」(全6話)が5月6日(金)よりNetflixで独占配信中だ。早くも2回目を観ている視聴者も見受けられる話題作だが一体どのストーリーで何を伝えたかったのか、考察してみた。
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「アンナラスマナラ-魔法の旋律-」は同名のウェブ漫画を実写化した作品で辛い毎日を暮らす女子高生アイ(チェ・ソンウン)と廃墟となった遊園地に暮らす魔術師リウル(チ・チャンウク)が出会い、繰り広げられるNetflixオリジナル韓国ドラマとしては初のミュージカル・ファンタジー作品だ。
【「アンナラスマナラ-」を2倍楽しむ】では、あらすじや原作紹介、韓国での評判、キャラクター写真などまとめて紹介している。



■あらすじ
高校3年になり新学期を迎えた春、バスに乗り遅れて遅刻したアイ(チェ・ソンウン)。彼女は幼い頃に母親と別れ、事業に失敗して連絡が取れない父の代わりの小学生の妹ユイを養いながら貧乏な生活を必死に耐え抜いてきた。ある日、運良く見つけたコンビニのアルバイトの帰り道に稼いだ5万ウォン札が風に飛ばされ、辿り着いたのは森の中にある廃業した遊園地。人を切断したり、人を本当に消してしまう怪しいイケメン魔術師が出没すると噂の場所だった。突如現れたリウル(チ・チャンウク)に驚いて逃げ帰ったアイのポケットには蝶の装飾が施された招待状が入っていた。

一方、アイと同じく遅刻して教室に入ってきたイルドゥン(ファン・イニョプ)は学年1位の秀才で、検事の父親のもと何不自由無い生活を送っていたが、階段でぶつかって、偶然同じクラスになったアイの事が気になる。

クラスメイトのハナ(チ・ヘウォン)は穴が開いたソックスで学校に通うアイを見て、わざとお金を落としてアイがくすねるかどうかを見て楽しんでいた。葛藤の末、お金を拾ってポケットに隠したアイはまんまとハナの意地悪な作戦にはまりプライドを傷つけられてしまう。

家賃も滞納し、家を追い出される危機に陥ったアイは夜中に遊園地を訪れて、5万ウォンを取り返すがリウルが使う幻想的なマジックを目撃する。

ある日、コンビニの店長が給料を先払いしてくれると聞いて大人に対する信頼感を強めるがその直後に体を触られ、関係を強要されて大きな失望感を感じてしまう。そんな時に助けにきたのはリウルだった。彼のマジックで忽然と姿を消した店長は翌日も出勤する事はなかった。遊園地を眺めていたアイはリウルに店長の居場所を聞くが、リウルも分からないという。

連絡のつかない無責任な父の代わりに姉妹二人で貧しい生活をしてきたアイは大人になってもマジックをして子供じみた生活をするリウルを否定し立ち去ろうとするが、リウルは魔法の呪文を唱える。「アンナラスマナラ」。すると遊園地に光が灯り始め、観覧車に乗ったアイは信じられないほどの幻想的なマジックショーを目撃する。

光景が本当だったのか、学校でも上の空のアイを気にするイルドゥン。その頃、クラスメイトのハユン(オ・ソヒョン)の失踪事件が発生する。コンビニ店長の行方も気になるアイは一人で遊園地を訪ね、中で口の悪いオウムのミニョを見つけるがリウルには会わずに帰宅。リウルが後をつけて訪ねてきた事に怒りを覚えるが、そこに借金取りが現れ絶体絶命のピンチに。またしてもリウルのマジックで救われたアイだが二度と目の前に現れないでほしい頼む。

受験を目前に、貧乏で問題集を買えないアイが、自分が捨てた問題集を使って勉強している事を知ったイルドゥンは一緒に図書館で勉強する事を条件に問題集を見せると提案し、内心ドキドキを隠せず帰り道に告白をする。内心では喜びながらも正直に告白を受け入れる事ができないアイ。

ハユンの失踪と遊園地の魔術師が関係していると疑ったハナは仲間のソヒ(キム・ボユン)を連れて遊園地に忍び込み、リウルと遭遇し、事件との関係やアイとの関係を詮索。期待していた答えが得られなかったハナから「アイとリウルが援助交際しているのかも」と聞かされたイルドゥンは気が気ではなく、お金で気を引く為にテストでわざと自分に負けてくれればお金を払うと提案するがアイのプライドは更に傷ついてしまう。

遊園地を訪れたアイはマジックなんて信じないとは言いながらも動き出したメリーゴーラウンドに乗るが、気づけばメリーゴーラウンドは台座を離れて大空を駆けていた。一瞬だけでも気が晴れたというアイに頭の中にある難しい数字を全部忘れてマジックを習ってみないかと提案する。

課題を代わりに終わらせてもらう代わりにお金を払って相互扶助だと思っていたイルドゥンだが、ある日、アイをつけて遊園地を訪れたイルドゥンはマジックを習いながら屈託なく笑うアイの姿を見て、彼女が必要としていたのはお金ではなかったと気づく。その夜、一人でリウルを訪ねたイルドゥンだが、リウルは彼が置かれた勉強漬けの毎日に疑問を呈する。真に受けないイルドゥンも蝶の装飾の招待状を見つける。

ある時、マジックを教わったアイは遊園地のポストは時間を超えて手紙を届けてくれると聞かされ、半信半疑ながら生き別れた母へメッセージを送り、その帰り道にリウルに会いにきた謎の妊婦とすれ違う。

リウルには会わないほうがいいと忠告しても聞く耳を持たないアイを心配したイルドゥンは再びアイを尾行し、遂には一緒にマジックのレッスンを見守り始めるが徐々にマジックの魅力に心奪われ、親が敷いてくれた道を親の希望通りに生きていく事に疑問を抱き始め、お金のやり取り以来ギクシャクしていたアイとの関係も修復される。そんな折にアイがイルドゥンからお金を受け取っている写真が学校に出回り、イルドゥンの母(キム・ヘウン)も息子の部屋からマジックに使うグッズを発見して言葉を失ってしまう。

恐喝の疑いをかけられ意気消沈するアイは帰宅して久々に姿を見せた父(チョ・ハンチョル)に喜ぶが、父は翌朝、生活費やイルドゥンに返そうと思っていた金を持って姿を消していた。担任にイルドゥンとの取引を正直に告白したアイだが、イルドゥンが貧しいアイを助けていたという美談でまとめられ全校集会でイルドゥンが表彰された事からアイは惨めな気持ちになり大人への不信感を募らせ、イルドゥンとの関係にも亀裂が入ってしまう。

リウルとの出会い以来、自分が進むべき道に疑問を持ち始めたイルドゥンは自分を検事にする為に教育に熱心でアイとの関係も断ち切れるよう学校に圧力をかけた母に反抗を始める。

リウルのマジックで10年前の自分と向き合ったアイは辛い生活にもめげずに立ち向かっていく強さを取り戻すが、遊園地に忍び込んだハナが仕掛けていた盗撮映像を見て言葉を失ってしまう。映像ではナイフを持ったリウルが何者かと揉み合っていた。イルドゥンの説得を聞かずに遊園地に向かったアイだが、子どもたちにマジックを披露するリウルを見て安心する。

リウルが犯罪者である証拠を掴もうと再び遊園地に忍び込んだハナはリウルを挑発し、勢いで鳥かごが倒れ、中にいたミニョが大怪我をしてしまう。冷静さを失ったリウルがハナの首を締めるがハナは命からがらその場を逃げ出す。

翌日行われた全国学力テストで頭痛に襲われ試験を途中で放棄したイルドゥンは両親から責められ、自分の生きたい人生を生きる事がそんなに悪い事かと反発するが両親の束縛を強めるだけだった。失望して遊園地を訪れたイルドゥンは再び頭痛に襲われ、一面の花畑にいる夢を見るが目を覚ますと床には一面、夢と同じ菜の花の絵が描かれていた。

その頃、街ではリウルのような魔術師の服装の男が老人からかばんをひったくる事件が発生し、警察の捜査はアイにも及んだ。参考人として現れたのはリウルに消されたはずの店長ドゥシクだった。失踪していたハユンと見られる遺体が貯水池で発見され、リウルへの疑いが強まり、アイもリウルを信じていいのかどうか心が揺れ始める。

消えたリウルを探していたアイは遊園地にあったリウルのノートから秘密の階段を見つけ、降りていくとそこには瀕死の重症を負ったミニョの看病をするリウルの姿が…。唯一家族として心を許せるミニョの姿に少年のように涙するリウルを見てアイは昔も自分はペットが死んだら声をあげて泣ける子供だったと思い出す。

時を同じくして遊園地にやってきた警察。アイはリウルに手錠をかけようとする刑事を止めるが、「君は僕を信じているか?」という言葉を残し、アイにミニョの看病を託して警察に同行する。アイはリウルを信じているのか答える事ができなかった自分に思い悩む。一部始終を聞いたイルドゥンはアイを励まし、リウルの会っていた謎の妊婦ジスに相談しに行く。

ジスはリウル、本名リュ・ミニョクの高校時代の同級生でリウルに片想いをしていた。彼女の口からリウルがかつては将来有望な優等生で親の期待を一身に受けていたが高3になってから突然人が変わって、親からの重圧に耐えられず屋上から飛び降り、精神病棟から失踪したと知らされる。ジスはリウルの心のSOSを誰も聞いてあげなかっただけで、マジックを信じる子供のままでいたかったのだろうと続ける。魔術師というのは彼らしいが悪さをするような人じゃないと聞いて安心したアイのもとに警察からリウルが姿を消したと連絡が入る。

知らせを聞いて学校に戻ったイルドゥンはリウルやアイに関して根も葉もないうわさ話をして盛り上がる同級生の会話を耳にしてつい殴りかかってしまう。一方のアイは遊園地で警察に包囲されながらも最後のショーを見せようとしているリウルを見つける。警察が銃を構える中、駆け寄ったアイはリウルの事を信じていると伝える。満足そうなリウルは季節外れの雪を降らせ周りを驚かせ、トレードマークの帽子をプレゼントして何は一つ願いが叶うはずだと告げた。

リウルを連行しようとする警察を止めたアイがリウルに黒い布をかぶせるとリウルは忽然と姿を消してしまった。

リウルが姿を消してからしばらくして警察はハユン殺害や、リウルに罪を着せようとひったくりをした犯人がコンビニの店長ドゥシク(ユン・ギョンホ)だと知り逮捕する。手がかりは不思議な事に事件当日に数分だけ稼働した防犯カメラ、ちょうどリウルがアイにマジックを見せていた時間だった。一方のイルドゥンは担任教師が止める中、退学を願い出て自分の道を自分の足で歩こうと決心し学校を去る。

数年後の冬。大学生になったアイはマジックレストランで魔術師としてマジックを披露しながらも時間がある時はミニョや母、リウルに手紙を書いては遊園地のポストに投函していた。「誰もが信じる魔術師にはなれなくても一人の為の魔術師にはなれる、奇跡を与えられる大人になれるよう努力し続けるから、頑張ってるって褒めて」と心の中でリウルに語りかけるアイの表情は希望に満ちていた。

アンナラスマナラ■考察:忘れていた童心を取り戻させてくれる作品
ポスターや予告編では遊園地や夢のようなマジックショーが幻想的に描かれているのとは対称的に、登場人物それぞれが置かれている環境は非常に現実的だ。金銭的・世間的・社会的に追い詰められていて、登場する親や教師、警察ら大人もお世辞にも印象がいいとは言えない。本作では一貫して「大人の心と子供の心」が重要なキーワードとなった。ここで言う大人とは「世間」と読み解いても間違いはないだろう。主要キャスト3人についても親の代わりに妹と生き抜く為に育むべき子供の心に蓋をして大人になるしかなかった女子高校生アイ、親や教師の期待に疑う事なく応え、本来持っているべき子供の心が何かに気付いたものの周りに理解してもらえないイルドゥン、同様に大人にさせられそうなところで心が傷ついて子供のままでいる事を選んだリウルなど、世間一般で言う「普通」が果たして本当に正しい事なのか疑問を提示するキャラクターが集まっている。

「決められた枠の中でしか夢を抱けない世の中、人から認めてもらうには資格が必要な世の中、自分らしくありたいのになぜ人と違う事をしないように頑張っているのだろうか」「最初から世界にイカれた人は居ない、普通からはみ出しただけだ」というセリフや作中で幾度となく挿入される歌からも感じ取れるように、学校や親、警察、同級生から認めてもらえず苦悩する不条理な世の中に疑問を呈するメッセージ性が込められており、作者の意図を感じ取る事が出来る。逆説的に言えば、ただ何となく生きていると感じてしまう現代人や、何か人と違う事をしたいけれど一歩を踏み出せない人へのエールにもなる作品だ。

それぞれの登場人物が抱えている問題や背景を理解した上で、更に「自分が子供の頃になりたかったもの」「いつかは叶えたいと思っていた目標」など人生のどこかで置いてきてしまった夢を思い出しながら再度観てみるとまた別の味が出てきそうな作品ではないだろうか。

「あなたは魔術を信じますか?」作品中で何度も出てくるキーワードだ。世知辛い世の中に生きる我々に疑問を投げかけ、童心に戻してくれる「アンナラスマナラ-魔法の旋律-」は5月6日(金)からNetflixで独占配信中だ。

■スタッフ
演出:キム・ソンユン
脚本:キム・ミンジョン
原題:안나라수마나라

■キャスト
リウル役:チ・チャンウク(子役/ナム・ダルム)
ユン・アイ役:チェ・ソンウン
ナ・イルドゥン役:ファン・イニョプ
ペク・ハナ役:チ・ヘウォン
キム・ソヒ役:キム・ボユン
ソ・ハユン役:オ・ソヒョン
担任教師役:イム・ギホン
アイの父役:チョ・ハンチョル
ナ・ジンマン役:ユ・ジェミョン
イルドゥンの母役:キム・ヘウン
ほか

■放送予定
放送開始:2022年5月6日〜
エピソード数:全6話

予告動画(Youtube)
Netflix公式ページ

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