ソン・ジュンギが初の北朝鮮の方言に挑戦した『ロ・ギワン』は、暗く爽やかな癒しの映画(見どころ・感想・ネタバレなし)
ソン・ジュンギ主演で、脱北者が生き抜くために奮闘する姿を描いたNetflixオリジナル映画『ロ・ギワン』が3月1日から独占配信を開始するや否や、「今日の映画TOP10(日本)」で連日トップテン入りを果たしている。本作の見どころと視聴後の感想とあらすじを紹介する。
Netflix映画『スペース・スウィーパーズ』で宇宙ゴミ清掃船のパイロットを演じ、マフィアの顧問弁護士を務めた「ヴィンチェンツォ」、財閥一族の秘書と財閥の末息子を二役で演じた「財閥家の末息子」とこれまで様々な演技変身を見せてくれたソン・ジュンギ。そんな彼が『ロ・ギワン』で脱北者として初の北朝鮮の方言と、これまで演じたどの役柄よりも過酷なで優しく愛を演じている。
『ロ・ギワン』は、ベルギーを舞台に、悲しい別れを経て中国からベルギーに飛んだ脱北者と、母の死に関する真実を知って自暴自棄になった女性の目線をもとに、現地での過酷で世知辛い世の中を描いた注目作品。
Netflix映画『ロ・ギワン』独占配信中 実はソン・ジュンギは、本作を「6~7年前に一度出演を断った」とインタビューで告白している。「当時は共感できない部分があった」とその理由を語り、「それから数年間、『どうして制作に入らないんだろう』と考え、断ったことを後悔したと打ち明けた。
ソン・ジュンギ演じる主人公ギワンは、自らのせいで母を死に追いやってしまい、その対価として手に入れた金で半ば不本意にベルギーに足を踏み入れた青年だ。序盤では言葉も文化も違い、誰も頼れる人がいない環境で困惑しながらも適応していく様子が描かれ、そんな中でもう一人の主人公マリと出会うことになる。
マリは難病の母親とその安楽死を巡って父と確執があり、闇組織との関わりや薬物・窃盗といった反社会的な行動が目立つものの、中身は純粋で、財布を盗んだことがきっかけで知り合ったギワンを見て本来の自分を取り戻していく過程が本作の一つの軸になっている。マリを演じたのは「アンナラスマナラ -魔法の旋律-」でヒロインを演じたチェ・ソンウン。本作では全編フランス語に挑戦し、生きる理由を失った破壊的な演技に挑戦している。
「御史とジョイ~朝鮮捜査ショー~」や「未成年裁判」などで演技のうまさ、自然さに定評があるイ・サンヒも重要な役で存在感を示している。彼女が演じる朝鮮系中国人のソンジュも脳に病を抱える子どものために働く不法滞在者として描かれ、作中では独特のなまりで主人公ギワンの初めての理解者となり、中盤ではギワンを裏切る場面も見られるが、人間的な温かみや、事情を抱えた社会的弱者の現状を演じ、作中の登場人物でもひときわ深い存在感を残した。
作中ではたびたび主人公ギワンが浮浪者として、そしてアジア人として不当な差別を受ける場面が登場し、社会的に弱い立場として理不尽な状況に追い込まれる中、マリと恋人になり幸せを掴んでいく。終盤ではそんな二人を引き裂く事件が起きてしまうなど全編を通してどこかダークでシリアスな色彩で描かれるものの、最終的には二人の関係や親子の仲も視聴者に納得がいく爽やかな結末となっているので、安心して観てほしい。
本作のあらすじは次の通りだ。
※作品最後のネタバレはしていないが、そこに行きつくまで詳しく紹介しているので、気になる方は視聴後の確認用として欲しい。
2019年に母とともに中国に亡命したギワン(ソン・ジュンギ)は念願叶ってベルギーの首都ブリュッセルに降り立つ。その足で難民申請に向かうも、審査が下りるまでの長い間、路上生活を余儀なくされる。慣れない文化での慣れない暮らしに衰弱しながらも、母のことを思い出すギワン。
かつて理不尽な出来事で上官に逆らい、身を隠して生活していたギワンは、身を削って働く母に傘を届けたせいで中国の公安に見つかり、逃走中に母はトラックに轢かれて命を落としてしまった。警察で働く叔父が母の遺体を病院に売った金でブリュッセルに渡航できたギワンだが、不良に襲われ気を失っているうちに母の形見の財布と全財産をマリ(チェ・サンウン)に盗られてしまう。
すぐに捕まったマリから財布を返してもらう約束をするも彼女がたちの悪いマフィアの男シリルと関わっていて財布がすぐに取り戻せないことを知る。マリの家で身なりを整えたギワンは彼女の父ユンソン(チョ・ハンチョル)のコネを借りて豚肉加工工場での仕事を得て、朝鮮系中国人ソンジュ(イ・サンヒ)のと同じアパートに暮らすことに。
マリは財布を取り返すために言われた通り、地下での射撃賭博に選手として参加するが、病を患っていた母(イ・イルファ)と、彼女を安楽死させた父との軋轢を思い出しながらも優勝し、財布を取り返した。約束を守ったマリを自宅に招き、夕食を振る舞うギワン。彼女もまた厳しい現実を誠実に生きるギワンに心を許し始めていた。
難民申請で新たな問題にぶつかったギワンは更に、現地人からの心ない差別で傷害の罪を着せられてしまい、強制送還という彼にとっては死を意味する現実を見させられてしまう。裁判では信じていたソンジュまでもが嘘の証言をして、ギワンが支援金目当てに難民申請をした朝鮮系中国人だと思われてしまう。
突然訪ねてきたギワンを一度は拒絶したマリも、マフィアからの暴力的な扱いに嫌気が差し、ギワンを追うが彼は既に仕事を変え、路上生活に戻っていた。マリは命運を賭けた試合にわざと負けてシリルとの関係を断ち切り、ソンジュはビザがないことから強制送還が決まった。マリと再会を果たしたギワンは自暴自棄になり、薬物に逃げようとする彼女を身を挺して説得し、二人は恋人として束の間の幸せを手に入れる。
中国に送還されたソンジュが手に入れた新聞記事のおかげで難民申請にも希望が見えてくる一方で、シリルに呼び出されたマリは抗争に巻き込まれ、裁判を飛び出してきたギワンのお陰で逃げ延びるが、ドイツのマフィアから狙われるはめになり、ギワンと離れて海外逃亡を余儀なくされてしまう。
1年後、ベルギーで暮らす最低限の権利を手に入れたギワンはある決意を胸にユンソンに手紙をしたため、人生を変える一歩を踏み出す…。
■キャスト
ロ・ギワン役:ソン・ジュンギ
イ・マリ役:チェ・サンウン
イ・ユンソン役:チョ・ハンチョル
ほか
■作品情報
制作国:韓国
スタッフ:
演出・脚本:キム・ヒジン
原題:로기완
英題:My Name is Loh Kiwan
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