NHK「燕は戻ってこない」第1話 これが卵の話だったらエグすぎる…原作との相相違点、ネタバレと次回予告
4月30日放送のNHKドラマ10「燕は戻ってこない」第1話のネタバレあらすじとみどころ、原作との相違点を紹介しよう。5月5日14時よりNHK総合で第1話が再放送される。NHK番組公式サイトでは、石橋静河、稲垣吾郎、内田有紀のインタビュー動画を公開、NHK+で見逃し配信されている。
桐野夏生の同名小説が原作の「燕は戻ってこない」は、“命は誰のものか”という重要なテーマを扱った、鮮烈なエンターテイメント作品。
第1話では、石橋静河演じるお金も夢もない29歳の派遣社員・リキと、自らの遺伝子を継ぐ子を望む元トップバレエダンサーの親子・基と千味子、そして不妊症に悩む基の妻・悠子 の現況が描かれた。
薄暗いアパートのキッチンで卵を茹でながら「卵の本質」を語る老婆を思い出しながら「卵子」について想いを巡らせるリキ。テルと分け合ったコンビニのシュークリームのカスタード。隣人が食べてしまったタラコがメインの自家製弁当。今度はおまえのタラコを食べさせろと言われる屈辱。「卵子」を自分の分身のように感じながらも、女でいて良かったことなど何もないと生理の出血を忌まわしく思ってしまうリキ。
このドラマのテーマが「卵子提供」というのもあってか、やたらと「卵」の描写が続き、思わずその生々しさから眼をそらしたくなった。殻に閉じ込められたような閉塞感しかないリキのリアルな生活が重く暗い。
一方、「代理出産」を望む基の妻・悠子の生活は、本人が「白い悪夢」と嘆くほどに、何不自由のない眩しいばかりの光と満ち足りた生活にあふれている。けれど、そこに彼女が本当に欲しかったものは今もない。三度の流産で不育症を宣告された悠子は44歳という年齢の壁もあり実子を諦めるしかなかった。「命がお金で買えれば安いもの」とペットを家族して受け入れた悠子だったが、夫が今も“血の繋がった子供”を切望していることが悔しくてならない。
同じく“汚れなき世界”で生きる基は、ただ純粋に、そして利己的に自分の遺伝子を引き継ぐ子供を望んでいる。それは母の千味子も同じだ。自らの才能と努力で欲しいものを手に入れてきた2人にとって、物理的に可能なことなら、何はともあれ「善」なのだろう。貧しさとは無縁の世界に住む草桶家の人々の生活を目の当たりにしたとき、リキはいったいどう思うのか?
薄暗いリキの日常、キラキラと美しい基と悠子の日常。三人がそれと知らず交わることになった薔薇色の紙ごみの艶やかさとエージェントのショッキングピンクの衣装。小説では描かれない色彩による識別にグッと惹きつけられた。
人生に怒りを感じているリキ、人生の空虚さを嘆いている悠子、不完全でいることに耐えられない基。今、三人が望んでいるのは、夢の詰まった「卵」であって、それはまだリアルな「命」ではないのだと思いたい。延々「卵」の話が続くようならエグすぎる。
これから、本当の「命」と向き合ったとき、それぞれがどんな変化をみせるのか、そしてどんな選択をしていくのかが楽しみだ。
■原作との相違点
「第一章 ボイルドエッグ」では、これまでリキが歩んできた人生やリキを取り巻く人々が丁寧に描かれているが、本作では様々なエピソードが第2話以降となりそう。そのかわり、物語中盤でリキが生活の拠点を変えたいと心底思うようになった、隣人から受けた嫌がらせが早くも登場。酒向芳演じた隣人の恐怖を感じる変質的なストーカー行為には、視聴者も震えあがったことだろう。
草桶夫婦の愛犬マチューをペットショップで購入するシーンは、原作にはなかったものだ。100万単位の値がつく血統書つきの犬を選ぶときの2人のやり取りが興味深かった。
■キャスト
大石理紀(リキ)役: 石橋静河
草桶基役:稲垣吾郎
基の妻・悠子役:内田有紀
基の母・千味子役:黒木瞳
リキの隣人・平岡役:酒向芳
リキの同僚・河辺照代(テル)役:伊藤万理華
生殖医療エージェント・青沼薫役: 朴璐美
ほか
■第1話 ネタバレあらすじ
医療事務の仕事で月に手取り14万円。東京に暮らす29歳の正規社員・大石理紀(リキ)は困窮した生活を送っている。リキ同様に困窮している同僚のテルから50万円貰えるという「卵子提供(エッグドナー)」のアルバイトを持ちかけられるが、リキは自分の卵子が見知らぬ男の精子で生を受けるのは気持ちが悪いと思う。しかし、テルは「卵子提供」も「献血」も同じだと、自分の体からでてしまえばもうその先の事は考えなくていいのだという考えだ。
しかし、来年に契約期間満了で雇止めが迫っているリキは、実家に戻るのも、介護の仕事に戻るのも嫌だった。そんなある日、隣人・平岡の自転車を移動させ、蹴とばしたことを見とがめられたことで執拗ないやがらせを受けたリキ。「女で良かったことなど一つもない」そう思わされる日々の中、突然以前ネットで応募した「生殖医療エージェント・プランテ」から面接の知らせが入る。
一方、名の知れた元バレエダンサー・草桶基の妻・悠子は三度の流産の末、不育症を宣告され妊活を諦めていた。子供がなくても幸せになれる。基と悠子は成長しすぎで安値がついた子犬を自分たちの家族に迎え、マチューと名付けて可愛がっている。基の母・千味子は自分の遺伝子を継ぐ孫を切望していた。自分と基亡き後、草桶家の財産が悠子の実家のものになるのが我慢ならないのだ。千味子は基になんとしても子供を作れと命じる。
基はわずかでも可能性があるのならと「プランテ」に登録。悠子は相談もなく代理母出産を決めた基に腹を立てる。基は、これまで母の言いなりになって生きてきた自分が初めて自分の意志で選んだ伴侶だから絶対に別れたくないといい、悠子を安心させようとする。
「プランテ」に面接に行ったリキは、エージェントの青沼から、29歳では卵子ドナーになれる確率が低いことを告げられる。青沼から妊娠経験を尋ねられたリキは、三年前に中絶したことを明かす。すると、なぜか青沼は大喜び、リキにサロゲートマザー(代理母の卵子を使用する)の資格があると告げ、高額の謝礼と引き換えに自分たちの子を産んでくれる「代理母」を探している夫婦がいると話す。
■第2話 あらすじ
基と悠子(内田有紀)の子を産む「代理母」の依頼を受けたリキ。決断できずにいると故郷から叔母の佳子(富田靖子)が危篤との知らせが入る。一方の悠子も悩んでいた。金の力で夫が他の女性との間に子を作る。苦しい胸の内は親友にしか明かせない。千味子の賛同を受け基は代理出産の計画実現に向けて突き進む。ついに三人は直接顔を合わせるが…。
ドラマ10「燕は戻ってこない」(全10話)は2024年4月30日放送開始。NHK総合 毎週火曜 22:00~22:45、BSP4K毎週火曜 18:15~19:00。再放送はNHK総合 毎週金曜 0:35~1:20 ※木曜深夜に放送される。原作:桐野夏生『燕は戻ってこない』(集英社)/音楽:Evan Call/出演:石橋静河、稲垣吾郎、 森崎ウィン、 伊藤万理華、 朴璐美、富田靖子、戸次重幸、内田有紀、黒木瞳、 酒向芳、中村優子、あめくみちこ、吹越満、いとうせいこう ほか
◇NHKドラマ10「燕は戻ってこない」nhk公式サイト
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