『1980 僕たちの光州事件』はこれまで描かれた≪光州事件≫をテーマにした作品と何が違うのか?

『KCIA 南山の部長たち』『ソウルの春』『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』に続き、韓国現代史の闇を市民の視点から描いた『1980 僕たちの光州事件』が、4月4日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開される。本作は、これまで光州事件を扱った作品とは異なるアプローチで描かれた。HPで予告動画など公開中だ。
『KCIA 南山の部長たち』は、長年独裁者として君臨したパク・チョンヒ大統領の暗殺事件を、『ソウルの春』はその直後に起こったチョン・ドゥファンによる軍事クーデターを、それぞれ史実を基にしたフィクションとして映画化し、大ヒットを記録した。そして、同じく大きな反響を呼んだ『タクシー運転手〜約束は海を越えて〜』では、民主化を求める市民を虐殺する軍の姿を、真実を世界に伝えようと奮闘するタクシードライバーとドイツ人記者の視点から描いた。
本作『1980 僕たちの光州事件』は、その光州事件の只中で暮らしていた「ごく普通の家族」に焦点を当てる。権力が市民のささやかな幸福をいかに踏みにじったのか、そして混乱と恐怖の中でも愛する人を守りたいと願う人々の姿を、ユーモアを交えながらも切々と描く。韓国現代史に新たな名作が誕生した。
『ソウルの春』がもたらした軍事独裁政権の成立、そして『1987、ある闘いの真実』へと続く民主化運動。本作が描く5.18光州民主化運動は、12.12軍事クーデターの結果であり、6月民主抗争の発端でもある。カン・スンヨン監督は「1979年から1980年は、18年間の独裁を断ち切り民主化へ進むのか、それとも退行するのか、激動の時期だった」と語る。そして、「1980年5月18日から27日までの10日間、無慈悲な公権力と国軍の銃口に抗議し、市民が命をかけて抵抗した。この志は、5.18民主化運動として昇華され、1987年の6月民主抗争へと続く民主化の熱望の種となった」と述べる。だからこそ、本作は5.18光州民主化運動を単独の事件としてではなく、歴史の流れの中でその意義を伝えようとしている。
『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』と同じ時期・同じ土地を舞台にしながらも、本作は全く異なる物語を紡ぐ。『タクシー運転手 〜約束は海を越えて〜』は外部の視点から光州を描いた。一方、本作は光州の南道庁裏通りで中国料理店を開業したチョルス一家と、その周囲の人々の目線で物語が進む。彼らは、この土地で生活し、ささやかな幸せを守ろうとする「私たちの物語」を生きる。隣人たちはそれぞれの立場に分かれ、日常を支えていた常識が崩れていく。観客は彼らの混乱と不安を肌で感じることになる。
カン・スンヨン監督は、1980年当時の光州を再現するため、3ヶ月のデザイン設計と2ヶ月の施工、合計5ヶ月に及ぶ準備期間を経てセットを作り上げた。平凡な暮らしと小さな幸せを願った家族を襲った悲劇を、市民の視点でリアルに描く。涙なしには語れない韓国現代史の新たな傑作がここに誕生した。『1980 僕たちの光州事件』は、4月4日(金)よりシネマート新宿ほか全国公開される。
■あらすじ
1980 年5 月17 日。チョルスの祖父は念願だった中国料理の店をオープンさせる。父親はどういうわけか家にいないけれど、チョルスの大好きな幼馴染のヨンヒや優しい町の人たちに祝福されて、チョルスと家族は幸せに包まれていた。しかし輝かしい未来だけを夢見る彼らを、後に「光州事件」と呼ばれる歴史的悲劇が待ち受けていた。
■作品概要
監督・脚本:カン・スンヨン
出演:カン・シニル、キム・ギュリ、ペク・ソンヒョン、ハン・スヨン、ソン・ミンジェ
2024 年/韓国/韓国語/99分/シネマスコープ/5.1ch
字幕翻訳:本田恵子/字幕監修:秋月望/原題:1980/映倫G
配給:クロックワークス
◇クロックワークスHP
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