今こそ観たい、反戦とロマンの物語 ジブリの傑作『紅の豚』9日、金曜ロードショーに登場

05月08日19時00分映画
©1922 StudioGhibli・NN

明日5月9日の日本テレビ「金曜ロードショー」(21時)では、スタジオジブリの名作『紅の豚』が放送される。番組HPに予告動画が公開中だ。

宮崎駿が原作・脚本・監督を務めた本作は、1992年公開の長編アニメーションであり、舞台は1920年代末のアドリア海。かつて空軍のエースパイロットだったポルコ・ロッソが、魔法で豚の姿となりながらも、愛機サボイアS.21を駆って空賊たちと戦い、自由に空を飛ぶ姿を描く冒険活劇だ。



本作の最大の見どころは、美しいアドリア海の風景や迫力ある空中戦、そして「飛ばねぇ豚は ただの豚だ」という名セリフに象徴されるロマンと哲学性である。細部まで描き込まれた飛行艇やノスタルジックな町並みが、観る者を映画の世界へと引き込む。単なる冒険譚にとどまらず、戦争の無意味さや自由への渇望、人間性の探求といった多層的なテーマが物語に深みを与えている。

特に注目したいのは、宮崎駿監督ならではの深いメッセージである。『紅の豚』には「反戦」と「個人の自由」、そして「時代や体制への抵抗」といったテーマが込められている。舞台となるのはファシズムが台頭する時代のイタリア。主人公ポルコ・ロッソは「ファシストになるより豚の方がましさ」と語り、国家や軍隊に組み込まれることを拒む。その姿は、戦争や国家主義に抗う個人の尊厳と自由の象徴であり、華やかな空中戦の裏には戦争の無意味さや平和への願いが込められている。また、ポルコが豚の姿であることは、戦争体験による幻滅や罪悪感、中年期のシニシズム、さらには体制への抵抗の象徴でもある。失われた理想や過ぎ去った青春への哀愁も漂い、単なるエンターテインメントにとどまらない普遍的な問いを投げかける作品となっている。

声優陣も豪華だ。主人公ポルコ・ロッソ役は森山周一郎、マダム・ジーナ役は加藤登紀子、フィオ・ピッコロ役は岡村明美、そしてポルコのライバルであるカーチス役は大塚明夫が務めている。彼らの個性豊かな演技が、作品の世界観にさらなる深みを与えている。

本作のキャッチコピーは「カッコイイとは、こういうことさ」。スラリとした他のキャラクターの中で、豚のルックスの主人公のどこがカッコいいのか?と未視聴の方ならそう思うかもしれないが、視聴後はきっとこのキャッチコピーが偽りでなかったと納得するはず。

『紅の豚』は、大人も子どもも楽しめるロマンと哀愁、そして宮崎駿監督ならではの深いメッセージに満ちた作品である。明日の放送で、ぜひ最高の空の旅を体感してほしい。

日テレ「金曜ロードショー」HP