恋はあったけど愛じゃなかった―池田エライザが“恋愛”を問い直す NHK「舟を編む」第2話(ネタバレあり)

01時05分ドラマ
画像:NHKより

6月24日(火)、NHK総合で放送された「舟を編む~私、辞書つくります~」では、岸辺みどり(池田エライザ)が失恋を乗り越え、辞書編集者として新たな一歩を踏み出す姿が丁寧に描かれた。第2話はNHK+にて7月1日(火) 22:44 まで見逃し配信中。この回のあらすじと見どこ。感想を紹介する(ネタバレあり)。



「舟を編む 〜私、辞書つくります〜」は、2012年に本屋大賞を受賞した『舟を編む』を原作とし、2013年には松田龍平主演で映画化、2016年にはテレビアニメ化もされた人気作品。原作や映画では、辞書編集に情熱を注ぐ馬締光也(まじめ・みつや)が主人公だったが、本ドラマでは、ファッション誌から辞書編集部に異動してきた新入社員・岸辺みどりの視点から物語が描かれる。⇒【キャスト紹介はこちら】

あらすじ:辞書作りの現場で見つけた“右”と“恋愛”の意味

岸辺みどり(池田エライザ)は恋人・昇平(鈴木伸之)と別れ、気落ちしたまま仕事に向き合うが、馬締光也(野田洋次郎)の言葉に励まされ、辞書作りの現場に本格的に踏み出していく。

銀河堂書房から発売された小型辞書の第5版と、自分たちが取り組む中型辞書『大渡海』との違いを学びつつ、見出し語リストの照合や項目の新旧比較など、膨大な作業に直面する。

みどりは「た、な、は、ま、や、ら、わ、ん」行を担当することになり、語彙数の違いや辞書編集の大変さに戸惑いながらも、仲間と協力して作業を進める。辞書編集の基本である「見出し」「語釈」「用例」についても学び、辞書作りの意義を少しずつ理解していく。

恋はあった、でも愛じゃなかった――みどりの“明らめ”

みどりの失恋を知った馬締は「それが誤解かもしれない」と自身の経験を踏まえて話し、「あきらめてあきらめてあきらめてほしいです」と助言する。『恋愛』ついて深く考えたみどりは元恋人・昇平に会って、「恋はあったけど愛じゃなかった」と静かに告げる。
“諦める”ではなく、“明らめる”という馬締の言葉の意味に気づき、自分自身の感情を言葉にして整理していくみどり。その姿勢が、辞書というメディアを「単なる情報の集合体」ではなく、「人の心を映す鏡」へと変えていく。

“異性同士”でいいのか? 恋愛語釈を巡る議論

今回、物語の中心となったのは「恋愛」という語の語釈を巡る議論だ。
みどりは「異性同士」という表現に強い違和感を抱く。編集会議では「典型例の記述は必要」「時代を追いかけるのが辞書の役目」という意見が上がるが、みどりは「辞書でも時代を作れる」と反論。LGBTの割合が左利き人口と同程度であることを根拠に、定義の見直しを訴える。

この議論の鍵となったのが、バイトリーダー天童(前田旺志郎)の存在。実は彼のパートナーが男性であることが明かされ、みどりと天童の距離が縮まるきっかけにもなった。

名台詞:「君がそれを好きなのは、それのために時間を使ったからだよ」

この回ではあけぼの製紙の営業マン、宮本慎一郎役で矢本悠馬が本格登場した。彼は馬締をみて「好きを仕事にしたい」と思い、馬締と同じ熱量で『大渡海』専用用紙に取り組んでいた。そんな彼が口にしたのが『星の王子様』の一節…「君がそれを好きなのは、それのために時間を使ったからだよ」だった。みどりに「3年後の発刊の日までに、本当に好きになるかどうか試してみよう」と持ち掛けた。

宮本のこの言葉は、辞書編集にも恋愛にも通じるものだった。時間をかけて向き合い、悩みながらも一歩ずつ前に進むみどりの姿は、多くの視聴者の共感を呼んだ。

次回へ向けて:言葉と人生が交差する場所

ラストでは、みどりが馬締たちと同じ『早雲荘』へ引っ越し、新たな環境での再スタートを切る。心機一転、辞書編集者としても、一人の人間としても、彼女の“再出発”が描かれていく。



第3話が7月1日ほかで放送される。

【放送】2025年6月17日(火)スタート<全10話>
 総合:毎週火曜22:00~22:45
 再放送(総合)毎週木曜24:35〜25:20 (※金曜0:35~1:20)
【原作】三浦しをん 『舟を編む』
【脚本】蛭田直美
【音楽】Face 2 fake
【演出】塚本連平 麻生学 ほか
【出演】池田エライザ 野田洋次郎 矢本悠馬 美村里江 渡辺真起子 前田旺志郎/岩松了 柴田恭兵 ほか

NHK「舟を編む 〜私、辞書つくります〜」HP

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