日本版「私の夫と結婚して」は韓国版を超えたか?今後の国際的なコンテンツ制作の新たなモデルに

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7月25日、日本版「私の夫と結婚して」がPrime Videoで最終章(第9話・第10話)を迎え、配信初日から日本TOP10で首位を維持し続けた。クライマックスは日韓版ともに“二度目の人生”と“起こるべきことは起きる=2つの死”をどう乗り越えるかをめぐる物語だったが、その行きつく先は驚くほど異なっている。(ネタバレあり)
※これまでの各話ごとの日韓の違いは以下でまとめている。
●日本版はリメイクじゃない?韓国版との違いを徹底比較(第1・2話)
●第3話・第4話で日韓の“違い”がさらに鮮明に
●日韓でここまで違う?佐藤健の過去エピ&小芝風花の“事故級ファッション”(第5話・第6話)
●復讐の結婚式と佐藤健からの衝撃の別れ…“ラスボス”はあるのか?(第5・6話)
●最終話目前4人のインタビューとキャラクターと演出比較
■キャスト( )韓国キャスト
神戸美紗役:小芝風花(パク・ミニョン)
鈴木亘役:佐藤健(ナ・イヌ)
平野友也役:横山裕(イ・イギョン)
江坂麗奈役:白石聖(ソン・ハユン)
住吉役:田畑智子(コン・ミンジョン)
未来役:黒崎レイナ(チェ・ギュリ)
田辺悠斗役:七五三掛龍也(イ・ギグァン)
※ユナを演じたのは、歌手としても韓国・日本・アメリカを中心に活動しているBOA。
ほか
日本版の第9話と第10話の最終章は、韓国版では第13話~第16話となる。どちらも2人の別れからのスタートだった。
■別れから始まった最終章

日本版では、亘から別れを言い出した。これはストーカーと化した友也から美沙を守るため。「愛する人を守るためなら何だってする」と、覚悟を決めて友也を道連れに死を選ぼうとした。美沙が駆けつけてこれを阻止する。

一方韓国版では、美沙(韓国のジウォン)が亘(韓国のジヒョク)に婚約者がいたことを知り、心が追いつかずに別れを切り出す。しかし最後には命を懸けて守ってくれた彼の元に戻る展開だ。
■ラスボスの有無と“結末のカタルシス”
日本版では原作にも登場する「ラスボス」―亘の元婚約者(ユナ)をあえて登場させず、真の敵を麗奈に設定。美沙、亘、麗奈、友也の4人に物語を集約し、それぞれの葛藤と決着に深みをもたせた。美沙の運命を変えようとした亘の自己犠牲、麗奈の狂気と孤独、そして友也の哀愁。日本版は、誰か一人の“外敵”によるドラマティックなカタルシスではなく、登場人物たち自身の選択と内面の成長で幕を下ろした。
対して韓国版は、圧倒的な外部刺激=ラスボス(ユナ)が登場することや、美沙(韓国のジウォン)と亘(韓国のジヒョク)が裏で画策することで一気に復讐劇の色彩を強めた。家族関係の深い闇や裏切り、仲間割れ、そして死と逮捕が相次ぐ終幕は、韓国ドラマならではの“ドロドロ衝撃展開”として強いインパクトを残した。
■死の描かれ方と救いの差
どちらも1度目の人生での死と、人は違うが同じ形で死を迎えるという見事な伏線回収。
日本版の友也の死は、保険金目当てで麗奈を殺害しようとして逆にブレーキに細工をされて事故死。最後に美沙への未練を残した最期が描かれた。麗奈も絶望と孤独の果てに美沙と乗った観覧車から自ら転落して命を絶つ。それぞれの選択と因果応報が強調される。
韓国版でも友也(韓国のミンファン)は麗奈(韓国のスミン)に殺害されるが、復讐の連鎖のなかでガラスのテーブルに頭を打ち付けて死亡。もう一つの死はユナだった。警察に逮捕され自暴自棄になって自分で運転する車で事故死。麗奈もまた自滅的に、より血なまぐさい決着を迎える。その背景には美沙(韓国のジウォン)の母の不倫相手が麗奈(韓国のスミン)の父だったという「親世代の因縁」までが描かれ、より壮絶な運命劇となった。もっとも麗奈には死ではなく別の形で罰を受ける。
■主人公たちのその後と、ラストの余韻
韓国版はゴージャスな結婚式や財団運営、子どもの誕生――すべてを手に入れた派手なハッピーエンド。しかし終盤、主人公カップルにも“悪”の気配をまとわせる陰影も残した。

日本版は派手さこそないが、記憶と伝統を大切にした和菓子屋の経営という静かな再生。人生の痛みと喪失を乗り越えた“日常の幸せ”を選択し、深い余韻を残した。また、美沙の身代わりとなって“夫の浮気と病気”に苦しんだ住吉。韓国版では住吉にも亘のような存在である室長がいて、復讐の手伝いもしてくれたが、日本版はこれを全て亘が引き受けている。この辺り、美沙の亘への感謝の言葉が韓国版の「贈り物」ではなく、「神様」がしっくりくる。
■感想とまとめ

日本版「私の夫と結婚して」は、徹底した“人間ドラマ”路線と自己変革の物語で、悪役を外部ではなく身近な人間や自分自身の中に見出した。一方、韓国版は大胆なラスボス構成や予想外の展開、強烈な因縁劇で激しいカタルシスをもたらした。
どちらも“起きるべき2つの死”を巡る運命に抗い、壮絶な結末と再生を描くことで、「幸せとはなにか」の問いを視聴者に投げかけている。改めて日韓の両作品を第1話から見直して、個人的には、最終章は日本版がより強く心に響いた。それでも日韓それぞれの演出美学と価値観、そして日本版の小芝風花と佐藤健、韓国版のパク・ミニョンとナ・イヌをはじめ俳優陣の熱演が凝縮された、甲乙つけがたい作品だと感じた。
「私の夫と結婚して」は日韓共同制作による真の共作プロジェクトであり、単なるリメイクではない。日本の文化や視聴者に合わせた“オリジナル作品”として再構築された。韓国の企画力と制作ノウハウ、日本の演技力や演出表現が融合し、両国の強みがシナジーを生んでいる。制作発表会などでは日韓キャスト・スタッフが交流し、国境を越えた新たなクリエイティブの形を提示。今後の国際的なコンテンツ制作の新たなモデルとして注目されている。
これまでの全話のあらすじとみどろは【日本版「私の夫と結婚して」関連記事】で。
韓国版の全話あらすじと見どころ、場面写真などは【「私の夫と結婚して」を2倍楽しむ】でまとめている。