韓国ドラマの最新トレンド「主役が二役」―観る者を魅了する“ふたつの人生”の演出法

【グローバル視点で読む韓国ドラ】韓国ドラマ界では、2020年以降「主役が二役を演じる」設定が急速に注目を集めている。
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双子や多重人格、憑依など、ひとりの俳優が複数の人格や人生を演じ分けることで、作品に深みと迫力を与える演出手法だ。
視聴者は一つのドラマの中で“ふたつの人生”を体感できる贅沢さに魅了され、この流れは確かなトレンドとして定着しつつある。
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代表作に見る「一人二役」の魅力
具体的な例を挙げれば、その幅の広さがわかる。まずは主役が別の人間を演じた作品。
▼「王女ピョンガン 月が浮かぶ川」(2021年)
キム・ソヒョンが歴史的背景を背負った二役を繊細に演じ分け、ヒロイン像に重層性を与えた。
▼「オク氏夫人伝 -偽りの身分 真実の人生-」(2024年~2025年)
チュ・ヨンウが、伝奇叟(旅芸人)と面目な役人という正反対の立場を一人で体現し、俳優としての表現力の幅を見せつけた。
▼「未知のソウル」(2025年)
パク・ボヨンが双子役に挑戦。田舎で自由に暮らす陽気な妹とソウルの公営企業で働く冷静なエリートの姉という対照的な人物像を描きつつ、双子が互いを装うという入れ子構造の演技も披露し、「一人四役」と称されるほどの力量を示した。
続いて、主役が悪霊に憑依されるという作品。
▼「鬼宮(キキュウ)」(2025年)
ユク・ソンジェが、ヒロインの初恋相手で正義感の強い検書官と、彼に憑依するわがままな悪神イムギ(大蛇)を演じ分けた。瞬時に入れ替わるスイッチ演技が好評で、緊張感あふれる心理劇を展開。複雑な人間関係と物語構造を支える重要な演出として注目を集めた。
▼「仙女と彦星」(2025年)
再びチュ・ヨンウが一人多役に挑戦。こちらも不運を抱えた高校生と、彼に憑依した悪霊を演じ分けてその存在感を強めている。
これらの作品はいずれも「一人二役」が単なるギミックではなく、物語に厚みを加える重要な装置となっている点が共通している。
流行を超えて、現代的テーマを掘り下げる
こうした演出は、視聴者の「もしも自分が別の人生を送るなら」という欲望に共鳴するだけでなく、
▼並行世界
▼憑依
▼人格の切り替え
▼家族や血のつながりの象徴
といった現代的かつ普遍的なテーマを掘り下げる役割も果たしている。演技派俳優にとっては力量を証明する舞台であり、同時に新たなスター性を開花させるチャンスにもなっている。
過去のヒット作も再評価
実はこの潮流は2020年以降の新しさにとどまらない。やや古い作品ながら強い印象を残した
ユン・シユンが二役に挑戦した「親愛なる判事様」(2018-2019年)と「トレイン」(2020年)がある。「親愛なる判事様」は冷徹なコンピューター判事と呼ばれる双子の兄と、前科5犯の不良の弟の二役。「トレイン」はパラレルワールドで正義感溢れる刑事と汚職刑事の二役で視聴者に強烈な没入感を与えた。
また、映画版ではイ・ビョンホンが挑んだ同名の作品を、ヨ・ジングがドラマ「王になった男」(2019年)として「一人二役」を軸に話題を呼んだ。
今後の展望
今後も韓国ドラマにおける“1人2役”は進化を続けるだろう。単なる設定の妙味を超え、より複雑な人間ドラマや斬新な物語構造の中核として活用されることが予想される。まさに、現代韓国ドラマを象徴する演出手法として、ますます存在感を高めていくに違いない。
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