“コチュジャン・バタービビンバ”が象徴する「暴君のシェフ」、世界を魅了する究極フュージョン

Netflixシリーズ「暴君のシェフ」は、食を通じて韓国ドラマの進化を体現する作品だ。朝鮮時代という伝統的な舞台に、フレンチシェフというグローバルな視点を差し込み、ローカルとグローバルを調和させる物語を描き出している。その試みが、世界中でこれほど爆発的な反響を呼んでいるのは偶然ではない。
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爆発的ヒットを示す数字
実際の数値がその勢いを物語る。
・視聴率:初回4.9%(ニールセンコリア)で始まったドラマは、第4話で11.1%を記録し約3倍の成長を遂げた。
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・Netflix指標:非英語圏TV番組で2位にランクイン。73カ国でトップ10入り、29カ国でテレビショー部門1位を記録。
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「チャングムの誓い」との比較
朝鮮時代×料理という構造は、2003年に放送され世界的なシンドロームを巻き起こした「宮廷女官 チャングムの誓い」(以下、「チャングムの誓い」)を想起させる。だが「暴君のシェフ」が提示しているのは、単なる後継作品ではなく、グローバル時代における新しい自己表現のかたちだ。「大長今」が韓国料理を前面に押し出した“韓国文化の誇示”であったのに対し、「暴君のシェフ」は過度な自負を抑え、フランス料理という外部の視点を媒介にして“融合”という形で韓国文化を提示する。そこで生じるのは、文化を押し付けるのではなく、食を通じて自然に共有されるバランス感覚だ。
ロマンスと権力の物語
主人公ヨン・ジヨン(イム・ユナ/少女時代)が試みる料理は、単に舌を魅了する味だけではなく、暴君イ・ホン(イ・チェミン)の心を動かす物語的機能を持つ。ここには近年、ウェブ小説などで人気を集めた「憎悪関係ロマンス」の構造が透けて見える。苛烈な暴君が料理を通じて変わっていく過程は、ロマンスでありながら権力・支配・癒やしという深い人間関係の再構築を描いている。つまり、このドラマは料理バトルを超えたヒューマンドラマでもあるのだ。
象徴する一皿「コチュジャン・バタービビンバ」
象徴的なのが、初回に登場する「コチュジャン・バタービビンバ」である。当時存在しない食材を組み合わせたこの料理は、韓国を象徴するコチュジャン、西洋文化を象徴するバターを融合させた一品だ。それは作品全体を貫くテーマを見事に映し出している。韓国的でありながら、グローバルにも理解されるフュージョン。まさに「暴君のシェフ」という作品の立ち位置そのものだ。
Kドラマの未来を示す作品
視聴者は伝統的な韓国文化の要素を楽しみつつ、グローバルに共有される“食”という言語を通して物語に没入できる。時代劇、料理サバイバル、恋愛、政治劇――それらを“フュージョン”という哲学でひとつにまとめたこの作品は、Kドラマがこれから進むべき方向性を端的に示している。
「暴君のシェフ」は、韓国文化をグローバルに翻訳する試みであると同時に、その過程で生まれる葛藤や調和までもドラマとして描き出している。これは単なる人気作にとどまらず、韓国ドラマが“世界標準”の語りを獲得しつつある象徴といえるだろう。
「暴君のシェフ」は、タイムスリップという奇想天外な設定から始まるサバイバル・ファンタジー・ロマンティックコメディー。【「暴君のシェフ」を2倍楽しむ】では、全話あらすじと見どころ、視聴率、ドラマ出演者のモデルとなった実在人物の紹介などもしている。
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