「ドクターX」視聴率19.5%から急落!医療描写への批判、5・18民主化運動めぐり放送中止請願まで…韓国で何が起きている?
20%突破目前だったキム・ジウォン主演のSBS金土ドラマ「ドクターX~白衣のマフィア~」(原題:닥터X : 하얀 마피아의 시대)に異変が起きている。
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10月24日放送の第6話で自己最高の全国視聴率19.5%を記録したものの、30日放送の第7話では16.5%へと3.0ポイント急落した。韓国では、医療現場の描写をめぐる専門家からの批判に加え、1980年の「5・18民主化運動」を題材にしたエピソードへの賛否が噴出。ついには国会への放送中止請願にまで発展した。朝鮮日報など韓国メディアの報道をもとに、好調だったドラマに何が起きているのか、その背景を探る。
■20%目前から16.5%へ!異例の急落も首位は維持
日本の人気ドラマ「ドクターX~外科医・大門未知子~」を韓国でリメイクした本作「ドクターX~白衣のマフィア~」は、天才外科医ケ・スジョン(キム・ジウォン)が、病院内部の権力争いや不正に立ち向かうメディカル・ノワール。➡navicon特集【「ドクターX~白衣のマフィア~」を2倍楽しむ】
10月9日の初回放送で全国視聴率11.4%という好スタートを切ると、第2話では14.9%、第4話では18.5%を記録。第6話では19.5%に到達し、20%突破は時間の問題かと思われていた。ところが、10月30日の第7話は16.5%、昨日放送した第8話も15.6%で2話連続下落(【10月31日視聴率TOP10】)。
もっとも、全国15.6%は依然として高い水準であり、同日の全番組で1位を維持。「愛が来る」(14.7%)を0.9ポイント上回り、全番組首位を守った。それでも、右肩上がりだった人気ドラマが突然失速した背景として、韓国メディアが注目しているのが、相次ぐ論争だ。
■現役医師が医療描写を批判!放送審議要請に発展
最初に問題となったのは、医療現場の描き方だった。韓国メディアの報道によると、現役の整形外科医を名乗る人物が10月15日、ドラマの医療描写について放送メディア通信審議委員会に審議を要請したことを明らかにした。
この医師は、回診が不要な雑務のように描かれ、医療スタッフが無能な悪役として単純化されていると指摘。さらに、医療行為に伴う不確実性を無視した演出が繰り返されていると批判した。
ドラマとしての面白さを理解しつつも、視聴者に現実の医療について誤った認識を与えかねないという懸念だ。また、劇中に登場する心停止患者への除細動や、鼠径ヘルニア患者の緊急手術に至る過程なども、医学的な正確性をめぐる議論の対象となった。
一方、制作に携わった医療監修者もSNSで言及し、医学的に正しくない部分については、監修者と制作側の意見が一致しなかった結果と受け止めてほしいという趣旨のコメントを残している。
こうした問題は、医療ドラマに求められるリアリティーと、娯楽作品としての大胆な演出をどこまで両立させるべきかという議論にもつながった。ただし、医療描写への批判は視聴率が上昇していた時期から存在しており、今回の数字の下落を直接説明できるものではない。
■5・18民主化運動のエピソードで賛否が真っ二つ
さらに大きな議論を呼んだのが、10月24日放送の第6話で描かれた「5・18民主化運動」のエピソードだ。
5・18民主化運動とは、1980年5月に韓国・光州で起きた民主化運動で、軍による武力弾圧で多くの市民が犠牲となった韓国現代史の重大な出来事だ。劇中では、当時の銃撃で頭部に銃弾の破片が残り、46年間にわたって後遺症に苦しんできたオ・サンボム(ハ・ソングァン)が登場する。ケ・スジョンは彼の治療に乗り出すが、そこには単なる外科手術では解決できない、深い心の傷が存在していた。
第6話では、軍による市民への発砲やヘリコプターからの射撃に関する証言、国立5・18民主墓地を訪れる場面などが描かれた。続く第7話では、スジョンが患者の心の傷にも向き合いながら手術に挑む姿が描かれている。
これに対し、韓国では歴史の悲劇を正面から取り上げたことを評価する声が上がる一方、医療ドラマに歴史的・政治的な題材を持ち込む必要があったのかという批判も噴出した。
特に、日本の原作にはないエピソードを韓国版に取り入れたことについて、一部の視聴者からは物語の方向性が変わってしまったという不満も出ている。一方で、韓国の文化評論家からは、リメイク作品が自国の歴史を取り入れることは自然な創作行為であり、5・18民主化運動を描くこと自体を政治的だと決めつけるべきではないとの反論も示された。
今回の論争は、ドラマの面白さや脚本の評価だけにとどまらず、韓国社会における歴史の記憶と表現の自由という問題にまで広がっている。
■国会に「放送中止」請願!主演キム・ジウォンへの批判も
事態がさらに拡大したのは、第6話が放送された10月24日だった。
韓国国会の電子請願制度「国民同意請願」に、「SBS『ドクターX』ドラマの放送中止に関する請願」が提出されたのだ。請願者は、原作の日本ドラマでは医師個人の能力に重点が置かれていたにもかかわらず、韓国版が5・18民主化運動を取り上げたことについて、特定の政治的立場を反映させたものではないかと主張した。さらに、ドラマの放送中止や制作関係者の国会への証人出席などを要求した。
この請願は、公開前の賛同要件である100人を満たし、10月26日時点で公開の可否などを審査する段階に進んだ。ただし、100人の賛同は請願が正式に公開・採択されたことを意味するものではない。聯合ニュースによると、論争は主演のキム・ジウォン個人に対するSNS上の批判にまで波及したという。
一方、制作側の責任プロデューサーはSNSに英語で「no fear(恐れない)」というメッセージを投稿。歴史的題材を扱うことへの批判が強まるなか、表現の自由を守るべきだという声も上がっている。韓国では、作品の内容に対する批評と、放送そのものを中止させようとする行動は分けて考えるべきだという議論も広がっている。
■視聴率急落は論争の影響か?競合作の登場も無視できない
では、一連の論争が視聴率の急落を招いたのだろうか。
韓国メディアのヘラルド経済は10月31日、5・18民主化運動をめぐる論争と視聴率の3.0ポイント下落を関連づけて報じた。政治的な論争がドラマの人気に影響した可能性は否定できない。ただし、現時点で視聴率低下の直接的な原因が論争だったと断定することはできない。
実際、5・18民主化運動を本格的に取り上げた第6話は、自己最高の19.5%を記録している。歴史的なエピソードが必ずしも視聴者離れにつながったわけではない。
また、10月30日には同時間帯にMBCの新金土ドラマ「完璧な嘘」がスタートした。同作の初回視聴率は1.9%と低調だったものの、放送開始に伴う視聴者の選択肢の変化は考慮する必要がある。
さらに、本作はNetflixでも配信されており、リアルタイム視聴から配信視聴への移行も考えられる。ただし、配信への視聴者流出を裏づける具体的な数字は確認されていない。視聴率の急落という事実と、その原因についての推測は分けて考える必要がありそうだ。
■今度は医療ストライキ!第8話でも社会問題に切り込む
そして、論争の渦中にある「ドクターX」は、さらに踏み込んだテーマに挑む。10月31日放送の第8話では、韓国社会で大きな問題となった専攻医(研修医)のストライキを題材に、医療現場の混乱と人手不足に直面するケ・スジョンの姿が描かれた。
韓国では医療制度改革や医師不足、医療従事者の労働環境などをめぐって社会的な議論が続いてきた。今回のエピソードも、視聴者の間で新たな議論を呼んでいる。医療ドラマとしての娯楽性に加え、韓国社会の現実を積極的に取り入れる姿勢を鮮明にする本作。その挑戦が作品の魅力をさらに高めるのか、それとも視聴者の評価を分けることになるのか注目される。
■まとめ:キム・ジウォンの熱演は高評価!20%突破への再挑戦なるか
「ドクターX」が直面しているのは、単なる視聴率の問題ではない。医学的な正確性、歴史的な題材の扱い方、そして創作の自由。相次ぐ論争は、人気ドラマだからこそ注目されるさまざまな問題を浮き彫りにしている。
一方、こうした批判があるなかでも、キム・ジウォンが演じるケ・スジョンの痛快な活躍や、社会の不条理に立ち向かう物語への支持は根強い。むしろ、これほどまでに激しい論争が巻き起こるのは、本作が単なる医療エンターテインメントにとどまらず、韓国社会の敏感な問題に切り込んでいるからともいえる。
全国視聴率15.%台は、依然として大ヒットと呼べる数字だ。20%の大台突破に向けて再び上昇に転じるのか、それとも視聴者の評価がさらに分かれるのか。
今後の視聴率とともに、社会派医療ドラマとしてどのような結末を迎えるのか、その行方から目が離せない。
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