「南田南弁護士は天才肌」と「ウ・ヨンウ」第3話を比較!ペンスからウルトラマンゼロへ、変わらない“偏見の壁”

11月03日12時18分ドラマ
画像:カンテレ「南田南弁護士は天才肌」第3話より

ペンギンのラップから、特撮ヒーローの決めポーズへ。11月2日に放送された「南田南弁護士は天才肌」第3話では、原作「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の人気キャラクター・ペンスが、ウルトラマンゼロに置き換えられた。しかし、親しみやすい場面の先で主人公を待ち受けていたのは、日韓で変わらない社会の偏見だった。両作を見比べると、第3話が単なる事件解決の物語ではないことが、改めて浮かび上がる。

※以下、日韓両作の第3話の内容に触れています。日本版の詳しい展開は第3話ネタバレ記事で紹介している。



■ペンスのラップから、ウルトラマンゼロの寸劇へ
今回、南(芦田愛菜)が担当したのは、兄を殴って死なせたとされる、自閉スペクトラム症の青年・惣介(大政凜)の弁護。韓国版ではムン・サンフンが演じたジョンフンに相当する人物だ。南もヨンウも、同じ診断名だからといって、すぐに相手を理解できるわけではない。聞き取りに苦戦するところから物語が始まる。

韓国版で対話のきっかけになったのは、韓国の教育放送EBSの人気ペンギンキャラクター「ペンス」だった。ヨンウたちが歌やラップを披露し、相手の好きな世界へ近づこうとする。一方、日本版では惣介の大好きな「ウルトラマンゼロ」を取り入れ、南たちがポーズや台詞を交えた寸劇に挑んだ。
歌って踊る楽しさと、ヒーローになりきる楽しさ。表現は違っても、相手の関心に自分たちが歩み寄るという姿勢は共通している。聞きたいことを一方的に尋ねるだけでは届かなかった言葉が、好きなものを介することで届くかもしれない。その試行錯誤に、弁護士たちの誠実さが表れていた。⇒【韓国版・第3話ネタバレ】

日本版では、「仮面ライダーゼロワン」で主演した高橋文哉が、ウルトラマンゼロのポーズを披露するという、特撮ファンには楽しい取り合わせも実現。「ゼロ」つながりに注目する反応も紹介されている。
ただ、その場面を微笑ましく見るだけでは終われない。「同じ自閉スペクトラム症なら分かり合えるはず」という期待そのものが、一人ひとりの違いを見落としていないか。第3話は、主人公と被告人の双方を通して、その問いを投げかけている。

■「ボランティア?」の一言と、芽生え始めた恋の対比
湊人(高橋文哉)が大学時代の知人に会い、南と一緒にいるところをボランティア活動だと思われる場面。これは日本版独自の追加ではなく、韓国版にも、ジュノ(カン・テオ)が大学時代の後輩から同様の言葉をかけられる場面がある。

韓国版で印象的なのは、その前後に描かれる二人の距離だ。事件現場となった兄の部屋を調べる際、室内でビデオを撮る二人の動きが、まるでダンスのように見える瞬間がある。仕事で訪れた場所でありながら、互いを意識し始める空気が漂い、一足早くロマンスを予感させた。

だからこそ、その二人を「ボランティア」という言葉で、支援する側とされる側に分けてしまう周囲の視線が切ない。ジュノにとってヨンウは、共に事件を調べる同僚であり、心が近づきつつある相手なのだ。

ヨンウが傷ついたのではないかと気にしたジュノは、プレゼントを用意する。それは今後、二人の関係を彩る素敵なアイテムとなるが、ここでは中身に触れずにおきたい。何を贈るかにも、ヨンウの好きな世界を大切にしようとするジュノの気持ちが表れている。

日韓に共通する「ボランティア?」の一言。その痛みを、韓国版は芽生え始めた恋と、相手を思う小さな行動に重ねて描いていた。

■担当を外れる上司、傍聴席に座るヨンウ――その後にも違いが
主人公を弁護団から外すという依頼人の要求に、上司が反対する点も日韓で共通する。南やヨンウの働きを間近で見てきたからこそ、障害を理由に排除する判断には納得できない。その姿からは、上司と新人弁護士の間に育った信頼が伝わってくる。

ただし、その後の描き方には違いがある。日韓共に南/ヨンウを担当から外すことを上司が反対するが、日本版では南が担当を外れた後も宮地(山口馬木也)が事件に関わり、氷見(細田佳央太)が南に代わって弁護を担う。一方、韓国版ではヨンウをかばったミョンソク自身も担当から外れ、別の弁護士へと引き継がれる。ヨンウへの排除が、彼女を守ろうとした上司にも及ぶ展開だ。

さらに韓国版では、ヨンウが傍聴席に座り、公判の行方を最後まで見守っていた。弁護人として立つことはできなくても、自分が向き合った依頼人の裁判から目を背けない。その姿に、仕事への責任感と、弁護士として働き続けたい思いがにじむ。事件の真相を明らかにする力があっても、法廷でその役割を果たすことを認めてもらえない。ヨンウが座る傍聴席は、すぐ近くにある弁護人席との、あまりにも大きな隔たりを感じさせた。

■父の助言から始まる、日本版の温かな場面
日本版で心に残ったのは、惣介との接し方に悩む南が、父・誠(角田晃広)に相談する場面だ。誠は南の幼少期を振り返り、相手の好きなものを掘り下げてみるよう助言する。第2話の塩むすびに続き、今回も父娘の暮らしの中で培われた経験が、南の仕事につながっている。父は事件の答えを教えるのではなく、娘と向き合ってきた時間を手渡す。その言葉を南が受け取り、自分なりに実践する過程に温かさがあった。

前回の塩むすびから考えた日韓比較記事でも触れたように、日本版では父娘のつながりが、南の社会への一歩を支えるものとして印象に残る。

■真相を見つけても、弁護士として認めてもらえない
そして、両作で最も胸に迫るのが、主人公の能力と、周囲から向けられる評価が切り離されてしまう展開だ。

日本版では、南が被告人の特性を踏まえた弁護をする一方、検事は南自身を引き合いに出して揺さぶる。さらに、被告人の父親から担当を外すよう求められ、南はそれを受け入れる。事件の真相に近づく力があっても、それだけでは乗り越えられない壁があった。

韓国版でも、ヨンウは被告人と同じ自閉スペクトラム症という理由で一括りにされ、弁護から外れることになる。個人差を見ず、診断名だけで能力や行動を判断する視線が、二人の主人公を傷つけるのだ。

ここにあるのは、「同じ障害があるから誰よりも理解できる」という単純な構図ではない。理解しようと努力し、手掛かりをつなぎ、弁護士として働いたにもかかわらず、その仕事よりも障害が先に見られてしまう。その不条理が重い。

■楽しげな場面の先に残る、原作と同じ厳しい問い
ネット上の差別的な書き込みに加え、ナチス政権下で命の価値が選別された歴史に触れる語りも、日本版は受け継いだ。一人の被告人への偏見を、特殊な事件の中だけに閉じ込めない。誰かの命や存在を、他者が役に立つかどうかで判断する。その危うい視線が、過去だけのものなのかと問いかける構成だ。

韓国版は第1話0.9%、第2話1.8%から、第3話で全国視聴率4.0%へ上昇した。事件解決の爽快さだけでは語れない作品の深さが、鮮明になった回でもある。

ペンスもウルトラマンゼロも、相手に近づくための入り口だった。しかし、相手と心を通わせようとする努力が実を結んでも、社会がその人を対等に受け止めるとは限らない。楽しげな場面と、その後に突きつけられる現実の落差が、日韓双方の第3話を忘れがたいものにしている。キャラクターは変わっても、主人公がぶつかる壁は変わらない。今回の日韓比較で浮かび上がったのは、アレンジの巧みさとともに、原作から受け継いだ問いの厳しさだった。

「南田南弁護士は天才肌」は毎週月曜22時、カンテレ・フジテレビ系で放送。TVer、カンテレドーガで最新話を見逃し配信し、Netflixでは各話の放送終了後に順次配信する。

◇カンテレ・フジテレビ「南田南弁護士は天才肌」HP

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