物語は未亡人の母、その娘を軸に展開していく。多くの小津作品が「父」を柱にしているのに対して、これはまた変化球である。
母親役が原節子、娘が司葉子という組み合わせも斬新だ。
親子が互いを慮り過ぎることで生じる軋轢という構図はいつもの小津色だが、ユーモラスの味加減は、晩年にして肩の力が抜けてきたせいか豊かになり、観ていて楽しい。
三輪周三の七回忌に集まる友人たち。未亡人の秋子(原節子)は相変らず美しく、娘のアヤ子(司葉子)も美しく育っていた。
アヤ子はすでに婚期を迎えている。周三の友人の間宮(佐分利信)、田口(中村伸郎)、平山(北竜二)はアヤ子の相手を見つけてやろうと画策しはじめる。
ただ、母娘二人とも、アヤ子の結婚はまだまだ先だろうと思っていた。
ある日、アヤ子は間宮の部下、後藤(佐田啓二)を紹介される。間宮には、アヤ子と後藤とは似合いのカップに思えたのだった……。
小津安二郎は、俳優たちのもったいぶった重い芝居を嫌っていたのではないかと思えてならない。ある種の軽み、それは生命の躍動を伴う軽さなのだが、そのあたりを表現させたかったのではないか。
ただ、その軽快さを表現するのは難しい作業であり、当時としては熟練の俳優たちを起用せざるをなかったのだろう。
もしも、いま、小津が生きて、作品を撮っていたら、どういう俳優を起用したのだろう、と興味深くはある。
美しき母娘の関係の心情の複雑さを描く『秋日和』
スタッフ: 製作:山内静夫/監督:小津安二郎/原作:里見弴/脚本:野田高梧、小津安二郎/撮影:厚田雄春/音楽:斉藤高順/美術:浜田辰雄/照明:石渡健蔵/録音:妹尾芳三郎/編集:浜村義康/助監督:田代幸蔵キャスト: 原節子、司葉子、岡田茉莉子、佐田啓二、桑野みゆき、三上真一郎、佐分利信、笠智衆、中村伸郎、三宅邦子、渡辺文雄、沢村貞子配信期間: 年月日 ~ 年月日
©1960松竹株式会社
54件中1~10件を表示しています。
-
戦時中に作られた『陸軍』に挟み込まれた庶民の戦争観
エンタテインメント邦画スペクタクル[年月日 ~ 年月日] -
戦国時代、「政治」と深く関わった文化人『利休』
エンタテインメント邦画歴史・時代劇 -
VHS誕生秘話をドラマとして描いた『陽はまた昇る』
エンタテインメント邦画ドラマ[年月日 ~ 年月日] -
近未来の日本を舞台に、子どもたちの凄絶な闘いが展開する『バトル・ロワイアル』
エンタテインメント邦画アクション[年月日 ~ 年月日] -
懐かしのパソコン通信時代のネット恋愛を描いた『(ハル)』
エンタテインメント邦画恋愛[年月日 ~ 年月日] -
いくつもの人生の交錯を爽やかに描いた内田けんじ監督の『運命じゃない人』
エンタテインメント邦画恋愛[年月日 ~ 年月日] -
事件からもう40年なのか!石井輝男監督、小川真由美主演でおくる”ファクション”の傑作『実録三億円事件 時効成立』
エンタテインメント邦画アクション -
5度も映画化された『肉体の門』、1988年公開版は、かたせ梨乃・名取裕子ら豪華キャスト
エンタテインメント邦画ドラマ -
中年夫婦の倦怠感を冷静に見据えた小津作品『お茶漬の味』
エンタテインメント邦画ドラマ -
小津安二郎監督『東京物語』は、いまもなお観る者の胸に迫りくる
エンタテインメント邦画ドラマ[年月日 ~ 年月日]
54件中1~10件を表示しています。