★「歴史ドラマ」を楽しむ-韓国三大悪女-『張禧嬪』チャン・ヒビン編④

特集 韓ドラここが知りたい 三大悪女
『張禧嬪』チャン・ヒビン編③からの続き。(ネタばれどっさり。ただし、読んでから観ても十分楽しめます)

【側室オクチョンvs王妃インヒョン】

目も当てられないオクチョン(チャン・ヒビン)と粛宗王との熱愛ぶりにあわてた大妃と西人派が、オクチョンに「王妃を呪った」という濡れ衣を着せてを追い出し、山奥で亡き者にしようとしたがオクチョン兄の助けで何とか助かる。

このころのオクチョンといえば、王妃になる!という大それた夢は抱いていたものの、心底粛宗を愛していたようだ。これがそこいらの両班なら、二人の愛の強さに免じて…となっただろうが相手が悪すぎた。何しろ一国の王。しかも、西人派vs南人派で丁々発止やり合っている最中。とにかく、このころのオクチョンの嘆きようは間違いなく「恋する人」の傍から引き離された悲しみ。だからこそ、自分の居場所がわかってもなんだかんだと言い訳をし、入宮させてくれない粛宗に痺れを切らしたのだろう。
粛宗も必死にオクチョンを入宮させようとしてるのだが、何しろ、「出宮した者は戻れない」「女官のことは王妃の管轄下」というルールで思うようにことが運べない。

さて、粛宗とインヒョン王妃とのスロー・ラブは、オクチョンの居場所がわかった時点でジ・エンド!オクチョンが自分の子を宿していると知るや、激しくインヒョンに再入宮を迫る。快諾しないインヒョンに粛宗の心は冷え切って、ことある毎に「嫉妬してるのか!」と攻め立てる。心優しき王妃も、時期を見て何とか粛宗の望みを叶えてあげようとするのだが…。オクチョンにのぼせ上がっている粛宗は、「待て!」ができないまるで駄々っ子。

オクチョン再入宮について、16話では粛宗と大妃が、17話では大妃と大王大妃が揉めに揉める。この大王大妃役ぴったりの女優は、カン・ブジャといってソウル大学(中退)出身のインテリ女優だ。貫禄十分な容貌から演じる役もこの手の配役が多い。

いくら言っても引き下がらない息子にあきれた大妃は、再びオクチョンの始末を命じる。哀れオクチョンは命は助かったものの、今度は流産してしまう。あまりにも強いオクチョンに、これまでは同情心も沸かなかったが、このときのオクチョンの狂乱ぶりにはさすがに胸が痛んだ。(16話)
しかし、この流産でオクチョンは「ただ王が愛しい、恋しい」から「待っているだけではダメ!自分の身分は自分で守る」と、強さ度アップ、悪女街道まっしぐらとなるのだ。

一方、粛宗もオクチョン襲撃実行犯を西人派とみて動き出した。王権の弱さを実感した粛宗は、朝廷の刷新をするため別試という臨時官僚登用試験を実施する。つまり、西人派を排除して自分に従う「Yesマン」集めをしようというわけだ。ドラマでは、まるでオクチョンの再入宮のためだけのようにも描いているが、粛宗はかねてより党派閥や外戚にがんじがらめの弱い王権を憂えており、在位中に大きな政権の入れ替えを3度も行っている。この少々エロイ(失礼!)19代王・粛集を、史実では王朝最後の「強い王」と伝えている。

ところが、せっかく西人派をやり込めたと思ったところで粛宗ダウン!天然痘だ。乳母日傘で育った者はやっぱり甘い。夫や嫁の死ではびくともしなかった大妃も、さすが息子のこととなると平常心ではいられないらしい。天然痘の我子を抱きかかえ、遂には快癒を願って氷水を浴び祈祷を続ける。これが功を奏したのか、粛宗は奇跡的に回復する。ところが、大妃はあっけなくこの世を去ってしまう。大妃は死に臨んでも、「“粛宗の母”ではなく”大妃”」として弱音をはかない。だがここで母と息子が始めて心を通わせる!これが泣ける…。また、臨終に際して憎っき姑の大王大妃役のカン・ブジャが大妃を見舞うシーン。これもまた泣かせてくれる(20-21話)。涙腺決壊!

結局、母の願いもむなしく粛宗はオクチョンを入宮し側室にしてしまう。しかし、この母の祈祷がオクチョン入宮のきっかけとなってしまったのだから、人生皮肉なもんだ。とまれ、インヒョンや西人派は側室にすることでオクチョンを王妃の管理下でうまく処理しようと思ったのだが、役者が違った!

6年ぶりに手元に戻ったオクチョンへの粛宗の執着は以前にもまして激しく、オクチョンも側室になってからはやりたい放題!
オクチョンの悪女ぶりを見てみよう。
・おねだり: 王子の学問所である「就善堂」に住みたい。
・暴言:①(新たに入った側室に対して)王の御手付きにもなっていない側室など女官と同じ!
②(世継ぎ懐妊を祈る王妃に対して独り言)フン、王妃一人で生めるものか。王は私と夜を過ごしているのに…。
・暴挙:①王妃つきの侍医を抱きこみ、毒入り棗(なつめ)を贈る。(これにまつわる
②新側室と床を共にしようとすると、寝殿に乗り込みヒステリックにわめき暴れる。
ここに挙げたのはほんの序の口。まだ権力のないオクチョンのやり口はまるでジキルとハイド!意中の彼がいないところでライバルを怒らせ、彼の登場と同時にライバルに泣いて謝る独り芝居。身近にいない?「計算高女」←いるいる!

これにまんまと引っかかった粛宗は、オクチョンを一方的に被害者と決め付け、彼女のことを悪く言おうものなら「晒し首!」とまで…あーあ、このときビデオカメラがあればな~。さすがの大王大妃もここまでやるオクチョンには愛想尽かし、一番の味方である東平君までもが「人間にはやっていいことと悪いことが・・・」とあきれ果てる。

このドラマ息詰まるアクションシーンはないが、セリフが実にいい!孫の粛宗のあまりの愚行を嘆いた大王大妃の「深~いい話」があったので紹介しよう。
・王座が高所にあるのは、高所に立って分け隔てなくあらゆる事象を見つめるためなのだ。(29話)
悪い女に入れあげる孫を思って吐くセリフなんだが…。オクチョン再入宮から一気に加速した女の闘い、今のところ側室の圧勝で王妃はまったく歯が立たない。さあ、次に、インヒョンの巻き返しはあるのか?

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キャスト:チャン・オクチョン(後のチャン・ヒビン)(キム・ヘス)、肅宗(スクチョン)(チョン・グァンリョル)、インヒョン王后(仁顕王后)(パク・ソニョン)、ミョンソン王后(キム・ヨンエ)
監督/演出:イ・ヨングク/ハン・チョルギュン、脚本:カン・テワン