さまざまな役柄を演じきった名優、緒形拳の異色作。『野獣刑事』

いまだに根強いファンが多い工藤栄一監督が鮮烈な映像で叩きつけた問題作。独特な、光と影の映像美は、映画だけでなく、テレビドラマ（「必殺」シリーズや「傷だらけの天使」など）でも十分に発揮されていた。
この『野獣刑事』は、工藤監督後期の傑作である。はみ出し刑事の、型破りな捜査と、そのことが招く悲劇は、あまりにやるせなく、やりきれない。

女子短大生殺害事件が起き、刑事の大滝（緒形拳）も捜査に借り出される。この大滝、仕事はできるものの、勝手に暴走するため、周囲からは浮いていた。おまけに、かつて自分が逮捕した阪上（泉谷しげる）という男の情婦（いしだあゆみ）と同棲もしているのである。
やがて、阪上が出所し情婦の所に転り込み、三人で暮らしはじめるのだった。一方で、女子短大生の裏の顔が判明していく……。

けっして正義漢ではなく、かなり後ろ暗いことに手も染めつつ、それでも犯人を逮捕する。そんな「はみ出し」刑事ものは、以後、いろいろな形で映画やドラマになっていく。
ただ、この作品の主人公の野獣ぶりは、いまから見ても凄まじい。ヤク中毒役の泉谷しげるも、狂気の演技を見せてくれる。

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