ネットで楽しむオーケストラ ハイドン 交響曲第96番 二長調「奇蹟」
ハプスブルク王朝の支配下で、ハンガリーの片田舎を治めた貴族エステルハージ家。18世紀後半、当主のニコラウスはヨーゼフ・ハイドンをお抱えの音楽家として雇い、30年近くにわたって様々な音楽を作曲し、演奏してきた。ニコラウスが1790年に世を去ると、その情報をいち早く聞きつけたヴァイオリニスト兼コンサートの興行主ペーター・ザロモンは、エステルハージ家の仕事からほぼ解放された58歳のハイドンに対し、ロンドンで新しいオペラと交響曲の作曲・指揮を高額の報酬で約束させた。ハイドンは同地へ二度にわたって赴き、自作の交響曲を演奏して、莫大な富と限りない名声を得ることに成功する。エステルハージ家に仕えた30年間でためた財産の十倍以上を、2度のイギリス訪問で得たハイドン。ロンドン滞在中に同地で初演された一連の交響曲は、「ザロモン交響曲」「ロンドン交響曲」と総称され、いずれも現代にまで残る重要なレパートリーとなっている。交響曲第96番「奇蹟」も、1791年(寛政3年・作曲家59歳)にロンドンで作曲され、そのまま同地で初演された。 タイトルにある「奇蹟」とは、演奏会場の天井につるされたシャンデリアが落ちてきたにもかかわらず、誰も怪我をしなかった、というエピソードが元になっていると言われるが、どうやらこれは俗説らしい。
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