【蒼穹の昴】清朝宮廷の女性たちとその評価を考えてみる[コラム]

2011年02月06日10時10分 
(2011年02月19日09時02分 更新)
ドラマ

ドラマではいよいよ本格的に光緒帝の親政がスタート、若き皇帝は頑張っております。しかし歴史物語の辛いところ、この奮闘が後世では「百日維新」と揶揄されてしまっているのは教科書にも載っている事。ドラマ「蒼穹の昴」の世界限定で考えると、もっと光緒帝が文秀を取り立てていたら、西太后が汚い手を使ってでも康有為を失脚させていたら、など考え込んでしまいます。あと、光緒帝にはもう少し皇妃たちの扱いも何とかして欲しかったというのも一つの感想です。最初はキーキーうるさい喜子(隆裕皇后)も段々可哀想になってきて、光緒帝贔屓の私もこの点だけは「ちょっと、それはあんまりじゃないか」と思う事しばしばです。容姿が残念設定の割には可愛らしいというのも一つにあるかと思います。個人的には珍妃役の女優さんより好みです。
このドラマでは散々な扱いの隆裕皇后ですが、後世での評価はまるで違っています。光緒帝死後も生きていた皇后は、その後辛亥革命から清朝の立場が危うくなり、宮中では和平か主戦かで意見が分かれた際、最終的に当時一番位の高かった隆裕皇后の判断で溥儀の退位が決まったという事で、無血開城に導いた功労者としてかなり賞賛されます。ドラマを見ていると、事あるごとに泣きすがっていた姿しか見ていないのでビックリの展開であります。また、后妃の中では珍妃の姉の謹妃が一番長生きをして影響を与えたようです。謹妃は袁世凱に賄賂を贈るなどして中華民国時代も厚遇されたということで、ラストエンペラーである溥儀にもあれこれ口を出していたようです。このドラマではまるで空気の謹妃ですが、時代が変わればどうなるかまるで分かりませんね。

映画「西太后」の悪影響
映像作品において、光緒帝の皇妃たちが出てくる事はごくわずかです。この時代で映画化される程ビッグネームがあるのは西太后くらいです。そこで、悪名高い香港映画「西太后」の登場であります。西太后が極悪非道、究極の悪女というイメージを持っている人の大半の根拠がこの映画であります。私も小さい頃、テレビで深夜放送されたこの映画で瓶の中に手足を切って入れられた女性の映像に震え上がったものです。最近ではこの映画のそういった部分はフィクションであるという事も広まっているようですが、それでもまだまだこの映画のイメージを拭い去ることが出来ない人は多いようです。実際の西太后は、この劇中で手足を切ってしまった麗妃を厚遇しています。こうした違いを正し、より正確な西太后を伝えるものとして評価の高い書籍が加藤徹・著の「西太后―大清帝国最後の光芒 」(中公新書)です。この書では、脚色の無い西太后を描くと共に、後の中国を代表する政治家となる毛沢東との類似点を挙げ、いかに西太后という人が「中国的」であるかという事について語られています。歴史研究所としても、人物伝としても読みやすい一冊かと思います。 この著書のサイトでも、西太后についてのちょっとしたトリビアについて紹介されています。正しい西太后像を知っておいてから、上述の映画「西太后」を見るのであればまだ良いでしょうが、この映画が西太后そのものだと思われては、本人も草葉の陰でさぞやお怒りであろうと思います。なだめる春児もきっと大変なことでしょう…

ラマ「蒼穹の昴」は毎週日曜日よる11時から放送です。予告および関連動画はドラマ公式サイトにて視聴出来ます。

NHKドラマ 蒼穹の昴

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