時代の風向きを反映したリアル・ドキュメンタリー映画「遭難フリーター」
俺は、誰の奴隷だ? この衝撃的なキャッチフレーズをもつ新作映画の制作費は何と3万円! 派遣社員として工場に勤務する青年が、自らの姿をカメラに収めたリアル・ドキュメンタリー映画「遭難フリーター」が3月28日(土)に公開される。
本作「遭難フリーター」の監督を務めた岩淵弘樹の取材対象は“自分自身”。2006年春から1年をかけて自らの生活を収録した。そこにはメディアが伝えきれない過酷な派遣労働者の現実がある。正社員とのコミュニケーションはゼロ、自転車での勤務先と寮の往復、単調な毎日の労働作業の繰り返しの日々。しかし、この映画はそういった生活を単に暗いものとして扱わない。ときにコミカルに息苦しい青春を歩む等身大の若者の姿を映し出す。つまり、マイナーコードで鳴らさない。メジャーコードでパンクロックのように現実をスクリーンに刻み込む。そこにあるのは、自分自身をさらけ出すことで、自分自身を見つめ、そして出口よりも希望の入り口を探そうとサバイブするひとりの男の姿だ。不況とは、観念でも概念でもない。ましてや図式化された社会構造には必ず落とし穴がある。社会からのレッテルにアンチテーゼを突きつける岩淵弘樹の姿に、いまもっともラジカルなドキュメンタリー映画の鮮烈さがある。
香港国際映画祭、レインダンス(ロンドン)映画祭招待作品となった本作は、3月28日(土)より渋谷ユーロスペースほか全国順次公開。現在、作品の公式HPでは予告編映像を配信中のほか、監督・主演の岩淵弘樹による日記も公開中だ。
映画「遭難フリーター」公式サイト