【韓ドラコラム】チャン・ヒョク「ボイス」とチソン「被告人」を比べてみた!韓国ドラマここが見どころ!予告動画
韓国ドラマといえば、胸キュンのラブストーリーが鉄板ジャンルだが、近年、サスペンス・ヒューマンドラマが注目を集めている!今回は韓国でほぼ同時期に放送されたナビコンお勧めの、チャン・ヒョク主演「ボイス~112の奇跡~」とチソン主演「被告人」を比べ、その魅力を探ってみた!予告動画は各公式サイトで公開中だ。
※一部ネタバレもあることをご承知の上、お読みください。また、未視聴の方にも楽しんでもらえるように、役名ではなく俳優名で表記。ドラマの並びは放送順。
「ボイス」は、緊急通報を受ける警察の112通報センターを舞台に、連続殺人事件の真犯人を追う刑事と絶対聴覚を持つボイスプロファイラーが、シリアルキラーと繰り広げる死闘を描いたサスペンス。チャン・ヒョクの圧倒的な演技力と「推奴-チュノ-」などの時代劇とは違った現代アクションで、初の刑事役を魅せてくれた。
一方、「被告人」は、妻と娘を殺した濡れ衣を着せられて死刑判決をうけた検事が、失った事件当日から4ヶ月間の記憶を取り戻し、自分を陥れた真犯人を見つけ出すリベンジ・サスペンス。「キルミー・ヒールミー」でチソンの演技は見尽くしたはずだが、本作でまたチソンが違う表情を見せてくれた。
■叙述型×倒叙型
どちらも手に汗握るハラハラドキドキで視聴者を釘付けにしたサスペンスだが、犯人の見せ方は真逆だ。
推理小説やサスペンスドラマは、作者や制作サイドのミスリードに惑わされながら主人公と共に犯人を推理していく「叙述型」と、冒頭で犯人を明らかにしてアリバイなどを崩そうとする主人公と犯人との心理描写を楽しむ「倒叙型」とがある。
©OCN「ボイス」チャン・ヒョク主演の「ボイス」は「叙述型」。冒頭で猟奇的な殺人現場をみせながらも犯人の顔は見せない。“顎カチカチ男”というヒントだけで視聴者をミスリードさせる。犯人は中盤辺りでやっと登場する。それまで視聴者は主人公たちと一緒にハラハラドキドキしながら犯人を推理していく。これが「叙述型」の醍醐味だ。
対するチソン主演の「被告人」は第1話で犯人と犯行現場をみせる「倒叙型」だ。殺人の動機まで教えてくれ、主人公も犯人を特定している。しかし、犯人に妻子殺害の濡れ衣を着せられてしまう。おまけに記憶喪失にまでなってしまい踏んだり蹴ったりだ。視聴者はイライラしながら主人公のリベンジを固唾をのんで待つ。
■転落人生と父性愛爆発
そんな真逆のサスペンスながら、主人公の置かれた立場はとても似ている。チャン・ヒョクが腕利きの刑事、チソンはエリート検事で、どちらも犯人に妻を殺害され子供を危険にさらされる。
©SBS 「被告人」より主演の2人は共に実力派俳優で、ヒット作も連発しているイケメン俳優。実生活でも妻子がいるだけに、劇中見せた父の顔はリアルで、二人の父性愛にはたっぷり泣かされる。
妻の死でチャン・ヒョクは無気力警官になり、チソンは罪人として収監される。加えてチソンは4か月の記憶喪失にもなっており、人生の落差はチソンの方が大きい。この役作りのために6キロのダイエットしたというこけた頬が痛々しい。
■ラブ封印、ヒロインはバディ
韓ドラといえばどんなジャンルであろうと恋愛ストーリーが絡んでくるのが鉄則だったが、今回紹介した2作とも家族愛は色濃く描かれるものの、恋愛要素はほぼない。
主人公とヒロインとの絡みも、愛ではなく“相棒”。「ボイス」は共に被害者遺族であり、緊急通報センターの女上司。一方「被告人」は、同じ法曹界ながら勝率ゼロのダメ女弁護士。
どちらも、はじめは敵対していた男女がバディを組むことになるが、「ボイス」が激しい憎悪から次第に最高のバディとして絆を深め共に事件解決に挑むのに対して、「被告人」の相棒はあくまでもお手伝い程度。男女バディの絆は「ボイス」の方が強い。
■ブロマンス
最近の韓国ドラマで男女の恋愛に代わって注目を集めているのが“ブロマンス”。男性同士の恋愛に発展する“ボーイズラブ”と違って、こちらは男2人がともに困難に立ち向かいながら友情、兄弟とは違った強い絆で結ばれる関係をさす。究極の恋愛ドラマ「太陽の末裔」は、主人公二人の恋模様以上にこのブロマンスに多くの視聴者が萌えた。
「ボイス」ではチャン・ヒョクとイ・ヘヨン扮する先輩刑事、ペク・ソンヒョン扮する後輩刑事と2つのブロマンスが描かれた。
一方、「被告人」ではチソンとオ・チャンソク扮する親友で同期の検事、キム・ミンソク扮するチソンを慕う若い受刑者の2つのブロマンス。
それぞれ見ごたえのあるブロマンスだが、両作品とも弟キャラに注目してほしい。ペク・ソンヒョンは名子役時代からの実力派だし、キム・ミンソクも「太陽の末裔」での好演ぶりが高く評価されている注目株で、本作でもいい味を出している。
■サイコパスvs甘ったれ財閥2世(★ネタバレ)
サスペンスでは時に主人公以上に注目されるのが犯人だ。同情を禁じ得ない犯人もいるにはいるが、こうした作品では犯人は、悪ければ悪いほどドラマは面白くなる。
©OCN 「ボイス」よりイケメン俳優キム・ジェウクは「ボイス」で新境地を切り拓いた。「コーヒープリンス1号店」『アンティーク ~西洋骨董洋菓子店』といった人気作で、多くのファンを虜にした彼が、本作では韓国ドラマ史に残る悪役を演じた。モデル出身の抜群のルックスの彼が演じたシリアルキラーは「悪役なのにセクシーで上品!」「怖いけど魅力的」とこれまで韓国ドラマになかった危ない魅力で視聴者を萌えさせた。
@SBS 「被告人」より一方、「女の香り」で余命いくばくないヒロインを見守ったオム・ギジュンは、「被告人」では双子兄弟の一人二役を演じ、トリッキーな極悪ぶりを見せてくれた。
金にモノを言わせて主人公を追い詰める許せない極悪人というのは同じだが、キム・ジェウクが静かなるサイコパスなら、オム・ギジュンは甘ったれた財閥2世というところだ。
■聖書vs政治風刺(★ネタバレ)
両作品とも犯人を追い詰めながらも“上からの圧力”で今一歩、犯人逮捕につながらないという演出に視聴者は焦らされた。特に検事は韓国ドラマでは最高の職業として描かれることが多いが、そんな彼らも金や権力の前では法の正義を捻じ曲げた。
「ボイス」は“上”に守られ安全圏にいる犯人からの挑戦メッセージとして、“聖書の一節”を使っていたのが効果的だった。BGMにつかった“クラシック音楽”と共に視聴者の恐怖心を煽った。
一方、「被告人」は政治風刺が目についた。これが意図的な演出かどうかわからないが、最終回が放送されたのが2017年3月21日で、奇しくもこの日はパク・クネ前大統領が送検された日。そして犯人が着用した囚人服の番号は“1001”。これは国家元首が使用する番号で、前大統領の公用車のナンバーも1001。最終回放送翌日の3月22日の「韓国日報」のWEBニュースなどでも紹介され、「被告人」トリビアとして話題になった。
■イヤミスvsサイダー
短編といっても韓国ドラマは長い(オリジナル=「ボイス」16話、「被告人」18話)。それだけに残念な終わり方をするドラマもあるが、この2作品はそんな心配はいらない。
「ボイス」は、犯人と同じような地獄を見ても怪物にならなかった主人公バディが、命懸けで犯人を逮捕。その後の2人の台詞と共にこの逮捕劇は、韓ドラ・クライムサスペンス史上に残る名シーンと言っていいだろう。
しかし、犯人の最期はなんとも意味深で不気味に描かれ、後味の悪さがたっぷり楽しめる。湊かなえの小説によくある、いわゆる“イヤミス”な結末だ。
対する「被告人」は、チソンのラストの台詞「俺たちは、上の者が手を出すな、って言った人物を捕まえればいいんです」という言葉が、政治風刺のまとめのようにも聞こえ、韓国視聴者は溜飲を下げたかもしれない。最近の韓国ではすっきりした気持ちを炭酸飲料の“サイダー”といい、このドラマはさしずめ“サイダードラマ”といってもいいだろう。
両作品の見どころは他にもまだまだある。
「ボイス」の着信から「3分で到着、5分で現場確認、10分で検挙」が生死を分けるタイムリミットとして、一秒を争う臨場感ある展開はやめられない面白さだし、「被告人」のチーム“囚人”の脱走激や奇妙なチームワークは笑える。両作品を支えるバイプレーヤーたちの巧演も見逃せない。
ナビコン特集【2倍楽しむ】では、それぞれのドラマの魅力や見どころ、あらすじなどをまとめて紹介しているので参考にされたい。
【「ボイス」作品詳細】【「ボイス」を2倍楽しむ】
【「被告人」作品詳細】【「被告人」を2倍楽しむ】
◇「ボイス~112の奇跡~」公式サイト
◇「被告人」公式サイト
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