「刑務所のルールブック」最終回考:出所した気分で?本作を振り返ろう!BS11-予告動画
BS11で放送されていた「刑務所のルールブック(原題:賢い監房生活)」の放送が終了し、まるで、出所したような気分になっているのは筆者だけではないはず。こうなったら、自ら豆腐を食べて?本作品を振り返ってみたい。※韓国では“真っ白い心で人生をやり直す”という意味で、刑務所を出所した人に豆腐を食べさせる習慣がある。
ジェヒョクを始め、ミンチョルや他の面々も無事に再出発の目途が立ちホッとした、ただし、ハニャンを除いては…。ジェヒョクは再びヒーローズで活躍し、ミンチョルは愛する家族のもとに帰っていったことだろう。
本作は一見、暗澹たる雰囲気を醸し出しそうなタイトルだが、かの「応答せよシリーズ」を世に送り出したシン・ウォンホPDの天才的な演出力で、刑務所という最悪の状況下においても、コミカルかつハートフルな極上作品に仕上がっていた。伏線に次ぐ伏線が満載で、あれが伏線だったのか!?と、かなり後になって気付かされる辺りは応答せよシリーズ同様、名演出の極みとしか言いようがない。
登場人物に名だたる韓流スターやトップスターを起用しないのも、これまでのシン・ウォンホ作品の特徴でもあった。ユ大尉に扮したチョン・ヘインも、今でこそ超売れっ子俳優ではあるが、本作品が韓国で放送された2017年は、今ほど頭角を現していなかったのも事実だ。
(大ブレイクした「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」は2018年作品となる)
主人公ジェヒョクを演じたパク・ヘスをはじめ、演劇やミュージカルで活躍する実力派俳優が多く集結した作品だっただけに、個性豊かなキャラクターばかりでドラマを飽きさせることがなかった。そんな個性的なキャラクターたちをより一層際立たせていたパク・ヘスの抑え目の演技が秀逸だったことは言うまでもない。
また、多くを語らず「そうだったのか!」と納得させてしまう演出も圧巻。例えば、WINNERのカン・スンユン演じる青年、バルジャンが工事現場で仲間の財布を盗んだ疑いを掛けられるシーン等はそのいい例だろう。思い出してみてほしい、彼は実際仲間の財布を盗んでいたのか、否か?先入観で人を疑うのはやめてやってくれと自分を庇ってくれた工事現場のおじさんたち、彼らと言葉を交わしながらバルジャンの中で何かがうずく。故キム・グァンソクの名曲“不幸な子”が流れる中、画面の隅のごみ箱がボスッと音を立てて揺れた。財布を盗んでいたことを連想させるシーンの巧妙さに何度もそのシーンを見てしまった。自分を信じてくれた人を裏切れなかったバルジャンの気持ちが、セリフもナレーションもないそのワンシーンから、せつないほど伝わってきた。こんな名シーンを挙げればキリがない。皆さんのイチオシ名シーンはどこだろうか。
前出したハニャンのラストシーンには、ショックを隠し切れなかった。刑務所を背景にした作品にしては描き方が甘いという声もある。確かに、フィクションなのでおもしろおかしく描かれているのは仕方がない。だが、ハニャンのラストシーンには震撼させられた。どんなに努力をしても薬物は簡単にやめられるものではないという警鐘を鳴らしたシーンでもあった。ハニャンを演じていたイ・ギュヒョンは、カメレオン俳優と称されるだけあって、本作の中でもその才能を遺憾なく発揮していたように思う。
他の収監者らのエピソードにも次々と泣かされ、彼らは犯罪者である前に人間なんだということを考えさせられる。 ジェヒョクの裏表のない人間性が静かに心に響き、彼の真っすぐな生き方に何かを感じ再生していく罪人たちの姿。捕手としてジェヒョクの練習相手に抜擢されたのが、かつて自分を殺めようとしたトルマニだったことも“許し”が人間を再生させることをうかがわせた。
本作は、情に厚い刑務官チョン・ウンインの魅力も炸裂していた。悪役をさせたら右に出る者はいないほど強面俳優のチョン・ウンイン。誰よりも収監者役が似合いそうな彼が演じる“いい人”だからこそ、より一層温かい印象を残したようだ。
また、パク・ホサン演じるカイストのファンだという声も多く聞こえてきた。パク・ホサンも元々は舞台出身で抜群の歌唱力を誇る俳優。劇中でチョン・ウンイン演じるペン刑務官がマイウェイを熱唱するシーンは印象的だったが、あの歌声は実はパク・ホサンのもの。演劇時代からの彼のファンクラブ会員だけが知る秘密だったらしいが、後になって公になった。本作で知名度が上がり引っ張りだこのパク・ホサンは、2018年にtvNで放送された「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」でも、主演のイ・ソンギュンの兄役を好演している。
※「マイ・ディア・ミスター~私のおじさん~」は11月4日(月)からBS11にて月~金曜午後3時29分~4時30分枠で放送開始
本作の原題は「賢い監房生活」だったが、どうやらこれがシリーズ化され、次回作は「賢い医師生活」だという記事も出ている。今度はどんな世界観が待っているだろうか、シン・ウォンホPDの次回作に大いに期待が高まる。
■キャスト
キム・ジェヒョク役:パク・ヘス「六龍が飛ぶ」
イ・ジュノ役:チョン・ギョンホ「ミッシングナイン」
キム・ジホ役:クリスタル(f₍x₎)「ハベクの新婦」
ユ・ジョンウ役:チョン・ヘイン「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」
BS11「刑務所のルールブック(原題:賢い監房生活」番組サイト
2019.09.12-10.25 月~金16:59-17:55 BS初放送
◇Youtube予告動画
◇作品公式サイト
【作品詳細】【「刑務所のルールブック」を2倍楽しむ】