『コンプリシティ/優しい共犯』佐野元春登壇イベントレポート&写真公開
短編映画『SIGNATURE』が第70回ロカルノ国際映画祭ほかで高い評価を受けた近浦啓監督の長編映画デビュー作『コンプリシティ/優しい共犯』が新宿武蔵野館ほか全国順次公開中で、1月26日、新宿にて佐野元春、近浦啓監督が登壇したイベントが開催された!オフィシャルレポートが到着したのでご紹介、公式Youtubeにて予告映像が公開されている。
■日時:1月26日(日) 19:30~ ※上映前トークイベント
■場所:新宿武蔵野館 スクリーン1(新宿区新宿3-27-10 武蔵野ビル3F)
■登壇:佐野元春、近浦啓監督(敬省略)
北米最大の映画祭・トロント国際映画祭でワールド・プレミア上映され、続いて釜山、ベルリンと世界の名だたる映画祭へ入選し正式出品、そして厳しい目を持つ映画ファンが集まる東京フィルメックスで観客賞を受賞するなど世界の各映画祭で話題を呼んでいる本作。技能実習の職場から逃亡、他人になりすまして働きにきた中国人青年チェン・リャンと、彼を受け入れる孤独な蕎麦職人・弘が親子のような関係を築いていく中、不法滞在者を追う警察の手が迫った時、二人はお互いの幸せを願い、ある決断をする。嘘の上に築いた絆の行方とはー。技能実習生の不法滞在という現代社会の問題を鋭く突き、日中の実力派俳優の名演が光る傑作が公開中だ。
近浦監督が2010年代からはその佐野元春氏の映像作品を多く手がけてきた縁から、実現した今回のトークイベント。
佐野「この映画が撮っている主題、社会的なイシューは、どちらかというとドキュメンタリーで扱うテーマなんだけれども、それが映画として成立しているということに感心、感動しました」と称賛。近浦監督は満面の笑みを浮かべる。
長編映画デビューを果たしたことに佐野は「率直におめでとうございます。私のコンサートのドキュメンタリーも彼に撮ってもらいました。多くの映像監督と仕事をしてきました。音楽を理解している監督と、映像で引っ張っていく監督と2種類いるんですけど、近浦監督は珍しくその両方を兼ね備えている。」とこれまでの近浦監督との仕事で感じた印象を語る。
佐野は「ドキュメンタリーというのは作り手が1つの事実に対して自分はこう思うんだという、監督なりの結論を元に客観的な事実を積み上げていくスタイル、問題提議をしていくところが優れている。この映画はその手法プラス、現代に生きる我々や翻弄される人々の側から想像力を使ってその問題に向き合うことができる。そこが凄く素晴らしい」と本作の優れた点を語った。
ロケ地や映画公開までの流れなど、監督を質問攻めにする佐野は劇中の藤竜也について「古風な日本の父親を体現しているという意味においてクリント・イーストウッド的で、その中で葛藤している」と感じたようだ。
一目見た瞬間からルー・ユーライさんに決めていたという近浦監督の言葉や赤坂沙世さんのキャスティングの演出的な部分での起用理由に佐野は大きく頷いていた。そして「とにかくラストシーンに思い浮かぶものがありました。これから観る人たちがラストシーンにどんな思いを抱くのかとてもきになります」と続けた。
フランスのヌーベルヴァーグやアメリカンニューシネマの時代の映画に影響を受けたという近浦監督に佐野は「わたしはリアルタイムです。15才くらいでしたね。10代の頃から表現することに興味を持ってて。詩を書いたり、曲を書いたり、そして今こうなっている。他の表現も気になっていて、特に映画は表現のすべてがそこにありますから、訴求力という点ではパワフルですよね。音楽を聴くように映画にも興味を持った。よく新宿でヌーヴェルヴァーグの時代の映画を観ていましたね」と懐述した。
「映画作家として佐野さんを撮りたい」という近浦監督に、佐野は「ひとつ憧れがあって、アウトローをやってみたい。冷酷なアウトローを。もしそういうシネリオがありましたらお願いします」とまさかの逆オファーに会場からは笑いが起こった。
最後にこれから映画を観る観客に向けて近浦監督が感謝を伝え、大きな拍手が沸き起こり、舞台挨拶は終了した。
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