【歴史コラム】韓国ドラマ「剣の詩」の時代背景は?舞台となった間島(カンド)を配信前に予習!

2023年09月22日13時00分ドラマ
Netflix シリーズ「剣の詩」2023年9月22日独占配信開始

いよいよ本日22日配信スタートとなるNetflixシリーズ「剣の詩」。制作発表会で主演のキム・ナムギルが暗鬱の時代と語っていたが、1920年が歴史的にみてどんな時代だったのか、舞台となった間島(カンド)についても駆け足で振り返ってみた。
制作発表会と制作記映像公開



500年以上続いた朝鮮王朝は、世界的に見ても、あまり類のない長い王朝だった。「剣の詩」の舞台、1920年は、そんな王朝の残り香が立ち込めるなか、中国の土地、日本のお金、朝鮮の人が集まる無法地帯の間島で、大切な人々と生活の場を守るために一つになった人々が繰り広げるアクション活劇だ。

本作と同じ時代を背景にしたドラマに、大ベストセラー小説『土地』をドラマ化した「名家の娘ソヒ」やイ・ビョンホン主演「ミスター・サンシャイン」がある。また、パク・シフ主演「風と雲と雨」やユン・シユン×チョ・ジョンソクが異母兄弟で主演した「緑党の花」に続く朝鮮の暗雲の時代が舞台だ。
※参考:ドラマの年表:朝鮮王朝


時代背景


■朝鮮王朝滅亡、日帝時代へ
朝鮮時代末期、19世紀に入ると朝鮮は暴政が続き、これに乗じて外国勢力が侵攻し社会は不安に包まれ、各地で民乱が起きた。そんな中1894年、「世直し信仰」として“東学”という思想が一気に広まり、東学教徒を中心に東学農民革命(甲午農民戦争)が起きた。一度目の蜂起で政府は清国に援軍を要請し、日本も清国をけん制するため朝鮮へ出兵。これがきっかけで日清戦争が起こり、日本が勝利。すると日本による内政干渉が強まり、二度目の蜂起を起こしたが、新式の武器と近代的な訓練を受けた日本軍が主導する朝日連合軍に惨敗。

日清戦争で負けた清国がロシアに朝鮮での権利を譲ったことで親露政権が誕生。1897年、第26代王・高宗はロシアに逃げ込み、国号を「大韓帝国」とした。

韓国統監府が設置され日本による韓国支配が強まる中、高宗はオランダバンクーバーで開催される「万国平和会議」に密使を送り、韓国の主権を主張するが失敗。日本は、反日意識の高い高宗を退け、皇太子の純宗を即位させた。韓国統監府は朝鮮総督府に変わった。

1910年には日韓併合条約が調印され、李成桂の即位(1392年)から韓国併合(1910年)まで500年以上続いた朝鮮王朝は滅亡した。

■「武断政治」で高まる民衆の不満
日本政府は、軍事力を背景にした「武断政治」の下、法律・制度・財務の各方面で整備が進められた。一方で、生きるための土地や言論、出版、集会、結社の自由などを奪われ、それに抵抗する民族運動も朝鮮総督府に弾圧されていった。

1919年1月に崩御した高宗の葬儀(3月3日)を控えた3月1日に、各宗教界から民族代表33人が選ばれ、ソウルのタプコル公園で独立宣言をする計画だったが、仁寺洞の泰和館に変更して宣言を朗読し、警察に出頭してしまった。

しかし、タプコル公園に集まった多くの市民と高宗の葬儀に集まった人々が合流し、数万人が「独立万歳」を叫ぶデモとなった。これが「三・一独立運動」である。この万歳デモは地方都市や農村に広がり、朝鮮総督府は、警察・軍隊による武力鎮圧をおこなった。日本の憲兵隊と戦う武力闘争も行われ、こうした闘争は5月まで持続した。

■三・一運動を契機に「文化政治」へ
1920年、「武断政治」では韓国を支配できないと判断した日本は、韓国人の官吏登用や言論・出版の自由や、集会の自由を部分的に許し、民族の文化や慣習を尊重する「文化政治」に路線に変更。朝鮮日報や東亜日報といった韓国語新聞の発行も可能となる。
前年に上海に樹立された大韓民国臨時政府が推戴した李承晩(イ・スンマン)が、1920年初代大統領となり、列強、特にアメリカとの外交を通じて独立を達成すべきだという路線を堅持した。
※李承晩(1875年(高宗12)~1965年)


間島ってどこにあるの?


地図赤く記した地域が「間島」
あくまでもイメージとして参考にしてください。
韓国で起きた独立運動は、本国だけにとどまることなく中国東北部(満州)や、ソ連(ロシア)やアメリカなどにまで拡散した。この中国東北部こそがドラマの舞台となる「間島」なのだ。

間島は現在の北朝鮮と向かい合っており朝鮮人移住者が多くいた朝鮮民族居住地で墾島とも呼ばれた。
※半島が南北に分断されるのは1948年(昭和23年)以降。

イ・ヒョヌクイ・ヒョヌクここは満州と朝鮮の国境地域にあたり、朝鮮人が朝鮮の統治下の朝鮮半島から同地に移住して開拓していった。韓国では間島が自国領土だと主張する一方、中国は朝鮮人の創作、伝説に過ぎないと論争してきた。

また、日韓併合により日本と清は間島をもって国境で隣接することとなった。そんな中、日韓併合に反対する元義兵などの朝鮮人亡命者が間島を拠点として独立運動を展開し、1920年には日本軍による間島出兵が行われた。

主演のキム・ナムギルは制作発表会で、本作を「韓国スタイルのウェスタン」とアクション活劇としたうえで「1920年代の歴史的な苦難と、そこから生まれる物語が西部劇と合わさった作品であり、日帝時代を背景に家族たちを守るために生きる人々と自分自分のために生きる人たち、国を取り戻すために生きる人々…時代を背景にどう生きるかを表現する作品です」と紹介している。また、憲兵役で日本語の台詞も多いイ・ヒョヌクも「わが国では少し観るのが辛かった荒野のようなアクション活劇」と説明している。日本人にとっても観るのが辛い場面もあるかもしれないが、これまであまり描かれなかった同時代に興味を持つ一助としても興味深い作品だ。

【「剣の詩」を2倍楽しむ】では時代背景や各話のあらすじと見どころ、キャスト紹介などまとめて紹介する。

「剣の詩」は本日9月22日、Netflixにて独占公開される。

※参考:『朝鮮王朝実録』、『韓国の歴史』、『人物コリア史』、『韓国時代劇で学ぶ人物大辞典』など。

YouTube新「公式予告編」(オリジナル版)

kandoratop【作品詳細】【「剣の詩」を2倍楽しむ】