【ネタバレ】「1995～地下鉄サリン事件30年 救命現場の声～」臨場感抜群の良質ドキュメンタリードラマ

3月21日に放送された「1995～地下鉄サリン事件30年 救命現場の声～」では、初放送となる営団地下鉄の無線音声を交えながら、“サリン”と判明するまで無防備な状態で懸命の救助にあたった人達にスポットがあたった。TVerで配信されている。



「1995～地下鉄サリン事件30年 救命現場の声～」とは
30年前の1995年3月20日（月）の事件発生から30年の年月を経て、あのとき何が起こっていたのか、そして自らの命も危険にさらされる中で懸命に救助にあたった者たちの姿を描く。壮絶なパニックのさなかの“命のリレー”を、30年間に渡る独自取材に基づきドラマ化し、救命救急ドラマとして描く。

■ネタバレ

1995年3月20日――。病院の救命救急センター長・剣木達彦（津田健次郎）は診療開始前、看護師の星野奈緒（桜井日奈子）と深夜の急患対応について話しあっていた。まだ、このときはこの後発生する惨事を誰も知ることは泣く、通常の勤務についての話し合いだった。

同じ頃、日比谷線・北千住駅では、北千住発中目黒行きのA20S列車の運転士・園田直紀（泉澤祐希）が運転席に乗り込み、点検などの通常業務にあたっていた。

一人の男性が足下に置いてある新聞紙にくるまれた袋を傘でなんかいか突き刺した。そして駅に到着すると男性は駅にでていった。満員の電車から降りる人たちがその包みを踏んで液体が地下鉄の床に巻かれた。地下鉄が走り出すと、徐々に乗客がせき込み始め、中には具合が悪くなる者も現れる。乗客の一人が非常通報ボタンを押し、列車は次の築地駅で停車・確認することになった。司令所にいる日比谷線担当の川原（竹財輝之助）は、なにかの異臭がするという連絡と体調不良者が多いという連絡を受ける。

列車が築地駅に到着しドアが開くと、体調が悪化した乗客たちがホームに転げるように出てくる。園田は運転室から出てくると、目の前の光景に愕然（がくぜん）とする。その後、車掌とも連携をとり、軽傷者には自力出歩いてもらい、園田たちは肩を貸しながら、ホームから地上へと乗客を運ぶ。

最初は軽症だと思っていた乗客の川嶋かおり（石川恋）だったが、見え方に異常を感じる。

司令所には日比谷線だけではなく、丸ノ内線、千代田線からの異常事態の連絡が相次ぐ。川原は園田に連絡を取ろうとするが、誰も出ない。司令長の高山（飯田基祐）は発生している事態の大きさに営団地下鉄全線の営業を取りやめ、乗客を地上に出すことを決断し、川原たちに指令をだすように指示した。

消防からの連絡を受けた病院の救命救急センター長・剣木達彦は全ての患者を受け入れる決意をする。最初は爆発だと言われていたが、運ばれてくる患者たちの症状から「神経ガス」などを疑う。

運ばれてきた患者の瞳孔を調べると縮瞳がおきている。視力が著しく下がっている患者が多く、喉の痛みを訴える患者も多い。剣木は原因物質がなにかわからないと敵性な解毒が行えないと、警察からの発表を待つ。しかし、警察でもなかなか判明しない。

科捜研の服藤（味方良介）は運ばれてきた液体を分析するが、非常に危険なものと判断して、屋上で作業を行う。その結果が判明したが、それは戦争で使われるような有機化合物であることに震える。上司に早く発表しようというが、確証がなければと一旦発表を見送る。

その頃、消防隊の化学機動中隊の武田（山崎樹範）たちは取り出した液体が何であるか分析を行う。ただ、消防ではサリンの特定ができず、“アセトニトリル”と判断した。当時、救急隊が判断するキッドでは“サリン”の判定はできなかった。TVでも一報として“アセトニトリル”という報道が流れた。

それを聞いた剣木だが、患者の症状と一致しないと判断する。また、テレビを見ていた製薬会社の人間も症状から有機化合物であり、パルという解毒剤が効くと判断し、自分たちが集められるだけ集めようとしていた。

剣木は治療を有機化合物に聞くパルにして、重症患者に投与する。すると症状が緩和した。他の患者にも同じ薬を投与したいが、パルの在庫はほとんどない。剣木はつてを頼ってあらゆるところに電話をかけるがパルを用意しているところはない。そんな中、一つの製薬会社が「持って行く」と言ってくれた。そして、ありったけのパルを日本中からかき集めていると、現在、新幹線を駆使して工場から集めていると話してくれた。

地下鉄の運転士・園田、乗客のかおりたちにも投与され、症状が改善した。ただ、地下鉄で液体の掃除をしていたり、乗客で大量のサリンを吸い込んだ人たちはなくなってしまった。それでも、医療関係者、消防、営団地下鉄、警察、製薬会社など多数の人が人命救助に動いたことで被害を少しでも少なくすることには成功していた。

のちにこの事件がオウム真理教の信者らがおこしたことと判明し、世界にその衝撃を与えた。

「地下鉄サリン事件」

「地下鉄サリン事件」とは、日本の首都・東京で発生した化学テロ事件。地下鉄丸ノ内線、日比谷線、千代田線の車内で神経ガス・サリンが散布され、死者14人、重軽傷者は約6000人におよび、化学兵器が一般市民に使われた初の事件として世界に衝撃を与えた。

事件発生直後の営団地下鉄の無線音声の全容を初公開された

今回はキャスト陣の演技に実際のスクープ映像や当時の無線音声を織り交ぜ、ドキュメンタリードラマとして救命救急にあたった者たちの姿を描いた。当時の営団地下鉄の無線音声の全容がテレビで放送されるのは今回が初めてとなった。運転士や駅員が指令所と交わした30年前の緊迫した実際の音声からは、「車内でなんか薬品がでていますので…」や「全線発車待ちの理由は車内で爆発みたいなものが起きまして、だいぶ負傷者が出ているそうなんです」など、情報がさくそうして何が起きているのか分からない中で必死に状況を報告する様子が見て取れた。

“何者かわからない毒”から必死に人命を守ろうとする姿

“サリン”が撒かれたことを知っている人がドラマを見ると「素手で触ってはいけない」「マスクもなしに」と思ってしまうが、1995年の時点ではまさかそんなものが“平和な日本”で使われているなどと疑う人もいなかった。乗客を助けるために最後まで人命を尽くした人達のおかげで被害を悔いとどめることに成功した。30年たった今でもまだ苦しんでいる人がいることもあり、「今後もこういうドラマを作って欲しい」と願う人の声がネットに溢れていた。

フジテレビ　2025年3月21日放送。出演：津田健次郎、桜井日奈子、泉澤祐希、味方良介、石川恋、結木滉星、竹財輝之助、飯田基祐、山崎樹範　ほか。

◇フジテレビ「1995～地下鉄サリン事件30年 救命現場の声～」番組公式サイト