【「ホ食堂」の人物たち②】権力に生きた現実主義者…李爾瞻(イ・イチョム/イ・セオン)という男

04月23日11時20分ドラマ
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ABEMAでも全話配信中の韓国ドラマ「ホ食堂~時空を超えた恋のシェフ(原題:허식당)」は、朝鮮時代の文人ホ・ギュンが400年後の現代ソウルへタイムスリップし、料理を通して人々と関わっていくヒューマン・ファンタジーだ。



しかし物語のもうひとつの核となっているのが、「時代を超えた対立関係」である。シウミン演じるホ・ギュンの宿敵として登場するイ・セオン演じるイ・イチョン(李爾瞻)は、実は朝鮮時代に実在した高官「李爾瞻(イ・イチョム)」をモデルにしている。

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ホ食堂「허식당」イ・ヒョク役:イ・セオン「ホ食堂~時空を超えた恋のシェフ(以下、ホ食堂)」は空想劇にとどまらず、歴史上の実在人物を巧みに活かしながら、時代を超えた因縁と和解の物語を描いている。ここでは実在した「許筠(ホ・ギュン)」を紹介する。ここでは、歴史的背景を踏まえつつ、劇中キャラクターの魅力にもつながる「李爾瞻(イ・イチョム)」の実像を紹介する。

■ 李爾瞻(イ・イチョム)とは何者か
李爾瞻(1560年頃–1623年)は、朝鮮王朝中期に実在した高官・政治家で、光海君(第15代王)の側近として知られる。出身は両班だが、宦官のように王に取り入り、強大な権力を掌握。賄賂や密告制度を活用し、政敵を排除していった。
彼の名前は、王権を支える“黒幕”的存在として語られることが多い。特に文臣のホ・ギュンと対立したことで知られ、光海君の治世下での政治腐敗や党争の象徴的存在となっている。
1623年の「仁祖反正(インジョのクーデター)」により光海君が廃されると、李爾瞻も逮捕され処刑された。記録によれば、私腹を肥やす一方で、庶民には過酷な課税を行い、多くの恨みを買っていたという。

■「ホ食堂」に見る現代の李爾瞻=イ・ヒョク
「ホ食堂」では、イ・セオンが朝鮮時代の李爾瞻と現代のシェフ・イ・ヒョクという二役を演じている。このイ・ヒョクは、高級レストランを束ね、ブランド化された料理ビレッジを経営する敏腕料理人。料理の本質よりも利益や格付けを重視し、流行と見栄に支配された現代グルメ界の縮図のような存在だ。対するホ・ギュンは、心と心をつなぐ料理を志す。味や素材よりも、「料理に込められた思い」を重視する。この対比は、まさにホ・ギュンと李爾瞻が象徴する〈理念と権力〉、〈思想と欲望〉の対立構造を現代に置き換えたものだ。

■「李爾瞻」を演じた俳優と作品
政治的黒幕としての存在感から、李爾瞻は韓国の歴史ドラマにたびたび登場している。
<ドラマ出演例>
「宮廷女官キム尚宮」1995年、KBS、ソ・インソク
「ホ・ギュン 朝鮮王朝を揺るがした男」2000年、KBS、演:ソン・ドンヒョク
「華政」(ファジョン)2015年、MBC、演:チョン・ウンイン
「ポッサム〜愛と運命を盗んだ男〜」2021年、MBN、イ・ジェヨン
「王の女」2003年、SBS、演:イム・ヒョク
「仮面の王 イ・ソン」(2017年、MBC):演:ホ・ジュノ(※参考モデルとして)
「ホ食堂」(2024年、WHYNOT MEDIA):演:イ・セオン
※参考:【ドラマの年表:朝鮮王朝編】
いずれの作品でも、野心的で狡猾な策略家として描かれ、主人公の理想主義とは対照的な存在である。

■ 歴史を踏まえたフィクションが照らす“現代の欲望”
「ホ食堂」は、料理という日常的なテーマを通じて、時代を超えた理念の対立を描く。
李爾瞻というキャラクターは、単なる悪役ではない。彼の持つ「現実主義」は、現代社会に蔓延する価値観にも重なる部分がある。成長と競争、成果と成功。それらに飲み込まれていく現代の「料理人」たちの姿は、どこか私たち自身を映し出している。

ホ・ギュンが「人の心に寄り添う料理」を作る一方、イ・ヒョク=李爾瞻は「人を支配する料理」を求める。二人の対立が浮かび上がらせるのは、料理をめぐる哲学であり、もっと言えば“どう生きるか”という問いである。

歴史に学び、心を温める「ホ食堂」は、ABEMAにて全話配信中だ。【「ホ食堂」を2倍楽しむ】では、全話あらすじと見どころ、時代背景・実在人物、キャストの紹介などまとめている。

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kandoratop【作品詳細】【「ホ・食堂」を2倍楽しむ】