櫻井翔ナビゲート、全国の“デザインの宝物”に出会う「デザインミュージアムジャパン」第3弾放送

NHK Eテレの人気番組『日曜美術館』では、5月11日(日)9時から『デザインミュージアムジャパン』を放送、2022年に始まり、今年で3回目となるこの企画は、全国各地に息づく“デザインの宝物”を紹介する特別編。
今回は、NHKの8つの地域放送局のディレクターと、第一線で活躍するクリエーターたちがタッグを組み、それぞれの地域に根ざしたデザインを掘り起こす。近代的な建築物や工芸品だけでなく、生活の中で自然に生まれたデザインにも光を当てる。番組では、そうした宝物の背後にある物語も丁寧に紹介していく。
ナビゲーターは、これまでの放送に引き続き櫻井翔が務める。櫻井はスタジオで、実物や映像を通して全国から集められた“デザインの宝物”と向き合い、その魅力を自らの言葉で伝える。
スタジオ出演者には、インテリアデザイナーの五十嵐久枝やプロダクトデザイナーの深澤直人、NHKアナウンサーの森下絵理香が名を連ね、ナレーションは声優の神谷浩史が担当する。
日常の中にあふれる多様なデザインを見つめ直すことで、日本各地の暮らしの豊かさや美意識を再発見できる内容となっている。再放送は5月18日(日)20時からEテレで行われる。
【コメント】
■櫻井翔(ナビゲーター)
3回にわたってお送りしてきた「デザインミュージアムジャパン」が、一つの節目を迎えます。これまで、大変著名なデザイナーの方々にご出演いただきました。ときに伝統工芸、ときに最新技術と、幅広いジャンルに触れ合う様子は、とても豊かで贅沢な時間でした。日本全国にあるデザインの宝物を探す旅には、懐かしさや新たな発見がところどころに潜んでいます。そんなワクワクを視聴者の皆さまにお届けし、共に体感できたらと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
―櫻井翔
■菊地敦己(グラフィックデザイナー)
「ほうろうの生活用品」“デザイナーなし”の温かいデザイン(栃木/栃木県)
僕自身、自宅でも仕事場でも日々愛用している「ほうろう」。使うことの実感を持った方がデザインしているに違いないと、日頃から感じていたその信頼を、栃木市の工場でのぞき見ることができました。製造上の理由で、この容器にはひっかかりが必要だから取っ手をつけてみた。うん、悪くない。使い手の必要と作り手の方法が地続きであることによる、無理のなさ。これこそが、ものをつくることの源泉だと思います。
■宮永愛子(現代美術作家)
「フォント」 明朝体と京都の新しく古い関係(京都/京都府)
リサーチを行うまで深く考えていなかった〈フォント〉。でも、子どものプリントの一文字一文字も誰かが選んだものだと気づくと、愛おしくなりました。今回、生まれ育った京都で、スティーブ・ジョブズがデジタル製品のために選んだ文字の〈個性のない個性〉に感動し、そのルーツのような350年前の明朝体の版木を知りました。いろいろなものの元には〈小さなデザインの始まり〉があり、生活が豊かになればなるほどデザインも少しずつ発展し、私たちはその続きに生きていると思います。
■塚本由晴(建築家)
「かき氷を生んだランドスケープ」(天理/奈良県)
「かき氷の聖地」として人気が高い奈良。ここには日本最古の氷室神社があり、氷について記した木簡も出土していると聞き、「昔の人はどうやって氷を手に入れたのだろう?」と思いました。氷を保存する「氷室」は雨が集まりにくい尾根の上に掘った竪穴を、熱を伝えない茅で覆ったものでした。そして氷を作る「氷池」は尾根の日陰になる北側の谷にありました。冬に氷を採り夏まで保管できる条件が揃った地形が、かき氷を結節点に朝廷文化へとつながっていく。まさに「事物連関型のデザイン」です。自然の“ふるまい”を人間が有効に活用すること。それは現代のランドスケープデザインにもつながっていくと思います。
■五十嵐久枝(インテリアデザイナー)
「魔法瓶」 ガラス職人たちの情熱が生んだ〈特産品〉(大阪/大阪府)
勤務先の大学へコーヒーを持って行くなど、日々魔法瓶を愛用しています。思い出をたどると、祖母が毎朝魔法瓶にお湯を入れるのを手伝っていた頃から、キラキラした内部の輝きに魅了されていました。今回、大阪のガラス職人と魔法瓶の関わりを知る中で、特に心惹かれたのは、ガラスを熱して溶かす容器〈るつぼ〉でした。窯にすっぽり入り誰の目にも触れないのに、美しく仕上げられている。この〈るつぼ〉で作られるガラス製品には、綺麗なものとして生まれる運命がバトンタッチされていると感じました。
■菱川勢一(映像工芸作家)
「大漁旗」 漁師たちを鼓舞する魂のデザイン(米子/鳥取県)
以前、三重県で「この地域最後の大漁旗職人が店をたたむ」と聞き、仕事そっちのけで撮影させてもらったことがあります。その経験もあり、鳥取で手染めの大漁旗を作り続けている方がいると知って、ぜひ取材したいと思いました。代々伝わる基本図案を基にしながらも、贈る相手を思ってデザインを決める究極のオリジナル。命がけで海に向かう漁師を盛大に送り出し、安全を祈る“気持ちの表れ”に胸が震えました。贈られた船主の方の「お祝いのお金より大漁旗」という言葉に、大きくうなずきました。
■深澤直人(プロダクトデザイナー)
「石州瓦」 瓦が生み出す町の〈雰囲気〉(大田/島根県)
島根県西部で生産される石州瓦は、三州瓦(愛知)、淡路瓦(兵庫)と並ぶ日本三大瓦の一つです。地元産の土を高温で焼き締めた瓦は、雪深く、日本海の荒波にさらされ、台風の通り道にもなる厳しい環境に耐えられる頑丈な瓦です。特徴は、地元の石を素材にした釉薬由来の赤茶色。誰が「赤い瓦の街並みを作ろう」と言ったわけでもないのに、自然と形成された街並みが独特の〈雰囲気〉を作り出しています。
■宮前義之(デザイナー)
「街路市」 300年続くコミュニケーションのデザイン(高知/高知県)
コロナ禍を経て、「服をどう届けるか」という問いに向き合う中で、江戸時代から300年以上続く高知の街路市の存在を知りました。そこにはきっと、コミュニケーションの原点とも呼べる形があるのではないかと感じました。実際に訪れてみると、ただ物を売買するだけでなく、親密であたたかなやりとりが息づいていました。顔を合わせて言葉を交わす、互いを思いやる関係性。その風景の中に、デザインの本質を見た気がしました。〈デザイン〉とは、モノをつくることだけではなく、人と人とが交わるところに生まれるもの。それが暮らしを豊かにし、時を越えて受け継がれていくのだと思います。高知の街路市は、そのことを静かに、しかし力強く教えてくれる場所でした。
■佐藤卓(グラフィックデザイナー)
「スナック」〈間〉をつなぐ本能のデザイン(宮崎/宮崎県)
「宮崎には日本一のスナック街〈ニシタチ〉がある」とNHK宮崎のディレクターから聞いたとき、心をつかまれました。人口あたりのスナック数が日本で一番多いという話です。スナックとデザイン。一見相容れないように思えますが、本能に訴える〈唾液〉を出させるデザインに惹かれました。看板の文字も、デザインの教科書的には「整理すべき」と言われるかもしれません。でも、本当にそうでしょうか?その“雑多さ”にこそデザインの本質が隠れていると思います。不思議に魅了されました。
【スタジオ出演者】
櫻井翔(ナビゲーター)
五十嵐久枝(インテリアデザイナー)、深澤直人(プロダクトデザイナー)
森下絵理香(NHK アナウンサー)
【 ナレーション】
神谷浩史(声優)
日曜美術館
『デザインミュージアムジャパン』
本放送:5月11日(日) 9時~ 9時45分 NHK Eテレ・NHKプラス(見逃し配信)
再放送:5月18日(日)20時~20時45分 NHK Eテレ
【関連情報】
展覧会『DESIGN MUSEUM JAPAN 展 2025』~集めてつなごう 日本のデザイン~
・会 期:5月15日(木)~25日(日)※20日(火)休館
・場 所:国立新美術館3階 展示室3B(東京都港区六本木 7-22-2)
・時 間:10:00~18:00(金曜日は 20:00 まで)
※入場は閉館の30分前まで/※15日(木)は15:00開場
・観覧料:無 料
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