【韓ドラ時代コラム】2PMジュノ主演「テプン商事」が描く“国家破産の冬”―韓国を変えたIMF時代とは

1997年、韓国を襲った“IMF危機”――。それは単なる経済不況ではなく、国家と人々の価値観を根底から揺るがせた歴史的な転換点だった。
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2PMのイ・ジュノ主演、tvNの新ドラマ「テプン商事」(태풍상사)は、この激動の時代を背景に、企業と人間の生存を懸けた闘いを描き出す。華やかな成功譚ではなく、“生き延びること”そのものがテーマのヒューマンドラマだ。本コラムでは、IMF時代の歴史背景からドラマの見どころまで、時代を超えて響く物語を解説する。
IMF危機とは何だったのか
1997年、タイの通貨暴落をきっかけにアジア全体へ広がった通貨危機。韓国でも外貨準備が枯渇し、ウォンは急落。大企業や金融機関が次々と破綻し、政府は最終的に国際通貨基金(IMF)に支援を要請した。その融資額はおよそ583億ドル。国家破産寸前の“屈辱的救済”は、韓国社会のあらゆる層に衝撃を与えた。
“IMF時代”に生きた人々の姿
IMFの管理下で進められたのは、徹底した構造改革――金融再編、雇用の自由化、外資導入。だが現場では大量解雇や倒産が相次ぎ、庶民の生活は崩壊の危機に立たされ、深刻な心理的負担から多くの自殺者も出た。一方で「金集め運動」に象徴されるように、国を救うために市民が自らの結婚指輪や貯金を差し出す“連帯”の姿も生まれた。絶望の中でも希望を手放さなかったその精神は、今も韓国社会の底に息づいている。
「テプン商事」が映すリアリティ
ドラマ「テプン商事」は、この混乱の時代を舞台に、倒産の危機に立たされた商社の社員たちが再起を図る姿を描く。主人公パク・テプン(イ・ジュノ)は、リストラに直面しながらも仲間たちと新しい商社を立ち上げ、変わりゆく社会の中で“働く意味”を問い直していく。ヒロインのハン・ユジン(キム・ミンハ)は、経済の荒波に翻弄されながらも自らの夢を貫こうとする若手社員。仕事の誇り、仲間との絆、そして再生への意志――IMF時代の“希望と絶望の狭間”をリアルに映し出す。
IMF危機を描いた代表的な作品たち
この“国家破産”の記憶は、韓国の映像作品においても長く語り継がれてきた。
『国家が破産する日』(2018/映画)キム・ヘス、ユ・アイン
➡IMF交渉前夜の国家と個人の葛藤を描いた社会派ドラマ。
「二十五、二十一」(2022/ドラマ)キム・テリ、ナム・ジュヒョク
➡IMF危機によって夢を奪われた若者たちの青春群像劇。
「テプン商事」(2025/ドラマ)イ・ジュノ、キム・ミンハ
➡経済崩壊の時代を生き抜いた庶民のサバイバルヒューマンドラマ。
IMFを知らない世代へ
1997年のIMF危機を実際に経験していない若い世代にとって、“国家が破産する”という言葉は、どこか遠い歴史の一幕のように聞こえるかもしれない。だが「テプン商事」が描くのは、数字ではなく「人の生活がどう変わったのか」という現実だ。
仕事を失い、家族を支え、仲間と励まし合いながら明日を生きようとした人々の姿には、どんな時代にも通じる“生きる力”が宿っている。経済の波に翻弄される現代だからこそ、IMF時代を生きた人々の選択と連帯が、私たちに“働く意味”と“希望の形”を問いかけてくる。
“生きる力”を描く、今こそ見るべき物語
「テプン商事」は、栄光や成功の物語ではない。国家的混乱の中で、何を守り、どう生き抜くかを問う“再生の物語”だ。失業、崩壊、そして再出発――IMF時代を知らない世代にも響く普遍的なテーマを、ジュノの繊細な演技とともに描き出す。激動の時代に立ち向かった人々の姿は、今を生きる私たちの“働く意味”にも静かに問いを投げかけるだろう。
tvN新土日ドラマ「テプン商事」は、10月11日(土)21時10分より初放送。Netflixで世界同時配信、韓国ではTVINGでも配信される。【「テプン商事」を2倍楽しむ】では、制作発表会レポートやキャスト紹介、全話あらすじを順次紹介予定。
◇YouTube|テプン商事 | 予告編 | Netflix
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