世代を超えた友情が教えてくれた生き方―「終活シェアハウス」“もう一度、生き直す”最終回総括【ネタバレ】

12月21日23時48分ドラマ
>画像:NHK「終活シェアハウス」最終回より

「終活」とは、人生を終える準備ではなく、もう一度“どう生きるか”を選び直すこと――。NHK BSドラマ「終活シェアハウス」は、そんなメッセージを10話にわたって丁寧に描いてきた。

夫や家族を失い、孤独や不安を抱える4人のおばさまたちと、将来に迷う若者たちが、シェアハウス“カメ・ハウス”で出会い、世代を超えた友情を育んでいく。衝突や別れを乗り越えながら、彼らが見つけたのは「最後までひとりじゃない」という確かな居場所だった。最終回は、その絆が導いた希望の答えを静かに、そして温かく提示する。21日に放送された最終回(第10話)ネタバレあらすじと見どころを紹介する。



■第10話あらすじ(※ネタバレあり)
歌子(竹下景子)たちが暮らす“カメ・ハウス”は、彼女たちの知らぬ間に売却されていた。突然居場所を失いかねない状況に追い込まれた歌子、厚子(室井滋)、瑞枝(戸田恵子)、恒子(市毛良枝)の4人は、家を取り戻すため、最後の勝負に出る。作戦を全面的に支えたのは、若き友人・翔太(城桧吏)と美果(畑芽育)だった。

4人は翔太と共にかき集めた資金を手に、買主である山杉産業の会長・山杉(でんでん)の自宅を訪ねる。厚子、瑞枝、恒子が用立てた現金は計3000万円。しかし秘書から提示された買い取り価格4000万円には及ばないと告げられてしまう。そこで歌子は、大切にしてきた骨董品や絵画を差し出し、カメ・ハウスが自分たちにとって「生き直す場所」であることを必死に訴える。

その最中、歌子は会長がかつてどら焼きをご馳走した人物だと気づく。山杉もまた再会を喜び、場の空気はわずかに和らいだ。恒子は自らがMCI(軽度認知障害の予備軍)であることを打ち明け、そんな自分を仲間として受け入れてくれた歌子たちへの感謝を語る。歌子は伴侶を亡くし、孤独を抱えていた4人が、カメ・ハウスで支え合って生きてきた日々。その友情を担保に、家を買い戻したいと訴えた。

しかし後日、秘書(和田正人)から告げられた返事は「骨董と友情を合わせても3820万円。利益が出ないため断る」というもの。落胆する一同だったが、電話口で翔太が世代を超えた友情について真剣に語り、自分の未来を照らしてくれた存在だと訴える。美果もまた、その言葉が本心だと保証し、思わず「恋人です」と答えたことで、場の空気が変わる。

山杉はその想いを受け止め、「世代を超えた友情込み」で4000万円と1円という価格を提示。こうしてカメ・ハウスは4人の共同名義となり、「先に亡くなった者の権利は皆に譲る」「長生きした者が勝ち」という、彼女たちらしいルールが決まった。

一方、翔太にも新たな未来が開ける。小さな缶詰会社「垂水食品加工」への就職が決まり、面接ではおばさまたちから教わった知識や、人を敬う心が高く評価されたのだった。内定祝いの日、カメ・ハウスには合計272歳の友人たちと美果が集い、世代を超えた“家族”の温かな時間が流れていた。

後日、騒動の張本人である歌子の息子・光輝(橋本淳)がパートナーを伴っていカメ・ハウスにやって来た。「仕事にもめどがついたので、借金を分割に返済していく:と、謝罪したことで、親子の関係も修復した。

■最終回を終えて
「終活」という重たいテーマを、最後まで“生きることへの肯定”として描き切った本作。カメ・ハウスを失うかもしれないという危機は、単なる不動産トラブルではなく、老いと孤独、居場所の喪失という現代的な不安を象徴する出来事だった。4人のおばさまたちが守ろうとしたのは家そのものではなく、人生の後半を共に生き直すための“関係性”だったことが、交渉の場面で強く浮かび上がる。

山杉会長との対峙では、金額や利益では測れない「友情」「尊厳」「生き方」が真正面からぶつけられる。恒子のMCI告白や、歌子たちが互いを受け入れてきた過程は、老いを弱さとして隠すのではなく、支え合うことで前に進めるというメッセージを静かに、しかし力強く伝えた。

画像:NHK「終活シェアハウス」最終回より画像:NHK「終活シェアハウス」最終回より
また、翔太と美果の存在が、物語を未来へつなぐ役割を果たしている点も最終回ならではの重要なポイントだ。世代を超えた友情が、若者の人生観や進路にまで影響を与え、翔太の内定という形で実を結ぶ展開は、「人を敬う心は受け継がれていく」という希望を示した。

ラストで決まった「先に亡くなった者は権利を譲り、長生きした者が勝ち」というルールは、死を見据えながらも、生きることを前向きに楽しむ彼女たちらしい結論だった。終活とは“終わりの準備”ではなく、“最後までどう生きるかを選ぶこと”。その答えを、温かく、ユーモアを交えて示した締めくくりが、深い余韻を残している。


「終活シェアハウス」は、大学生・ 速水翔太(城桧吏)と林美果(畑芽育)が、4人のシニア世代の熟女たちが自由に暮らすシェアハウス“カメ・ハウス”の住人、歌子(竹下景子)、厚子(室井滋)瑞枝(戸田恵子)、恒子(市毛良枝)と世代を超えて“人生のしまい方”と“これからの生き方”を一緒に考える、温かくて少し切ないヒューマンドラマ。

最終回は12月28日BSにて放送。また、オンデマンドで全話配信される。

■作品概要
放送:BSP4K・BS 2025年10月19日~12月21日
毎週日曜 22:00~22:45<全10話>
再放送:BS 毎週土曜 23:10〜23:55
原作:御木本あかり
脚本:水橋文美江、鈴木裕那
演出:塚本連平、宮下直之、下向英輝
主題歌:DREAMS COME TRUE 『サンキュ.』
出演:城桧吏、畑芽育、竹下景子、室井滋、戸田恵子、市毛良枝、石坂浩二、猫背椿、日野陽仁、でんでん 他

NHKプレミアムドラマ「終活シェアハウス」HP

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