韓ドラは今、女性が男性を守る時代?「罪深いあなた」VS「理由もなく、君だ」異色のボディーガードヒロインを比較
韓国ドラマといえば、かつては財閥御曹司や頼もしい男性主人公がヒロインを危機から救い出す展開がロマンスの王道だった。しかし、現在放送中の韓国ドラマ2作品では、その関係が逆転している。
イム・シワン(ZE:A)×ソル・イナ主演のtvN「罪深いあなた」と、ジョン・ヨンファ(CNBLUE)×ホン・スンヒ主演のライフタイム「理由もなく、君だ ~彼女は自称ボディーガード!?~」だ。奇しくも両作品のヒロインは、男性主人公のそばで彼を守る存在。もっとも、その正体も目的もまったく異なる。2つの異色ロマンスを比較すると、韓ドラの新しいヒロイン像が見えてくる。
「罪深いあなた」守る相手は殺人容疑者!男装刑事の危険な潜入ロマンス
10月19日に韓国tvNで放送を開始した「罪深いあなた」(原題:나의 유죄인간)は、傍若無人な財閥3世と、彼の秘書として潜入した元特殊部隊の女性刑事が繰り広げるスリリングなロマンス。日本ではPrime Videoで配信中だ。
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イム・シワン演じるユン・イジュンは、韓国屈指の財閥テガングループの後継者。容姿も財力も申し分ないが、他人を信用せず、周囲に心を開こうとしない孤独な男性だ。そんな彼が、秘書殺人事件の有力容疑者となる。
事件の真相を追う刑事カン・ジェヒ(ソル・イナ)は、捜査が思うように進まないなか、大胆な作戦を実行する。男装してイジュンの男性秘書になりすまし、彼のそばに潜入するのだ。元特殊部隊という経歴を持つジェヒは、身体能力も行動力も抜群。危険が迫ればイジュンを守り、日常生活では彼の無理難題にも対応する。しかし、その本当の目的は、守るべき主人が殺人犯なのかどうかを突き止めることにある。
ここが本作の面白さだ。ジェヒにとってイジュンは、職務上は守るべき相手であり、刑事としては疑うべき容疑者。しかも、彼のそばにいる時間が長くなるほど、冷酷に見えた男性の意外な素顔が見えてくる。
ソル・イナの魅力は、そんな複雑な立場に置かれたヒロインを、軽快なアクションと繊細な感情表現で演じ分けている点にある。イム・シワンもまた、傲慢な財閥御曹司の裏に隠された不安や孤独を巧みに表現。守る女性と守られる男性の関係に、疑惑と恋心が入り交じっていく。
「理由もなく、君だ」守る相手は憧れのスター!ドラマのヒロインになりきる令嬢
一方、10月24日に韓国ライフタイムで放送を開始した「理由もなく、君だ ~彼女は自称ボディーガード!?~」(原題:밑도 끝도 없이, 너다)は、現実とドラマの世界が交錯するユニークなファンタジーラブコメディ。日本ではLeminoで配信されている。
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ジョン・ヨンファが演じるオム・テボンは、人気絶頂のトップ俳優。メロドラマの帝王と呼ばれながら、実はキスシーンを撮影できないという致命的な弱点を抱えている。
そんな彼の前に現れるのが、ホン・スンヒ演じる財閥令嬢オ・ヘラだ。過去のある出来事をきっかけに対人恐怖症となり、自宅に引きこもって暮らしていたヘラ。彼女の唯一の楽しみは、テボンが出演するドラマ「皇太子のボディーガード」を見ることだった。
ところが、ある出来事を境に、ヘラは自分をドラマのヒロインであるチャ・ホンドゥだと信じ込むようになる。そして、ドラマの中で守っていた男性を現実でも守ろうと、テボンの前に現れるのだ。
自分は彼を守るボディーガードだと真剣に主張するヘラと、突然現れた謎の女性に振り回されるテボン。2人のやり取りは、緊迫した潜入捜査を描く「罪深いあなた」とは対照的に、コミカルで予測不能な展開を生み出す。
とりわけ注目したいのが、ホン・スンヒの一人二役だ。現実では心に傷を抱えた内向的な令嬢でありながら、ドラマ(なりきり)の世界では勇敢で行動力あふれるボディーガード。正反対の女性像を演じることで、ヒロインの内面に秘められた強さを浮かび上がらせている。
一方、ジョン・ヨンファ演じるテボンも、華やかなスターの姿とは裏腹に、人には言えない弱さを抱えている。そんな彼にとって、突然現れた自称ボディーガードは迷惑な存在なのか、それとも自分を救ってくれる特別な女性になるのか。
正体を隠す女性と、自分の正体を見失った女性
2作品を比較すると、ヒロインの立場に興味深い共通点がある。
「罪深いあなた」のジェヒは、自分の正体を隠して男性に近づく女性だ。本当は刑事でありながら、男性秘書になりすます。正体が知られれば潜入捜査は失敗しかねないため、常に緊張感がつきまとう。
対して「理由もなく、君だ」のヘラは、自分自身をドラマの登場人物だと信じている女性だ。彼女にとってボディーガードという役割は、単なる仕事や変装ではない。現実とフィクションの境界が曖昧になったことで生まれた、もう一人の自分なのである。
つまり、一方は「正体を隠す女性」、もう一方は「自分の正体を見失った女性」。この違いが、それぞれのドラマにサスペンスとファンタジーという異なる魅力を与えている。
さらに、男性主人公にも共通点がある。イジュンは財閥の後継者、テボンは人気トップスター。社会的には成功し、誰もがうらやむ地位にいる男性たちだ。しかし、イジュンは他人を信用できず、テボンは華やかな姿の裏に秘密を抱えている。
財力や名声があっても、心まで強いとは限らない。そんな男性たちの前に現れたのが、彼らを守ろうとする女性なのである。
「王子様に守られる女性」から「男性を守る女性」へ
韓国ドラマでは長年、男性が女性を危険から救う場面がロマンスの重要な見せ場となってきた。財閥御曹司がヒロインを助け、危険な場面では男性主人公が身を挺して女性をかばう。いわゆる「白馬の王子様」型の恋愛は、今も多くの作品で受け継がれている。
しかし近年は、女性が男性を守るという逆転した構図も目立つようになった。今回の2作品が興味深いのは、女性が単に強いだけではないことだ。ジェヒは危険な状況にも立ち向かえる肉体的な強さを持つ一方、イジュンへの疑惑と感情の間で揺れる。ヘラは現実世界では傷つきやすい女性だが、ボディーガードになりきることで、誰かを守ろうとする勇気を見せる。
強さの形は違っても、どちらも男性に守られることを待っているだけのヒロインではない。しかも、守られる男性たちも単なる弱い存在として描かれているわけではない。社会的には強い立場にありながら、他人には見せられない脆さを抱えている。そんな男性の弱さを女性が受け止めることで、2人の距離が縮まっていく。
もちろん、韓ドラから男性が女性を守るロマンスが消えたわけではない。むしろ近年は、男女のどちらか一方が守るのではなく、互いの弱さを理解し、支え合う関係へと描き方が広がっている。
刑事か、令嬢か?対照的な2人のボディーガードが見せる新しい恋愛
「罪深いあなた」は、殺人事件の容疑者を監視するはずの女性刑事が、いつしかその男性の本当の姿に触れていくスリリングなロマンス。一方、「理由もなく、君だ」は、ドラマのヒロインになりきった女性が憧れのスターを守ろうとする、笑いと切なさを織り交ぜたファンタジーラブコメディだ。
同じ「女性が男性を守る」という設定でも、一方は刑事としての使命、もう一方はドラマへの強い思いが出発点になっている。
そして何より、両作品が問いかけるのは「本当に守られる必要があるのは誰なのか」ということだろう。
殺人容疑をかけられた財閥御曹司と、キスシーンを演じられないトップスター。完璧に見える男性たちの心を救うのは、彼らを守ろうとする女性たちかもしれない。
女性が男性を守るという設定を入り口に、それぞれ異なるロマンスを描く2作品。韓ドラのヒロイン像が多様化していることを感じさせる、注目の組み合わせだ。
◇「罪深いあなた」日本版本予告
◇「理由もなく、君だ」日本版予告