追悼!チェ・ジンシル『バラ色の人生』に想いを寄せて…

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チェ・ジンシルの代表作といえば、「星に願いを」と「バラ色の人生」が思いあたるが、彼女の生涯を改めて考えると、その人生と「バラ色の人生」がダブって見える。

アン・ジェウクとの共演で大ヒットした「星に願いを」は、韓国での彼女の人気を不動のものにし、「結婚したい女優№1」と言わせた。しかし、彼女は人気絶頂のときに、当時読売ジャイアンツで活躍していたプロ野球選手チョ・ソンミンと結婚し、芸能界を引退した。結局、2人の子供をもうけたが離婚してしまう。ドラマを楽しむ上で必要のない彼女の離婚問題に触れるつもりはないが、あまり幸せな結婚生活ではなかったようだ。

離婚後芸能界に復帰した彼女は、復帰第2作目に自身のプライべートとよく似た設定のドラマを選んだ。それが、今回おすすめする「バラ色の人生」だ。離婚や、契約問題でスキャンダルに見舞われ、芸能界復帰を絶望視する声もあったが、彼女がこのドラマにかけた意気込みは、そのまま迫力ある演技となってドラマを大ヒットに導いた。

「バラ色の人生」でチェ・ジンシルが扮したのは、倹約家の39歳主婦のメン・スニ、2児の母。無駄遣いをしないスニは市場では値切り、洋服は古着ばかり。隣に住む口うるさい姑にもめげず、内職で家計を支えている。

スニの母親は彼女が10歳の時に蒸発しており、それ以来、弟と妹の母代わりとして懸命に彼らを育て上げ、今は酒浸りの父の面倒を見ている。娘時代は家族のため、結婚してからは夫のためにと身を粉にして頑張る彼女の夫は、3歳年下のパン・ソンムン。ところがこの夫ときたら、子持ちでバツイチ女性と不倫中。10回目の結婚記念日に夫の帰りを待っていたスニに、帰宅したソンムンが告げた言葉は…離婚!

これまで体の不調を感じながらも姑や小姑のいびりに耐えてきたスニが、激痛に耐えかね診察を受ける。そこでスニに告げられた病名は、胃がん。この後、改心した夫は涙ぐましいほど献身的に尽くすが、これでもかこれでもかとスニに押し寄せる不幸の連続に、いい加減に嫌気が差して観るのをやめようかと思ったほどだ。が、既に時遅しで、ドラマにすっかり嵌ってしまい、何が何でもスニに幸せになってほしいとドラマ相手に祈るような気持ちにさえなってしまった。

特に、スニが「自分の病気が夫の浮気の心労のためだ」と泣き叫び、屋上から身を投げようとする場面で、夫のソンムンがスニを抱きしめるシーン。ドラマ相手にこれほど泣けるものかとあきれるほどに泣けてきた。今回の彼女の訃報を始めて知ったとき、思わずこのシーンを思い出して不覚にも涙がこぼれた。

「バラ色の人生」で夫のソンムンを演じたのは、ドラマ「初恋」でペ・ヨンジュンの義兄を演じたソン・ヒョンジュ。姑には「愛の群像」の口うるさいおばさん役や「銭の戦争」の女会長役のナ・ムニ。ソンムンの浮気相手には「夏の香り」でソン・イェジンの友人役のチョ・ウンスク。名脇役がずらりと並んだ実力派揃い。しかし、いわゆる韓流スターは一人も出ていない。主人公のチェ・ジンシルにしたところで、韓国でこそ大スターだが、日本では韓流スターと呼ばれるほどの人気ではなかった。

そんな彼女らのドラマが韓国だけでなく、日本でもこれだけ受け入れられたことに、チェ・ジンシルの願いのようなものを感じた。前出の、屋上で夫ソンムンがスニを抱きしめて言った言葉は「俺が憎いんだろう。だったら“生きて”俺に復讐しろ」。

私生活でも、離婚、親友の夫の死、中傷など。彼女にはそういったものに“生きて”立ち向かってほしかった。チェ・ジンシル40才、くしくも「バラ色の人生」のスニとほぼ同じ歳に帰らぬ人となったのは偶然なのか。韓国芸能界はまた一人偉大な女優を失った。彼女の冥福を心から祈りたい。

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