NHK大河ドラマ 花の生涯

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番組情報
テレビの放送開始から10年を経た1963年、記念すべきNHK大河ドラマの第一作『花の生涯』(舟橋聖一原作)が一年間にわたって(4月7日~12月29日)放送された。
もうじき半世紀を迎えようかというNHKの大河ドラマ。ここ数年、主役を演じているのは20代の俳優たちだが、当然、彼らは初期のころの大河ドラマを知らない。

いまからは想像もつかないだろうが、当時は日本映画の全盛期。映画が「本編」と呼ばれ、テレビドラマは数段も軽くみられていた。
そんなテレビ界にあって、映画に負けない作品を生み出そうとしたのが、このNHK大河ドラマなのである。
意気込みはキャスティングにも表れている。
それまで幕末の志士からみれば悪役とも言える井伊直弼を主人公にし、歌舞伎界の名優、尾上松緑を起用した。もちろん、それまでテレビの連続ドラマには出たことがない。「舞台を一切休まない」ことを条件に引き受けたものの、昼間の舞台に夜は撮影という強行軍を見かねて、身内の者が「降ろしてほしい」と頼み込んだという。

花の生涯井伊の懐刀、長野主膳役には映画界のトップスター、佐田啓二に白羽の矢が立った。しかし、当時は「五社協定」という制度があり、映画会社の専属俳優は他社の作品にもテレビにも出演できなかった。佐田は松竹の専属である。粘り強い交渉の末、佐田が出演を承諾し、これ以降、「五社協定」そのものも崩れることになる。
他にも淡島千景や香川京子、八千草薫などの豪華女優が出演し、音楽は若き日の冨田勲である。

幕末の日本、アメリカからペリーがやって来て、幕府に対して開国を迫る。開国派である大老、井伊直弼は、将来の日本のことを考えて外交に当たろうとしていた。しかし、攘夷派の手によって桜田門外で暗殺されてしまう。その波瀾万丈の生涯が丁寧に描かれていく。
平均視聴率は20.2パーセント、最高視聴率が32.3パーセントであった。
なお、テレビドラマの黎明期であるため、高価だったビデオテープは放送終了後に消去されて他の番組に使い回されていた。この第一作目の大河ドラマも例外ではなく、現存しているのは第一話と、かろうじて桜田門外の変の断片だけだそうだ。
それだけに、貴重な映像であるとも言える。



彦根城彦根城
画像・映像提供:癒しの国日本.TV
若き井伊直弼が生活をしていたのは、現在の滋賀県彦根市である。ここに建つ彦根城が直弼の居城であった。
青年時代、部屋住みのころは自ら「埋木舎(うもれぎのや)」と名づけた住居で暮らしており、ここは大河ドラマの撮影にも使われたそうだ。
彦根城のほうは、天守をはじめとして、日本でも珍しいほど古き良き城郭の姿をとどめており、天守や附櫓、多聞櫓は国宝に指定されている。2007年に築城400年記念として作られたイメージキャラクター「ひこにゃん」は、いまや全国区の「ゆるキャラ」になっている。
ちなみに、彦根は関ヶ原の戦で敗れた西軍の大将、石田三成が治めていた地であった。そのため龍潭寺には、いまも石田三成像が置かれている。
  • 音楽:冨田勲/原作:舟橋聖一/脚本:北條誠
  • 出演:尾上松緑、淡島千景、佐田啓二、香川京子/語り(語り手):小沢栄太郎
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