現代社会では生きにくい人たちを暖かく描く『無能の人』

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最近、やっと日本でも映画監督を兼ねられる俳優が増えてきた。ほんの10年前だと北野武と、この竹中直人ぐらいしか思いつかなかったのだが。
『無能の人』はそんな竹中監督のデビュー作である。
原作がつげ義春の漫画。さて、どのような映像ができあがるかと不安半分だったが、なかなかどうして、見事なものである。

漫画家の助川(竹中直人)は寡作で時代遅れでもあるため、仕方なく多摩川で拾った石を売っている。家族は一人息子の三助と妻のモモ子(風吹ジュン)。
これだと元手がかからないと考えたのだ。
もちろん、ほとんど収入にはならない。実際には、モモ子のチラシ配りが収入源だった。
ある日、石のオークションに出品しようと山梨まで石を探しにいくのだが……。

美大出身の竹中直人は「絵」が分かっているだけに、絵コンテを描いてきちっと丹念に撮っていったようだ。
その愚直な流れが、つげワールドと融和していくのだ。
軽妙洒脱なゴンチチの音楽も相俟って、戦前の、古き良き日本映画(たとえば、五所平之助の『マダムと女房』など)を彷彿させる。
  • 監督:竹中直人/原作:つげ義春/脚本:丸内敏治/撮影:佐々木原保志/音楽:GONTITI/美術:斎藤岩男/照明:安河内央之/録音:北村峰晴/編集:奥原好幸
  • 竹中直人/風吹ジュン/三東康太郎/山口美也子/マルセ太郎/神戸 浩/神代辰巳/いとうせいこう/大杉 漣/草薙幸二郎/須賀不二男/久我美子/野村昭子/船場牡丹/原田芳雄/三浦友和
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