幻想的で淫靡な世界と謎解きが融合された『江戸川乱歩の陰獣』。

エンタテインメント 邦画 サスペンス
番組情報
タイトルが「いかにも」なので、つい淫らな内容にばかり目がいくが、江戸川乱歩の小説は、探偵小説の骨格がしっかりしているだけに、謎解きの面白さに溢れている。この『陰獣』は明智小五郎ものではないが、淫靡な魅力とミステリー部分とがうまく解け合い、乱歩作品の映画化としてはかなりの秀作といえる。

ある日、推理小説家の寒川(あおい輝彦)に、「ファンだ」と言って近づいて来た人妻・小山田静子(香山美子)。実は、彼女は寒川も知っている推理作家の大江春泥に脅迫されていると話す。
脅迫状には、静子夫婦の夜の営みまでもが記され、彼がどこからか覗いていることを物語っていた。
寒川が、静子の家の天井裏を探ってみると、誰かが侵入した跡があった……。

あおい輝彦、香山美子といったテレビでおなじみの俳優たちが、この時代がかった幻想的な世界と何ら違和感を感じさせないのは、加藤泰監督の手腕によるところが大きいだろう。
この作品が先駆けとなって、以後、たとえば『屋根裏の散歩者』や『D坂の殺人事件』などの淫靡さと謎解きとが両立する作品が生まれていくのである。
  • 製作:白木慶二/監督:加藤泰/原作:江戸川乱歩/脚本:加藤泰、仲倉重郎/撮影:丸山恵司/音楽:鏑木創/美術:梅田千代夫/照明:三浦礼/録音:小林英男/編集:大沢しづ/助監督:三村晴彦
  • 寒川光一郎:あおい輝彦/小山田静子:香山美子/増田芙美子:加賀まりこ/植草京子:野際陽子/ヘレン・クリスティ:田口久美/前衛芸術連盟・騙された妻:花柳幻舟/宮島すみ子:倍賞美津子/糸崎検事:中山仁/青木民蔵:尾藤イサオ/佐々木初代:任田順好/活動写真館の支配人:汐路章/一銭蒸気のお婆ちゃん:菅井きん/植草河太郎:仲谷昇/津軽じょんがら節・曲師:木田林松栄/津軽じょんがら節・曲師:高橋祐次郎/津軽じょんがら節・歌手:浅利みき/一銭蒸気の係員:藤岡琢也/市川荒丸:川津祐介/小山田六郎:大友柳太朗/本田達雄:若山富三郎
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