あの熱き時代と切り結んでいた大島渚の問題作『日本の夜と霧』。

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すでに伝説化しつつあるが、この作品は上映4日で公開を打ち切られたのだ。いまだに打ち切り理由は不明だが、やはりこの時代特有の政治的な背景の下、いくつかの要素が重なり合っての決定だったようだ。
映画の中では登場人物たちがひたすら議論しつづける。その斬新な試みもまた賛否両論だったが、そうした反応は今も変わらないかもしれない。

霧の深い夜、安保闘争で結ばれた野沢晴明(渡辺文雄)と原田玲子(桑野みゆき)の結婚式が行なわれていた。野沢はかつての学生運動の闘士、今は新聞記者である。
式場には仲人の宇田川(芥川比呂志)夫妻や闘争仲間たちも。逮捕状が出ている全学連の学生・太田(津川雅彦)が突然乱入、普通の結婚生活に入ろうとする玲子をなじる。実は、彼らの同志、北見は失踪したままなのだ。
ここで、10年前からの学生運動の陰の部分が引きずり出されていくのだった……。

ディスカッション部分ばかりに気をとられてしまうが、ワンシーン・ワンカットという長回しの映像、言い間違えさえも取り込んでしまう作劇のリアリズムと、大島渚はいろいろと新しい映画作法にもチャレンジしているのだ。まさにヌーベルバーグである。
この年の6月には全学連と機動隊とが国会前で激突し(東大生・樺美智子さん死亡)、10月には浅沼稲次郎社会党委員長の刺殺事件が起きている。そうした背景を知ってから観ると、また異なった印象を受けるはずである。
  • 製作:池田富雄/監督:大島渚/脚本:大島渚、石堂淑朗/撮影:川又昂/音楽:真鍋理一郎/美術:宇野耕司/照明:佐藤勇/録音:栗田周十郎/編集:浦岡敬一/助監督:石堂淑朗
  • 玲子:桑野みゆき/太田:津川雅彦/野沢:渡辺文雄/美佐子:小山明子/宇田川:芥川比呂志/坂巻:佐藤慶/東浦:戸浦六宏/宇田川夫人:氏家慎子/中山:吉沢京夫/宅見:速水一郎/高尾:左近允洋/北見:味岡亭/川崎:山川治 /小野:二瓶鮫一
  • 年月日 ~ 年月日

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