「梨泰院クラス」最終回考:自分の価値は自分で決めろ!韓国で大旋風を巻き起こした人気作が伝えたかったことは?

2020年04月16日12時00分ドラマ
©JTBC

「梨泰院クラス」は、辛い過去を背負って生きる青年がソウルの街・梨泰院(イテウォン)で訳アリの仲間と共に成功を目指すサクセスストーリーで、現在Netflixにて絶賛配信中、連日TOP入りだ。

最終回まで視聴して「自分の価値は自分で決める」、そんなテーマを感じさせられた本作。今回は、外出自粛で思いがけず自分を振り返る機会を持てた人にもオススメしたい本作が、伝えたかったことを考えてみた。

※途中、少々ネタバレもありますが、未視聴の方にもお楽しみいただけるよう配慮しております。また、【「梨泰院クラス」を2倍楽しむ】では、韓国での評判や原作紹介、OSTや韓国で公開された予告動画などについても詳しくご紹介。



夢は叶えられないから夢なのか?自分はひとりぼっちなのか?誰もが一度は誰かに問うてみたくなるような思い、多くの人が自分の価値観を現実という壁に合わせ妥協して生きている現代。決められた枠の中に自分を合わせることが社会性なんだと知らず知らずのうちに体に沁みこんでしまったような感覚、それを疑うこともせず、誰かを責めることもできない、そんな思いを抱いたことはないだろうか。
韓国ドラマ「梨泰院クラス」は、学歴もなく前科も持つ一人の青年が否応なく押し寄せる逆境に立ち向かい、ソウルの国際色豊かな街・梨泰院で飲食業界のトップにのし上がっていく物語だ。

主人公の名前はパク・セロイ(パク・ソジュン)。一度聞いたら忘れない珍しい名前。演じるパク・ソジュンのイガグリ頭も斬新で、劇中、栗の着ぐるみを脱いでもイガグリ頭なのには笑った。
だからといって、「梨泰院クラス」は決してコメディではない、第一話から衝撃的なシーンが多く、展開も早い。
高校生のセロイが転校初日に退学になるところからドラマは始まる。尊敬する父の「信念を持って生きろ」という教えのもと、正義感の強いセロイはイジメられているクラスメイトを助けるが、運悪く、イジメていた側の生徒はセロイの父が勤める大企業の御曹司グンウォン(アン・ボヒョン)だった。挙句の果てに、グンウォンによって父の命を奪われ、セロイの人生の歯車が狂っていく。

セロイの復讐計画はここから始まるが、当然のように、快進撃とはいかず困難の連続。宿敵はグンウォンの父で飲食業界トップに君臨するチャン・デヒ(ユ・ジェミョン)だ。
どん底に落ちたセロイが信念を曲げず、父親を奪った宿敵に挑んでいく姿が、当然ながら最大の見どころではあるが、最も特筆すべきは、人間関係や商売に対するセロイの信念にほかならない。
「商売は人と信頼で成り立つ!」セロイの信念はここにある。とにかく「利益よりも人を大切にする」というセロイの揺るぎない信念が胸を打つ。前述した「商売は人と信頼で成り立つ」の「商売」を「人生」と置き換えれば、セロイの人生観そのものだろう。

一方、宿敵であるチャン・デヒの座右の銘は「弱肉強食」。何よりも利益を重視し、少々の犠牲は厭わない。だからこそ、飲食業界トップの座に君臨できたのだが、最後はセロイに屈することとなった。
セロイは小さな居酒屋からスタートしたが、チャン・デヒも屋台一つからのし上がった。欲を言うならその部分をもう少し深く描いてほしかった。そうならざるを得なかった哀しさや辛さもおそらくあったことだろう、演じるユ・ジェミョンの怪演と老けメイクにも敬意を表しつつ、やはりラストの土下座シーンには胸が熱くなった。

また、「梨泰院クラス」はトランスジェンダー(性同一性障害)やソシオパス(反社会性パーソナリティ障害)など、人それぞれの個性を長所として生かし、皆が認め合って生きていく描写も秀逸だった。
中でもトランスジェンダーのヒョニ(イ・ジェヨン)に対し、ソシオパスのイソ(キム・ダミ)が送った詩は感動的で、自分に自信を失くしかけている人には何よりの特効薬になるであろう言の葉だった。

セロイを巡るほのかなラブラインに夢中になった方も多く、幼馴染みのスア(クォン・ナラ)派とビジネスパートナーのイソ(キム・ダミ)派に分かれるところだろう。個人的にはスアの葛藤が妙に心に響いたが、ツートーンボブヘアにストリートファッションで人気インフルエンサーとして活躍するイソの強烈な個性も魅力的だ。

夢は叶えられないから夢なのか?自分はひとりぼっちなのか?もしも、セロイならこう言うだろう、
「自分の決めたことに忠実になれ、自分の価値は自分で決めろ、誰かが愛してくれなくても自分が自分を愛すればいい」。

なんとなく鬱々としてしまいがちな昨今、ぜひ「梨泰院クラス」を見て、自分自身を信じる力をより一層蓄えていただければ幸いだ。

■キャスト
パク・セロイ役:パク・ソジュン
チョ・イソ 役:キム・ダミ
オ・スア役:クォン・ナラ
チャン・グンウォン/グニョン役:アン・ボヒョン
チャン・グンス役:キム・ドンヒ
チェ・スングォン役:リュ・ギョンス
マ・ヒョニ 役:イ・ジェヨン
チャンガ会長/チャン・デヒ役:ユ・ジェミョン

■スタッフ
演出:キム・ソンユン「雲が描いた月明り」「恋愛の発見」
脚本:チョ・ガンジン(原作者)

Youtube予告動画
Netflix

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